本連載ではこれまで、使えるねっとのサービスや企業の特徴について紹介してきた。小誌ではこのほど、本文中でも触れられている同社の国内データセンター(長野県)を取材させていただく機会を得たので、その一部を紹介しよう。使えるねっとの各種クラウドサービスは、このデータセンターから提供されているのだ。

ISO 27001を取得済みの国内自社データセンター

今回の取材でご対応いただいた使えるねっと データセンター本部長 宮川幸司氏

市場では多くの事業者がレンタルサーバーサービス(クラウドサービス)を展開しているが、実はサービスの提供基盤となるデータセンターについては大手通信事業者や電力会社が所有しているデータセンターを"間借り"していたり、コストメリットの観点から海外のデータセンターを利用したりといったケースが少なくない。しかし、使えるねっとは自社で国内にデータセンターを所有し、そこから各種クラウドサービスを提供している。

データセンターを利用する場合は立地条件(データセンターが国内にあること)を重要視する企業も少なくないが、使えるねっとのデータセンターは、JR長野駅から車で20分ほどのリンゴ畑の中にある。東京から長野までは新幹線で1時間半程度の距離だ。

使えるねっとのデータセンターはJR長野駅から車で20分程度の場所にある

同社はレンタルサーバー事業者でありながら、JDCC(日本データセンター協会)の正会員企業であり、情報セキュリティマネジメントシステムである「ISO 27001」の認証も取得している。

使えるねっとのデータセンター。データセンター用途として堅牢に専用設計された。当然外観からは何の施設かわからない

厳格な入退室管理と数千台収容のサーバールーム

今回は特別に許可を得た上での取材。場所を明かすことができないという緊張感のもとで内部を拝見させていただくこととなったが、サーバールームにたどり着くまでにはIDカードとナンバーロックによる認証を複数回クリアしなければならず、入退室に関して厳重なセキュリティ対策が施されている。

サーバールームにたどり着くまでには複数回のセキュリティチェックをクリアしなければならない

そうしてたどり着いたサーバールームでは、スチールラックに整然と並べられたタワー型サーバーとラックマウントサーバーが稼働していた。このサーバールームは通常のデータセンターと同じく、ホットアイル/コールドアイルによる空調管理が実現されている。

サーバールームにはラックマウントサーバーとタワー型サーバーが混在している

ちなみに使えるねっとデータセンターは数千台規模のサーバーが収容可能となっている。創業時からの名残で、現在はまだタワー側サーバーの割合が高い状況だが、「徐々にラックマウント型に移行を進めている状況」(データセンター本部長 宮川幸司氏)とのことだ。

創業時の名残でスチールラックに整然と並べられたタワー型サーバー群。壮観

また、データセンターが国内に設置されていることによって快適な速度を実現しているほか、回線が冗長化されているため耐障害性も高い。さらに、使えるねっとのスタッフがネットワークやサーバーの管理をすべて行っているため、冒頭に述べたようなデータセンターを海外に設置していたり"間借り"したりしている事業者に比べ、緊急時の対応という面でも安心だ。

サーバールームに配備された空調機

床下からコールドアイルに冷気が送られる

万一に備える充実の発電・消火設備

停電などによって電力の供給がストップする万一の際に備え、使えるねっとのデータセンターにはUPSや発電機が備えられている。「中部電力からの電力供給が2系統と冗長化されていることや、自家発電機を備えていることにより、電力供給の問題でサーバーが止まることはありません」と宮川氏が語るように、震災後の重要な電源供給面での不安はまったくない。

約半日の電力供給が可能な発電機(サーバー用)

なお宮川氏によれば、これらの発電設備に加え、現在は「太陽光発電システムの導入も検討している」とのことだ。

消火設備はスプリンクラーではなく、IT機器に配慮した混合ガスによる消火システムが採用されている。非常時はボンベ内の高圧ガスがサーバールームに排出されるようになっている。

窒素ガスとアルゴンの混合ガスによる消火システムを装備

万一の際は天井から高圧ガスが排出され消火が行われる

本連載ではこれまで、長野に拠点を置く"手造り"からスタートした企業 使えるねっとのサービスやバックグラウンドを紹介してきた。マーケットの動向を読み、常に新しいことに取り組んできた使えるねっとのサービス品質は、このようなインフラや万全のセキュリティ体制によって実現されているのだ。

連載5回目となる次回は、そんな使えるねっとのサービス基盤を支えるパラレルスを取材し、同社の仮想化技術を紹介する。