生成AIが登場によって多くの人の仕事スタイルが大きく変化しました。筆者を含む多くのプログラマーは、AIをプログラム作成補助に利用しない日はないでしょう。そして、筆者が次に注目しているのが「文章校正」の作業です。文章を書いている人でこれを使っていない人がいれば、かなりもったいないので紹介します。

  • 生成AIを文章校正に利用すると仕事が捗るので使ってみよう

    生成AIを文章校正に利用すると仕事が捗るので使ってみよう

生成AIによる文章校正は何がすごいのか

筆者は毎日かなりの文章を書いているのですが、生成AIが登場してからと言うもの、文章の校正作業は驚くほど捗るようになりました。生成AIは、大量の日本語文章を学んでいることから、単純な誤字脱字やスペルミスは当然のこと、文脈を考慮したチェックをしてくれるのです。さらに、文法上の間違いや、文章の流れが悪い部分なども指摘してくれます。これは、従来のルールベースの文章校正ツールでは成し得ないことでした。

使ったことがない方のために、無料のChatGPTやGeminiでも試せる簡単な方法を紹介しましょう。これだけです。

以下の文章の校正作業をしてください。
間違いがあれば、箇条書きで指摘してください。
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{ここに校正したい文章}

例えば、次のような文章を校正してみましょう。

以下の文章の校正作業をしてください。
間違いがあれば、箇条書きで指摘してください。
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これは筆者の言い訳なんですが、筆者は本を書いた時、何度も何度も文章を見直します。もちろん、出版社の担当さんにも何度も見直してもらってます。時には、外部の専門家の人にも見てもらうこともあります。それでも、読者の人に、誤字脱字があり適当に作られた本だと言われてしまうことがあります。

ここでは、OpenAIのChatGPTとGoogleのGeminiで試してみましょう。

「ChatGPT(モデルGPT-4o)」(https://chatgpt.com/)で試すと次のような結果を返します。気になる言い回しや、冗長な表現を見事に指摘してくれました。

  • ChatGPTで簡単な校正作業を試したところ

    ChatGPTで簡単な校正作業を試したところ

次に「Gemini 2.0 Flash Experimental」(https://gemini.google.com/)で試すと次のような結果を返しました。砕けた表現を中心にして指摘しています。こちらも、さすがです。

  • Geminiで簡単な校正作業を試したところ

    Geminiで簡単な校正作業を試したところ

実際に使う前に確認が必要

ただし、生成AIに文章を送信する場合には、セキュリティを気にする必要もあります。社内の機密文書を安易に無料の生成AIに入力しないように注意しましょう。

公開ブログなどのために文章を校正するなら気にしすぎる必要はないのですが、大抵の場合、自分の書いた文章を生成AIのトレーニングに利用されたくないと思うことでしょう。ChatGPTにログインして使う場合には、設定から「データコントロール>全ての人のためにモデルを改善する」をオフにすることで、モデルの改善に対話データが使われない設定にできます。以前は有料版のみ設定可能でしたが、現在では無料版でもログインすれば設定できます。

  • 業務データを扱うときはモデル改善に使われないように設定しよう

    業務データを扱うときはモデル改善に使われないように設定しよう

より実際的なプロンプトを紹介

さて、改めて上記のプロンプト(指示文)の応答を確認してみましょう。すると気づくのですが、「何のために文章を校正するのか」を明確に指定していないため、それほど問題ない点まで指摘していました。軽く誤字脱字をチェックしたいだけなのに、これほど、いろいろ注文をつけられてはモチベーションが上がらないと思うかもしれません。

そこで、筆者が実践で重宝して使っているプロンプトを紹介しましょう。以下は、ChatGPT(モデルGPT-4o)の会話で使うプロンプトです。このプロンプトを送信した後、それに続くチャットで校正したい文章を送信します。すると、いちいち、校正してくださいと書かなくても、続きの文章を全て校正してくれます。

### 指示:
ユーザーが発言したら、その内容にある誤字脱字を見つけて、
次のような箇条書きで指摘してください。
### 出力例:
- なぜ修正が必要か指摘:
  - [誤] (ここに間違っている原文)
  - [正] (ここに修正した内容)
- なぜ修正が必要か指摘:
  - [誤] (ここに間違っている原文)
  - [正] (ここに修正した内容)
- なぜ修正が必要か指摘:
  - [誤] (ここに間違っている原文)
  - [正] (ここに修正した内容)

実際にChatGPTに対して上記のプロンプトを送信すると、「この形式で進めていきますので、よろしくお願いします!」と返事が返ってくるので、先ほどと同じ文章を送信してみました。すると的確に修正が必要なポイントと、その明確な理由を列挙してくれるようになりました。

  • ChatGPTを校正作業専用のチャットにしたところ

    ChatGPTを校正作業専用のチャットにしたところ

  • 別の文章を与えても次々と校正してくれる

    別の文章を与えても次々と校正してくれる

なお、プロンプト(指示文)を見直してみてください。ここでは、誤字脱字に絞って指摘するよう指示しています。これによって、文章スタイルに関する指摘が少なくなりました。そして、どんな形式で答えを出力して欲しいのかを、プロンプトの中で例示しています。

特に、このプロンプト(指示文)の「### 出力例:」以降の部分に注目してみてください。出力例を繰り返し記述しています。このように書くと、AIがこのフォーマットに合わせて答えれば良いのだなと理解してくれます。

文章校正に関しては、どのように出力してもらうと、実際に文章の修正がしやすいかは、用途によって大きく異なることでしょう。そのため、今回紹介したプロンプトをベースにして、いろいろな文章校正プロンプトを試してみると良いでしょう。また、「ブログ用に校正して欲しい」とか「SNS用に直して欲しい」など補足を追加すると空気を読んだ指摘をしてくれます。試してみてください。

まとめ

なお、せっかく生成AIを使うのだから、直してもらうついでに、文章を丸ごと作ってもらうのはどうだろうと思うかもしれません。用途によっては、それでも問題ない場合もあるでしょう。最近の生成AIは、それなりの文章を作ってくれます。

しかし、やっぱり、なんか生成AIを使って作った文章って、味気ないというか、AIっぽさが醸し出るんです。そして、生成AIにはハルシネーション(幻覚)と言う問題もあるので、しっかりとした裏どりも必要です。

そう考えると、文章は、まだまだ人間が書かないと、読みにくい文章になってしまいます。そのため、人間が書いて、AIにチェックしてもらうと言うのが、現在の最適解だと感じています。もし、まだ生成AIを校正に使っていないなら、試してみてください。とても便利です。

自由型プログラマー。くじらはんどにて、プログラミングの楽しさを伝える活動をしている。代表作に、日本語プログラミング言語「なでしこ」 、テキスト音楽「サクラ」など。2001年オンラインソフト大賞入賞、2004年度未踏ユース スーパークリエータ認定、2010年 OSS貢献者章受賞。これまで50冊以上の技術書を執筆した。直近では、「大規模言語モデルを使いこなすためのプロンプトエンジニアリングの教科書(マイナビ出版)」「Pythonでつくるデスクトップアプリ(ソシム)」「実践力を身につける Pythonの教科書 第2版」「シゴトがはかどる Python自動処理の教科書(マイナビ出版)」など。