三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンの化学系3事業会社の統合により、国内最大の大手総合化学メーカーとして2017年4月にスタートした三菱ケミカル。世界各国に約4万人の従業員を抱える大規模な組織ながら、ジョブ型の等級制度導入をはじめとする人事制度の大規模な改革を積極的に行ってきた。

2月25日に開催されたマイナビニュースフォーラム「働き方改革Day 2021 Feb. ニューノーマルのマネジメント、変化を生き抜く個人と組織のあり方」では、三菱ケミカル 取締役 常務執行役員 総務部・広報部・人事部 所管 中田るみ子氏が、同社の人事制度改革に関するこれまでの取り組みについて紹介した。

多様な人材がいきいきと働けるよう「三菱ケミカルは決めました」

3社の統合後、三菱ケミカルは、経営の基本戦略として健康経営およびダイバーシティ推進を同時に進めてきた。そして、2018年に人事制度改革へ向けて動き出し、2019年には、多様な人材がいきいきと活力高く働ける職場づくりに向けたさまざまな施策を「三菱ケミカルは決めました」(以下、「決めました」)と題して「30の宣言」のかたちにまとめて発信した

「決めました」宣言とその内容は、会社としてあるべき姿の3つのステップを実現していくことと紐付いているという。

1つ目のステップは「安全・安心・明るい職場」。これに関連して、「決めました」では、サービス残業の禁止、テレワークの推進、休日の作業を前提とした資料作成指示/休日メールの禁止などが宣言されている。

2つ目のステップは、「お互いを尊重する・認め合う」こと。「決めました」宣言には、性別/国籍/障がいの有無/性的指向/性自認に関わらず、多様な人材がいきいきと活躍できる職場にしていくこと、また、年齢や勤続年数ではなく、職務/経験/貢献度などを踏まえた登用を行うことが明記されている。

そして、3つ目のステップは、「自己実現/社員と会社のWin-Win」だ。「どこでどのように働きたいのか、社員のキャリア志向、希望も聞いた上で配置/育成を行います」などの宣言がこれに当たる。

さまざまなアプローチで自社の取り組みを社内外にPR

しかしながら、この裏には、社内の理解が進んでいかないという課題との戦いがあった。中田氏は「こうした取り組みは3社の統合直後から行ってきたが、社員に理解してもらえていないがために、配偶者の転勤で退職する従業員が出てくるなどくやしい思いをした。従業員にわかるように伝えていなかったことを反省した」と振り返る。

3社の統合前は、会社命令の異動やキャリアの決定は当たり前。年功序列/一律な処遇、新卒採用/終身雇用、国内人材を前提とした制度/コミュニケーションが当然のものとなっていたという。そうした旧来の制度から大きく転換し、新たな制度に変革していく動きを生み出すことは、特に大規模な組織では難しいだろう。

三菱ケミカルが取った方法は、会社が目指している姿を従業員に根気よく伝えていくことだった。

社内ポータルサイトに関連情報を掲載するだけでなく、ポータルサイト自体を作り変え、動画配信をスタート。動画では、制度を利用している従業員の生の声を紹介したり、制度の背景になっている考え方を伝えたりなど、さまざまなアプローチで「決めました」宣言を周知した。労働組合も動画視聴の呼びかけや機関誌への掲載などで協力。外部の媒体とも提携し、社外へのPRも同時に進めた。