「データとAIの民主化」を掲げる米Databricks(データブリックス)。同社は、カルフォルニア州立大学バークレー校において、CEO兼共同設立者のアリ・ゴディシ(Ali Ghodsi)氏をはじめ、データとAIなどを研究するOSSの分散処理フレームワーク「Apache Spark」のクリエイター20人により、2013年にサンフランシスコで創業した。今回、ゴディシ氏にインタビューの機会を得たので、同社が掲げるデータとAIの民主化を中心に話を聞いた。
テクノロジーのオープンソース化を重視するDatabricks
—まず、あなた(アリ・ゴディシ氏)のバックグラウンドについて教えてください。
ゴディシ氏:私はイランで生まれ、5歳の時に難民としてスウェーデンに渡り、そこで育ちました。スウェーデンはモダンかつ近代的な国であり、多くのプログラミング、コンピュータ、データサイエンスをはじめとしたテクノロジーを学びました。
しかし、ソフトウェアで最も長けている国に行きたいと考えるようになり、米国のシリコンバレーしかないと思いました。スウェーデンからシリコンバレーに移住した時に感じたことは10年先の未来に来たということです。
そして、シリコンバレーで実現されていたものを米国のみならず、世界中にテクノロジーの民主化を広げていきたいと考えました。
—Databricks設立の背景を教えてください。
ゴディシ氏:設立に携わった20人は、2009年~2010年に「シリコンバレーのスタートアップが何をしているのか」ということを目の当たりにしていました。これらのスタートアップは膨大なデータをAIを用いて活用することで、素晴らしい結果を得ていました。
設立当初のビジョンは、こうしたスタートアップと同じことを世界に向けて提供していくことであり、当社において重要な点は”テクノロジーをオープンソース化する”ということです。オープンソース化により、世界中で大きなコミュニティを形成することを常に目指しています。
当社は、Apache Sparkをはじめとしたオープンソースプロジェクトのクラウド版をホスティングしており、現在では従業員数はグローバルで2000人超、オフィスは19か所に展開しています。顧客数は5000社に達し、年間経常収益は5億ドルです。
M&Aに関しても積極的であり、多くのスタートアップ企業で特定の技術に強みを持っていますが、規模が小さいために市場に到達できないという問題があるため、そのような企業に良い機会を提供してもらいたいと考えています。すでに20億ドルの資金調達をしているのもそのためです。
—新型コロナウイルスで世界中が一変しました。Databricksでは、どのような対応を行いましたか?
ゴディシ氏:新型コロナウイルスは全社員に影響を及ぼしています。ただ、ビジネス面では幸運でした。新型コロナウイルスにより、世界中の人々が未来に進んだと言っても過言ではありません。これは、Zoomでのミーティングやオンラインショッピングなどの利用の増加を見れば一目瞭然です。
マーケティングでは、オンラインイベントに対する知見が蓄積されたほか、営業活動についてはZoomでの会議で充分でした。パンデミック後もオンラインでイベントを継続していきますし、Zoomでの会議も行われていくでしょう。
こうしたことは、いずれは起きるだろうと考えられていたことですが、新型コロナウイルスの感染拡大により、加速度的に起きています。AIについても、将来的にAIを駆使する世界の到来は予測されていましたが、利用が加速しています。
ユーザーも、とにかくスピード感を持ってクラウドへの移行に取り組んでおり、パンデミック下において自社でデータセンターの運用をしたくないと考えています。そして、AIを用いて一層の自動化を望んでおり、当社の売り上げ、利益も拡大しています。昨年の4月~5月に2か月は一時的に落ち込みましたが、それ以降は急速に成長し、直近の2四半期では大きく成長しています。
当社では、パンデミック下においてデータとAIを活用した「Databricks Covid-19 Resource Hub」の無償版を提供し、病院、大学、研究機関に提供したほか、有償版もあり、大きな製薬会社とパートナーシップを締結しています。
これは、新型コロナウイルスの拡大を当社のプラットフォームを用いてモデリングし、ウイルスの拡散状況の把握や患者の追跡・管理、早期の臨床試験、リアルタイムで病院のベッド、防護服など医療設備のトラッキング、ウイルス遺伝学などに応用しています。