国内大手醤油メーカーであるキッコーマンは、2017年に設立100周年を迎えた。2018年4月には、新しい価値創造を目的とした長期ビジョン「グローバルビジョン2030」を策定。ビジョン達成に向けては、人材/情報/キャッシュフローの活用による「No.1バリューの提供」の推進/加速を掲げており、同社における働き方改革の重要性は、さらに増している。

4月22日に開催されたTECH+フォーラム「バックオフィス業務改革Day 2021 Apr.」で、キッコーマン 人事部 常務執行役員 CHO 人事部長 松﨑毅氏は、同社の働き方改革について「制度の活用は進展したが、人事/労務管理対応、そして今後はいかに生産性向上に結び付けていくかが大きな課題」と現状を説明。これまでの施策や展望を紹介した。

松﨑毅氏

キッコーマン 人事部 常務執行役員 CHO 人事部長 松﨑毅氏

在宅勤務/時差出勤/サテライトオフィスでコロナ禍対応

キッコーマンでは、2017年頃より働き方改革に取り組んでいたが、コロナ禍が外圧となり大きく進展した。特に、新型コロナウイルス感染症の影響が大きかった2020年度のポイントは、「在宅勤務」「時差出勤」「サテライトオフィス」の制度活用だった。

在宅勤務の制度自体は2017年5月に導入済みであったが、週4回までの回数上限や使用要件が定められていたことや、「管理職が利用しなければ使いにくい」といった社内の雰囲気がハードルとなって、あまり活用されていなかった。そこで、東京 2020 オリンピック/パラリンピックを機に在宅勤務の普及をより進めようとインフラを整えていたところ、新型コロナウイルス感染症が拡大し始め、予防対策の一環として同制度の上限/使用要件を撤廃し、出社制限をしたことで、急速に普及が進んだ。

時差出勤は、2019年8月に導入。コロナ対応として、サマータイムも取り入れることで、始業/終業時間を最大2時間スライドすることが可能となった。これにより、混雑時間帯を避けて通勤することができるようになり、感染リスクの低減につながっている。今後は通常の時間に戻し、同様の制度を継続していく予定だという。

サテライトオフィスに関しては、千葉県野田市にある本社や中央研究所に埼玉県や千葉県在住の社員を受け入れ、感染拡大が深刻な都内への移動を減らせるよう制度/整備を整えた。

このように、キッコーマンにおける2020年度の働き方改革は新型コロナウイルス感染症対策という側面が大きかったが、在宅勤務の導入などは、もともと育児や介護を行う社員への対応が主目的だったという。しかしながら、これからの働き方改革は「生産性向上」を目指していくことが最大のポイントだと松﨑氏は強調する。

「働き方改革により、いかにして生産性を上げるか、そもそも生産性とは何か、何を持って生産性を捉えるか……こうしたことを議論し続けてきて、まだ解は出ていません。経営トップに対し、働き方を変えることにより生産性が上がるということを示していくのがこれからの人事部の課題です」(松﨑氏)