本連載では、Twitter Japan(以下、Twitter)の協力のもと、季節や特定のイベントに関するツイート内容と、その盛り上がり状況の解析に基づき、Twitterのトレンドを活用したマーケティング手法について考えていく。

2本で1セットとし、前編では、Twitterでリサーチャーを務める櫻井氏に監修を依頼し、特定テーマに関してTwitterのトレンドを分析してもらい、インフォグラフィックで分かりやすく解説していくほか、このインサイトを活かしたプロモーションプランを提案。一方、後半では、マイナビニュース編集部が実際に当該テーマに関してTwitterを積極的に活用する企業に取材を行い、その事例をインタビュー形式にて紹介していく。

第4回となる本稿では、第2回の"【恋愛・美容編】の後半として、コーセーを取材し、実際に化粧品のプロモーションとしてTwitterをどう活用したのかを紹介する。

多くの女性にとって欠かせないアイテムのひとつ、化粧品。経済産業省が発表した「化粧品出荷統計」 によると、2015年の年間出荷実績は4年連続のプラス成長を達成し、前年比1.4%増となる1兆5,072億7,600万円となった。

伸びている市場ではあるものの、マスブランドは戦いを強いられている。各社ともに旬の女優やタレントを起用し、テレビCMや広告を中心にマスに対するマーケティング戦略を繰り広げてきた。

「現在も『◯◯さんみたいになりたい』と、イメージキャラクターとして起用した女優さんやタレントさんに憧れるお客さまにリーチする、というコミュニケーションは一般的です」

こう語るのは、コーセー宣伝部 宣伝企画・PR課の小林祐樹氏だ。また、アメリカで4年ほど前からSNSを活用したマーケティングが登場し、手の届かない憧れ感に加え、お客と1対1でつながるコミュニケーション手法が日本に浸透するようになった、と振り返る。

コーセー宣伝部 宣伝企画・PR課の小林祐樹氏

20代女性とコミュニケーションを図りたい

マスブランドの中で2009~2010年にかけて、いち早くSNS戦略に着手したのがコーセーだった。最初はブランドごとのFacebookページを中心に開設。その後、2014年1月にイメージキャラクター・新垣結衣さんのテレビCMリニューアルを機に運用開始した「雪肌精 公式(JAPAN)」(@kose_sekkisei)は11000フォロワー(2016年4月4日時点)を超える勢いで伸びている。

「様々なデータを調べるうちに、20代前半のお客さまを獲得しやすいのはTwitterだと、答えが出てきたんです。実際にTwitterユーザーでアクティブなのは20代の方々。そこでTwitterに着手したんです」(小林氏)

運用体制を整備してスタートしたのは、コーセーが抱える複数の公式Twitterアカウントの中でも、雪肌精が初だったという。始めた時期も良く、テレビCMを目にした多くのユーザーがTwitter上で「ガッキー(新垣さんの愛称)かわいい!」などとツイートし、おおいに盛り上がったのも記憶に新しい。

同アカウントでは原則毎日投稿し、エンゲージメント率を高める工夫を行っている。ユーザーから好評を得ている「雪肌精PR担当SETSUKOが行く!女性が活躍&輝いている会社訪問♪」シリーズのように、制作にリソースをかけるコンテンツも少なくない。

運用・制作体制を尋ねると、月に一度の編集会議と振り返りを徹底している、と小林氏。サイバーエージェント(以下CA)社の川島彩乃氏らとチームを組み、コンテンツの企画やライティングは原則CA社に依頼し、お客から届く声への返信はコーセーが担当している。

ダブルスクリーンを意識してテレビ×Twitter連動の取り組みも

これまで、順調に運用してきたかのように見えるが、フォロワーがなかなか増えなかったり、投稿してもあまり手応えがなかったりと、手探り状態の時期もあった。

「アカウントをつくったばかりの頃、私たちは『(ユーザーには)乾燥情報や紫外線情報が求められているだろう』と勝手に思い込み、それらの情報を積極的に流していましたが、エンゲージメント率がなかなか上がりませんでした。Webではリアルタイムで結果が数字として出ますから、それらを参考に固定概念や思い込みを捨てて、あらゆるチャレンジを始めたのが功を奏しました」(小林氏)

