Windows 10にも簡単Linuxインストールがやってきた

前回、MicrosoftがWindows 10におけるLinuxのセットアップを簡単にするという話題を取り上げた。現在開発段階にあるWindows 11ではLinuxのセットアップがとても簡単なのだが、Windows 10ではいくつかの手順を踏んで機能を有効化しなければならない。具体的には、次のステップが必要だ(関連記事:Windows 10でLinuxコマンドを実行する方法 (1) )。

  1. 設定アプリケーション:「アプリ」→「アプリと機能」→「オプション機能」→「Windowsのその他の機能」
  2. Windows の機能:「Linux用Windowsサブシステム」にチェックを入れる→「仮想マシンプラットフォーム」にチェックを入れる→「OK」→「今すぐ再起動」
  3. https://aka.ms/WSL2kernelから「x64マシン用WSL 2 Linuxカーネル更新プログラムパッケージ」をダウンロードしてインストール
  4. 管理者権限ターミナル:wsl —set-default-version 2
  5. Microsoft Store:「Ubuntu 20.04 LTS」→「インストール」→「起動」→ユーザー名とパスワード入力


これと比べ、Windows 11開発版では、次のコマンドを実行してシステムを再起動すれば、自動的にLinuxのインストールがほぼ完了する(関連記事:Windows 11でLinuxアプリケーション、コマンドを実行する方法)。

wsl --install -d Ubuntu

MicrosoftはWindows 10にもこの機能を導入すると発表しており、次のWindows Updateで導入するということだったので、早速確認してみた。結果から言うと、本当にこの方法でインストールできるようになっていた。

Windows 10にUbuntuをインストール(2021年8月以降)

動作確認を行ったのは「Windows 10, version 21H1, build 19043.1165」だ。2021年8月のWindows Updateを適用したWindows 10だ。

Windows 10, version 21H1, build 19043.1165

適用されている累積更新プログラム

WSL2を有効化するために必要になる設定は全て無効化やアンインストールした状態で、次のコマンドを実行してみた。

wsl --install

実行するコマンドは次のコマンドでもよい。デフォルトのディストリビューションがUbuntuなので、上記のコマンドも以下のコマンドも行う内容は同じだ。

wsl --install -d Ubuntu

なお、執筆時点ではディストリビューションとして次の名前を指定することができる。

  • Ubuntu
  • Debian
  • kali-linux
  • openSUSE-42
  • SUSE-12
  • Ubuntu-16.04
  • Ubuntu-18.04
  • Ubuntu-20.04


実行すると次のようになる。これまで個別に行っていたセットアップ作業が全て行われていることがわかる。

Ubuntuのインストール実行例

なお、インストール作業は管理者権限のターミナルで実行する必要があり、通常の権限のターミナルで実行すると、次のようにエラーが表示される。

インストール作業には管理者権限が必要

インストールが完了したらいったんシステムを再起動する必要があるのは、これまでと同じだ。手動で行ってきた作業が簡単になったというだけである。

システムを再起動すると、自動的にUbuntuのインストールが継続され、ユーザー名とパスワードの入力を求められる。

ユーザー名とパスワードを入力

これでインストール完了だ。あとはLinuxディストリビューション内での作業になる。パッケージをアップデートして、日本語パッケージをインストールし、ロケールの設定を行う。次のコマンドを実行すればよいだろう。

sudo apt update
sudo apt upgrde
sudo apt install language-pack-ja
echo 'export LANG=ja_JP.UTF-8' >> ~/.bashrc

パッケージメタデータのアップデート

パッケージのアップグレード

日本語パッケージのインストールとロケールのセットアップ

別のターミナルを起動してUbuntuを使ってみよう。次のように日本語メッセージが表示される状態になっているはずだ。

日本語メッセージが表示れる状態になっていることを確認

インストールしたパッケージの実行を確認

セットアップの手間はWindows 11開発版と同じだ。これでWindows 10もWindows 11と同じレベルでセットアップが簡単になったことになる。

開発者向けプラットフォームの認知が広がるWSL

今回の変更は、多くのLinuxユーザーにとって歓迎できるものだ。Windows 11を搭載したPCの出荷は2021年後半、既存のWindows 10ユーザーがWindows 11へアップグレードできるようになるのは2022年前半が予定されている。Windows 11へのアップグレードは無償だが、ハードウェアスペックの関係でWindows 10を使い続けるユーザーも相当数に及ぶと考えられる。Windows 10でLinux導入の敷居が下がることは、Linuxユーザーにとって重要なことなのだ。

最近では開発者のプラットフォームとしてWSLがランクに入るほどにはシェアを広げている。今後この傾向は広がることが予想されており、開発者にとって欠かせない環境になるはずだ。Windows 10におけるLinux導入の簡易化はこうした状況を後押しすることになるものと見られる。今後シェアがどう広がっていくのか、注目したい。