印刷通販で入稿する際の印刷以降の工程に関する疑問を、ビギナーにもわかりやすく解決する連載の第三回。第一回は紙の種類と網点、第二回は製本方式について紹介した。第三回の今回は「紙の目」と「特殊インキ」について、印刷通販サイト「アルプスPPS」のコメントも含め、詳しく紹介しよう。

「紙の目」ってどうして知っておかなきゃいけないの?

コピー紙を購入するとき、「A4/T目」と記載があって「T目ってなんだろう?」と疑問に思ったことはないだろうか。これが「紙の目」と呼ばれるもので、製本時に意外な役割を果たしている紙の要素なのである。

そもそも紙は、抄造(原料をすいて紙を製造すること)段階のパルプ繊維の並び方によって、さまざまな性質が生じる。印刷では紙は「全紙」(用紙規格の最大サイズ)の長辺に沿って、並行にパルプ繊維が並ぶものを縦目「T目」、直角に並ぶものを「横目」(Y目)という。たとえばA3用紙を真ん中で追って、A4サイズのリーフレットを作る場合、縦目の方向に沿って紙を折れば、キレイに折り曲がるが(順目)、横目の紙を使ってしまうと折り曲げに対する反発力が生まれる(逆目)。この逆目が本としての使いやすさを低減させる"曲者"で、キレイに折れないことはもちろん、背割れをしたり、折り精度不良による見開き見当のズレが発生したりする。気づかずに納品したとしても、今度はページの開きが悪かったり小口(本を開く側)が繊維方向に波打ったりと良いことは一つもない。

印刷では紙は「全紙」(用紙規格の最大サイズ)の長辺に沿って、並行にパルプ繊維が並ぶものを縦目「T目」、直角に並ぶものを「横目」(Y目)という
紙を裂いたときに真っ直ぐ裂けるのが縦目、上手く裂けないのが横目、という見分け方もある 紙の目に沿って折ると紙の反発がなく、製本後に本が開いてしまうこともない

「とはいえ、逆目でも上手く仕上げる方法はあります」とアルプスPPS。たとえば縦横に複数の折を入れたいのに逆目になってしまう場合は、「スジ入れ」をすることでキレイに仕上げられるそうだ。印刷製本を外注する場合は、こうした点に気を遣われて本が作られている。自分でコピー本などを作る場合も、ちょっとだけ「紙の目」を意識してみてはどうだろうか。

「特殊インキ」にはどんな種類があるの?

通常の印刷インキとは違い、特殊インキにはさまざまな特徴や機能を持ったものがある。印刷物に決まった用途がある場合は、特殊な機能を持った印刷インキを選ぶことで、より目的に適った仕上げとなる。ここで、代表的な「特殊インキ」について紹介しておこう。アルプスPPSでは、特殊インキ使用の印刷物は「見積もり対応」となる。気になるものがあったら、データの作り方など、どんどん問い合わせて聞いてみよう。

(1) 耐光(耐候)インキ

屋外に掲示することがあらかじめわかっている、ポスターなどに使いたい特殊インキ。耐性を持つ印刷インキの中でも、特に使用頻度が高く重要なものである。

屋外で掲示されるポスター(選挙用や宣伝広告用など)は、直接日光や紫外線にさらされてしまう。紫外線にさらされると、通常の油性印刷インキでは顔料が分解され、耐性のないイエロー(黄)やマゼンタ(紅)は褪色してしまい、写真は色あせてしまう。もともと顔料成分の多いブラック(墨)やシアン(藍)は影響を受けにくいため、印刷時にはイエローとマゼンタのみ、耐性インキに入れ替えて印刷する。

この耐光性にプラスして、耐水性や耐酸性、耐アルカリ性、耐油性、耐熱性などさまざまな耐性を持ち、厳しい掲示条件でも色あせないインキが「耐候インキ」である。

(2) 金インキ

CMYKカラー(プロセスカラー)では、再現できない色の一つが「金色」だ。この金色を再現するのが「金インキ」で、「赤口」と「青口」という2つの色相から選ぶ。この2つの色相は、金インキに使用する金属粉(真鍮=銅と亜鉛の合金)の合金比率の差によるもの。銅が多ければ「赤口」、亜鉛が多ければ「青口」となる。

一般的な印刷インキは顔料で発色させているが、金インキの場合は粒子の粗い金属粉を使用しているため、非常に扱いにくくトラブルも起きやすい。たとえば製造後に長期間保存しておくと光輝性が低下したり、金属粉の化学変化によって黒ずんだり退色してしまうことがある。

高級感やプレミア感を出すなど、印刷物の差別化を図るには持ってこいのインキだが、同時に印刷コストもかなりかさんでしまうので『ここぞ』というときに使いたい。

(3) 銀インキ

金インキと並んで、プロセスカラーで再現できないのが銀色。グレーとは違って光沢感を求めるなら、やはり銀インキを使いたい。最近では特殊な銀インキの上にプロセスカラーインキを重ねて印刷して、色相そのものを変化させる「メタルカラー」も注目さている。

銀インキはアルミニウム粉を使っているため、耐薬品性が良好。一方で光輝性を高めるため擦過性に弱い。ツメで少し引っ掻いてしまっただけで跡が残ってしまったりするので、印刷後にOPニスをかけたりプレスコートしたり、PP加工をするなど、表面加工で保存性を高めたい。このときも印字面はほかのインキに比べて密着性が弱いので細心の注意が必要だ。

(4) グロスOPニスとマットOPニス

印刷物の保存性や表紙の印刷を保護する、あるいは光沢感やツヤ消し感を演出するために使われるのがニス引き。これは印刷インキと同じように印刷機でニスが引かれるため、プレスコートやPP加工と違って、1回の工程で済むことがメリット。

「グロスOPニス」は印刷物に光沢効果や耐摩擦性を加えるために使用される、透明なワニスのこと。「マットOPニス」はマット効果を与え、ツヤ消し調の印刷物に仕上げたい場合に使用する。

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