たとえば、テレビ番組との連動も挑戦のひとつだ。同宣伝企画・PR課の千葉拓也氏が語る。

「弊社が協賛しているスポーツのテレビ番組放送中、Twitter上で選手インタビューとあわせて広告を流す取り組みを行っています。今、セカンドスクリーンとしてスマホを眺めながらテレビを視聴する人が多い、という実情もあります。あらゆる調査でも明らかになっているように、複数メディアでブランドにふれてもらい、キャンペーンのリーチを取っていけたらと狙っています」(千葉氏)

コーセー宣伝部 宣伝企画・PR課 千葉拓也氏

プロモトレンドをはじめとするTwitter広告も積極的に試している。2月にはエスプリークのCM動画を「CLUB KOSE(コーセー 公式)」(@CLUB_KOSE)に投稿した1週間後、プロモトレンドで告知したところ、数多くの引用RTが発生。

「ユーザーから『かわいい』『こうなりたい』など、たくさんのリプライが届きます。CLUB KOSE公式アカウントを通じて配信したとき、1日で100件近いリプライが来たのを記憶しています。Twitterの瞬発力の凄さを感じましたね」(千葉氏)

同社はCMをWeb上で活用するのが上手い会社だ。「『Web専用の動画を用意しないといけない』と考える会社も多いですが、私たちはCMも大事で有益なコンテンツだと意識しています。女優さんの影響力も当然ながら大きいですが、彼女たちがSNSで多くの話題を集めるくらい、圧倒的に綺麗に見せられるよう、基本的には内製でクリエイティブに力を入れて制作しています」と小林氏は語る。

目指すターゲットへリーチする精度の高さはTwitterならでは

Twitterを活用することの魅力や良さは他にもある。川島氏が挙げるのはターゲティングをするときの精度の高さだ。

「コスメやメイク、ファッションなどに興味を持つユーザーに絞り込んで、非常に的を射たアプローチをできるのはTwitterならではですね。また、特定のワードを含め、イメージキャラクターのファンを狙って投稿することもできます。ここまで何度か話に出てきた新垣結衣さんに関して言うと、Twitter上にかなりの数のbotがあります。彼らは『新垣結衣』というワードが含まれる投稿を見つけると、必ずリツイートしてくれて、結果的に投稿が広がり、ファンを中心に情報をリーチさせることができるんです」(川島氏)

サイバーエージェント 川島彩乃氏

小林氏は1対1のコミュニケーションのしやすさを挙げる。

「商品情報を投稿した際『もっと詳しく教えてください』『男性でも使えますか?』といったリプライが来て、宣伝部の担当がやりとりをするうちに『じゃあ、買ってみます!』までコミュニケーションが落ちるんです。

それはTwitterだからこそ起こり得る現象だと思います。数はまだ多くありませんが、1対1の会話のコミュニケーションを1対nにどう広げていくかは、私たちにとって大きな課題でもありますが」(小林氏)

最後に、今後の展開について聞いた。

「異業種とのコラボレーション企画を増やして、価値の交換ができたらと思っています。もちろん化粧品が好きな女性たちへ直球でアプローチするのも大事なことですが、たとえばビールが好きな女性たちへアプローチする方法もありますよね。ビールが好きな女性たちもメイクはするでしょうから。そういった考え方をベースにアプローチの仕方を工夫し、可能性を広げていきたいと考えています」(小林氏)

Twitter Japan

米Twitter社は2006年に創立され、その役割は、アイデアや情報を生み出したり、それをすぐにほかの方々と共有するパワーを世界中の方々に提供すること。毎月3億2,000万人以上に利用されている。Twitter Japanはその日本法人となる。