様々なタイプが存在するワカサギ釣り用電動リール

前回、少しお話させていただいたが、ワカサギ釣りには電動リールがよく使われる。もちろん、これまで同様に手巻きリールと専用竿の組み合わせも主流のひとつだが、ここ数年で一気に人気が高まったのが、電動リールの登場以降だと思っている。

実はかなり以前から、ワカサギ釣りに電動リールは使われていた。模型用のモーターをそのまま動力として、小さなスプールを回転させるシンプルな仕組みのものが多く、見た目よりも機能性を重視して作られていた。しかし、ここ数年でメジャーメーカーが開発に取り組み、手頃な値段で高機能、しかもデザインも優れている電動リールを市場に投入し始めたのだ。

中には液晶に水面から何メートルという表示をするカウンターを搭載したものや、バラシを防止するために仕掛けが水面近くにくると自動的に減速するものまである。さらに見た目はスタイリッシュなのだからいうことは無い。わたしも以前は機能優先で色々なタイプを試したり、自作したりしていたが、壊れてもすぐに買い換えが効くという理由でメジャーメーカー製を愛用している。

ワカサギ釣り用の電動リール。この他にも様々な種類がある

電動リールならバラさない!

電動リールというと船釣りの、しかもマダイをはじめとしたコマセ釣りに使うような大型のものをすぐに想像するだろう。こちらは、水深も深く、仕掛けも大きいので、手返しややり取りの負担を軽減するために使われることが多い。

一方のワカサギ釣りは深くても2~30m、都市近郊の釣り場ならせいぜい10m程度しかない上に、仕掛けも非常に軽いモノを使う。獲物もワカサギなので、一度に数匹掛けたとしても引き自体はたかがしれている。では、なぜ電動リールが使われるか? それはこの釣り独特の繊細なアタリの出方に理由があるのだ。

ワカサギ釣りはいつも穂先をピクピク揺らすような明確なアタリばかりが出るわけでは無い。特に食い渋るときにボトム(底)近辺で出るようなアタリは非常に小さく、しかも食いついたワカサギもすぐに違和感を感じて餌を離してしまう。微妙なアタリにしっかり反応し、魚がバレないようにするには「掛けアワセ」というテクニックが必要になる。

釣りでは大抵の場合、しっかりと針を飲み込ませてあまり大きなアワセは入れないのが定石。しかし、針先についた餌を吸い込んだ瞬間に竿先を跳ね上げる、反射神経を使う動作が「掛けアワセ」になる。しかもこの場合、ワカサギの口に掛かった針は口先だけを貫通していることが多く、一瞬でもラインを弛ませると、オモリの自重によって簡単に外れてしまうのだ。

手巻きリールの場合は、アワセの動作から竿を持ち帰ることがあるため、その一瞬の間に魚をばらしてしまうのだ。一方、電動リールの場合は、アワセの動作をしながら巻き取りスイッチを押せば、ラインは一度も弛むこと無く水面まで仕掛けを浮上させられる。これが一番のメリットであり、電動リールと相性が良い最大の理由でもある。

液晶には水深や巻き取り速度などの情報が表示される。本体の左右にあるのが巻き取りスイッチ。アワセながらこのボタンを押せば、掛けた魚に対してテンションを緩めること無くラインを巻き取れる

PEラインとの相性に注意

良い事づくめのような電動リールにも弱点がある。それはこの釣りに使われるPEラインとの相性と電池の存在だ。PEラインとは何本かのポリエチレンラインを編み込むことで、強さと細さを両立した釣り糸のこと。ほとんど伸びないという性質があるため、感度は最高で微妙なアタリは特にとりやすい。

反面、とてもしなやかで、腰はまったくない。なので、スプールから少しでもラインがこぼれるとシャフトに絡みついてしまう。ワカサギ釣りで使うPEラインは0.1~0.4号ぐらいの極細なので、いったんトラブルを起こすと場合によっては簡単にはほどけないほど絡み合ってしまうのだ。

PEラインを使用するときは、スプールに浅く巻くようにするのがコツ。関東近辺なら30mも巻いてあれば十分だ

また、仕掛けを落とすときはスプールをフリーにするのだが、オモリに引かれるがまま着底させると、スプールが回転を続けてしまうのでラインが放出されっぱなしになる。これもトラブルの原因で「バックラッシュ」と呼ぶ。

こうしたトラブルを回避するには、スプールに納めるPEラインの量を思い切り減らしてやる。そうすることで、スプールからPEラインが滑落することは大分防げるようになる。また、仕掛けを落とす際には指をスプールに軽く当てるようにして、着底したらすぐに回転を止めてあげるテクニック「サミング」を心がけるようにすれば、バックラッシュは防ぐことができる。

仕掛けを落下させるときは、このように指を軽くスプール添えておく。オモリが着底したらスプールの回転を止めてやればライントラブルは激減する

難しいのはラインとスプールの扱いだけなので、何度か練習すればすぐに慣れるはずだ。それでもトラブルが多いという場合は、予備のスプールを持ち歩くか、使うオモリを大きくするなどの工夫で防げるようになるはずだ。

高価だが、それだけに愛着も沸く

ワカサギ用の電動リールは、5千円前後から高価なもので4万円程度。メジャーメーカー製は、その中間の1万5千円前後で売られている事が多い。小物釣りとしてはかなり高価な買い物になるが、この釣りの奥深さを知るためにはある程度の出費は必要だ。

買うときのコツは、なるべくスプールの回転が良い物を選ぶこと。もっとも基本的な機能だが、この釣りでは0.5gという極計量のオモリを使うこともあるので、回転が悪いスプールだとラインが落ちていかない。

わたしは、電動リールを買うとスプールのベアリングを取り替えたり、オリジナルのままでもチューニングオイルを馴染ませてから使うなど、ちょっと一工夫している。いずれにせよ、道具にこだわるとますます釣りにのめり込める。ワカサギ釣りを思い切り楽しむためにも、ぜひ一度は手に入れて欲しいアイテムがワカサギ用電動リールだ。

次回はこの釣りをさらに奥深くする穂先についてお話しよう。