エンゲージメントとは、顧客が企業や商品・サービスに対して「愛着や思い入れ」を持っている状態のことを示す。エンゲージメントが高ければ顧客はサービスを使い続けてくれるが、低くなれば解約が進むことになる。そのため昨今、エンゲージメントの向上にデータを活用しようという機運が高まっている。
本記事では、2019年3月15日に開催された「Sansan Innovation Project 2019」のトークセッション「エンゲージメント向上の鍵は高品質なビジネスデータとパーソナライズ」の内容を紹介する。Dialpad Japan株式会社 代表取締役である安達天資氏と、株式会社セールスフォース・ドットコム カスタマーサクセスマネージャーの飯山真生氏、Sansan株式会社 執行役員 CTOの藤倉成太氏の3者が、エンゲージメント向上につながるデータ活用について話し合った。
活用できないデータに意味はない
藤倉氏:今回のテーマはエンゲージメントを高めるためにデータをどのように活用するかといったテーマになっています、でも、エンゲージメントを高めるって大変ですよね。
飯山氏:大変ですね(笑) ただ、エンゲージメントが高いお客様はサービスの解約率も低いという現実もあるので、会社としては無視できないポイントです。私の部署の中でも、エンゲージメントはKPIの1つになっています。言い換えれば、私のボーナスはエンゲージメントによって決まると言っても過言ではないです。
藤倉氏:エンゲージメントは、KPIのように、定量的に計っていくべきという意見には同意いたします。「なんとなくいい」「なんとなく悪い」みたいな、人の勘のようなものに頼ってしまうと、急に解約が増えたりしたときに慌てるだけになってしまいます。でも、エンゲージメントを図るのも、結構大変だと思うんです。
安達氏:エンゲージメントを計るには、いろいろな手法があります。私たちのビジネスでは特に「電話」というコミュニケーションに注目しています。最近は、チャットやビデオ会議ツールなど、いろいろなツールが登場しており、そこから様々なデータを収集することによって二次利用も進んできています。ツールの多角化は進んでいるものの、ある調査によるとコミュニケーションの7割は音声が占めているそうです。にもかかわらず、音声データの扱いは、これまでほとんどブラックボックスでした。例えば、音声データをテキスト化して蓄積していけば、エンゲージメントを高めるための重要なデータとなるはずです。
飯山氏:結局、活用できないデータは意味がないんですよ。例えば、営業マネージャーにとって本当に知りたい情報は、誰がどこに何回訪問したかという“数字”よりも、商談が進んでいるかどうかのような活動の“質”の方にあるはずなんです。安達さんがおっしゃったように、音声もちゃんとデジタル化して選別できるようになれば、それは大変に価値のあるデータになるはずです。
安達氏:例えば、今週はお客さんと500分会話したとしても、ポジティブなセールスの会話であるケースもあれば、クレームのようなネガティブなケースもあります。リアルタイムで状況がわかれば、マネージャーがタイムリーにフォローすることができ、お客さまへのストレスを軽減することにも繋がります。ちなみに、私たちが提供しているサービスでは、話している内容がテキスト化されるだけではなく、会話している相手の感情もリアルタイムでキャプチャー可能です。AIが重要なポイントを判別してまとめてくれるので、500分の会話をすべてチェックする必要もありません。
データをどうエンゲージメント向上に繋げるか
藤倉氏:データを集めて、それをどう使ってエンゲージメント向上につなげていくのか。今回のセッションでは、この「エンゲージメント向上施策」が一番のトピックスになると思うのですが、こちらについて何か具体的なものはありますか?
飯山氏:私たちセールスフォース・ドットコムでは、お客さんが、どのイベントに来場して、どの資料に目を通していて、どの映像を見ているのか、そういったデータを集積して活用しています。例えば、お客さんがセールスフォース・ドットコムを使い始めた日を起点として、どのくらい活用が進んでいるのか、その進捗がわかるようになっています。それにあわせて、どんなコンテンツを提供するかを決めています。
安達氏:飯山さんのお話は、カスタマージャーニーマップにつながるのかなと思います。私たちは、カスタマージャーニーをものすごくよく見るんですよ。例えば、お客さんが私たちをどこで知ったのか? サービスについての知識をどこで学んだのか? それらを見て、お客さんが知識を深めていく、どのタイミングでコンテンツを提供していくのか。そして、それをどうデリバリーして利活用してもらうか。そういうカスタマージャーニーマップを、しっかりと作るんです。そして、定期的にお客さんにインタビューしてチェックを行い、提供するコンテンツを修正していく。地道かもしれませんが、エンゲージメントを向上させるには、それが一番だと思います。
藤倉氏:私たちSansanでも、カスタマージャーニーについては日々学びながら進めています。その経験上でお伝えしたいのは、エンゲージメント向上施策は、いろいろと試して、何度も転び、傷つきながら仕組みを作っていくしかないのです。いろんな指標を、時間を掛けて集めて分析した結果、目的の指標はこれではなかったことがわかる。そんなことの繰り返しを、もう十年くらい続けています。
安達氏:それは、私たちも同様です。私たちはサンフランシスコベースなのですが、周りでは毎週のように新しいツールが登場して、オペレーションが変わることもあります。たぶん、誰も正解を持っていない。正直、混沌としています(笑)
藤倉氏:目的は、あくまで新規のお客さまに成約してもらうこと。そのための手段としてツールやサービスがあります。目的をはっきりさせないと、ツールやサービスの選定に右往左往してしまいます。私たちの手法が、他の業種の方々に通用するとは限りませんが、今日の話に出てきた、姿勢とか考え方とか、そのあたりを参考にしてもらえれば嬉しいですね。
まずはデータ活用を体験しよう
藤倉氏:最後に、プラットフォーマーとしてのメッセージがあればお答えください。
飯山氏:エンゲージメントを高めるためには、何かしらの施策や情報発信のチャネルを用意しないといけません。ただ、誰に対して何を発信していくかという戦略は、顧客情報を基にして初めて決めることができるのです。今は組織がフラット化しつつあり、複数の意思決定者の合意が必要なケースも増えてきました。となると、より多く、詳細な顧客情報が必要となります。情報を把握しないと、エンゲージメントを高める施策は見えてきません。ですから、まずはデータを1つのプラットフォームの上にためる。そこからスタートしてください。
安達氏:私は、餅は餅屋という言葉が大好きでして、今は数多くのツールが存在していますが、いいツールというのは何かに特化しているものだと思っています。そういう良いツールをどんどん使って、組織のさらなる成長に活かしてください。
藤倉氏:今、世の中ではデータ活用があちこちで言われています。ですが、データを活用するためには、まずはデータを大量に集めなければどうしようもありません。大量に集めたデータを分析して活用する。そうしなければビジネスが成り立たない時代になってきています。ですから、まずはツールやサービスを使ってもらって、データ活用を体験してもらいたい。その際、私たちのツールを使ってもらえると嬉しいです(笑)
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