日用品や家電・家具、乗り物、建築物まで、ありとあらゆる「もの」をつくるためには、金属を思い通りのかたちにする加工が欠かせない。硬い金属を自在に切り、削り、あるいは穴を開けるためには、素材の4倍以上の堅さを持った工具が必要である。

1934年に特殊合金株式会社として創業したタンガロイは、「超硬合金」の開発に日本で初めて成功した切削工具メーカーだ。その製品ラインナップは2万種類を越え、日本だけでなく世界のものづくりを支えている。マザーファクトリーを福島県いわき市に構えながら、全国各地の拠点で最先端の工具を製造・販売しているタンガロイについて、本稿では、九州工場と韮崎工場の特徴について紹介する。

写真はタンガロイ韮崎工場の外観

暮らしを豊かにするための工具を(九州工場)

すべての新幹線に必要な工具を生産しているのは、タンガロイ九州工場だ。福岡県久留米市にある九州工場が「ユニタック」ブランドとして提供しているのは、精密な「深穴加工工具」である。普通のドリルでは困難な、材料をたわませることなく深い穴を掘ることを可能にする。日本を走る新幹線の輪軸はタンガロイ九州工場の深穴加工工具によってつくられている。ほかにも、航空機のエンジンや発電所の熱交換器の加工などにも用いられる重要な工具だ。

タンガロイ 九州工場の内観

また九州工場では、ダイヤモンドの次に硬い“超高圧焼結体”を用いた工具も生産している。工具が硬くなればなるほど、加工困難だった素材を扱うことが可能になり、あらゆる製品の性能向上につながる。

深穴加工工具と超高圧焼結体工具。どちらも特殊な工程が必要な製品だが、タンガロイ九州工場では生産の自動化を成功させている。昼夜二交代制だったころは、工作機械の稼働に限界があったが、昨年に一交代制を達成し、稼働は大幅に増えた。金曜の夜にボタンを押して帰れば、月曜の朝にずらりと並ぶ完成品を見ることができる。これまで熟練工が経験から判断していた技術などを、生産技術者が「この温度で真空炉をここまで保持、ここから冷却」とプロセス管理できるようにした成果である。

こうした生産の自動化は、次世代の工具に“欠かせない”ものを示していると、九州工場で工場長を務める横山僚治氏は言う。

タンガロイ 九州工場 工場長 横山僚治氏

「自動化を達成している工場はまだわずかですが、今後は無人加工の割合が増えていくでしょう。そうなれば『安心して使える工具』が欠かせなくなると思っています」

ではいったい工具の「安心」とは何なのか。加工を続けるにつれ、工具はどんどん摩耗していく。長時間機械を稼働させるためには、品質を安定させエラーを起こさないようにする必要がある。職人がずっとそばにいた時代は「たまに高品質、ときどき調子が悪い」といったおぼつかない工具も使えたが、自動運転に任せて不良品がたくさん発生するようでは、当然安定操業することができない。

「人の手に頼り切っていた時代は、突発の事態で翌日の朝まで働かなければいけなかったこともありました。ですが、朝晩に家族と食事がとれなかったり、子どもと休みを合わせることができない働き方は、不健康だと思います。自動運転に適した工具は『その工場で働くひとの暮らしを豊かにできる工具』でもあるんです。こうした思いを胸に、我々は安心して機械に任せられる工具を提供していきたいと考えています」(横山氏)

粉末冶金技術が届ける幅広い製品(韮崎工場)

南に富士山、北に八ヶ岳、西に南アルプスと、風光明媚な景色に囲まれているのが、タンガロイ韮崎工場である。ここはタンガロイの中で唯一、切削工具以外の製品を作っている工場だ。大型バイクのブレーキパッドや、超大型ダンプのクラッチ板などの摩擦材料が主な製品である。

タンガロイ 韮崎工場の内観

身近なところでは、ボールペン用の「ボール」も韮崎工場の生産品だ。超硬合金でできた直径1ミリ以下の小さなボールは劣化しにくく、書き味に優れている。実は、日本製のボールペンに使われるボールのほとんどが、ここでつくられている。

切削工具の老舗が、なぜ別の製品も供給しているのか。共通するのは「粉末冶金」の技術である。金属の粉末などを均一に混ぜ合わせ、金型に入れてプレスし、焼結炉で焼き、研磨する。切削工具の「刃(インサート)」をつくるために必要なこうした技術から派生して、摩擦材料がつくられるようになった。

タンガロイ 韮崎工場 工場長 佐藤裕二氏

「日常生活で使うものから、土木工事のビッグプロジェクトに必要なものまで、タンガロイが幅広い分野に製品を提供できるのは、材料からつくっている強みがあるからです。自分のつくった製品が、世界のいろんな場で活用されるのは誇らしいですね」と、韮崎工場の工場長、佐藤裕二氏は嬉しそうに話した。

「派生技術だから」「幅広い分野の一つだから」と言っても、品質が低いわけでは決してない。一般的なオートバイや自動車では樹脂系のブレーキパッドが使われるが、タンガロイ韮崎工場で生産される耐熱性の高い焼結金属のパッドは、高速走行可能な中型・大型バイクに用いられている。また、ハリウッド映画の危険なバイクアクション、国内で行われる数々のオートバイレースにも、タンガロイのブレーキパッドが選ばれ続けている。

韮崎工場には、バイクレース好きのサークルがある。入社6年目の若手、町田和将氏もそのメンバーの一人だ。

タンガロイ 韮崎工場 町田和将氏

「同じスピードが出るマシンでも、速く走る人がいます。コーナーを曲がる時の加減速の仕方で、大きな差が付いてしまうからです。サーキットを走ってみてはじめて、速く走るためにはブレーキが大事だということに気づきました。それ以来、『これはどんな特性のブレーキなのかな?』と、あれこれ考えながら仕事をしています」(町田氏)

また韮崎工場でも、九州工場と同様に手作業から自動機械の導入が始まっている。町田氏はその自動化の先頭に立って、レイアウト変更に取り組む一人だ。

「同級生と会って話すとよく分かるんですが、タンガロイはチャンスが多い会社、新しいことをやらせてくれる会社です。生産技術も材料開発のことも、もっともっと勉強して、将来は理想のブレーキづくりに挑戦していきたいです」(町田氏)

このように、タンガロイの九州・韮崎工場では、新幹線やボールペンといったさまざまな日常における「つくる」を支えている。また、それらを実現する工場の自動化が、製品だけでなく働く人の安心や笑顔も支えている。

(マイナビニュース広告企画:提供 タンガロイ)

[PR]提供: