前回解説したように、DXを実珟しお組織のアゞリティを䞊げるためには、経営局の理解ず珟堎の改革掚進チヌムリヌダヌの存圚が䞍可欠です。䞀方で、圌らが組織の倉革をいくら声高に叫んだずしおも、「どのように倉わるのか」「䜕を実珟するのか」ずいう戊略やポヌトフォリオビゞョンが明確でなければ、倉革ぞの取り組みは”絵に描いた逅”ずなっおしたいたす。今回は、組織のアゞリティを向䞊させるために、組織の戊略やポヌトフォリオ、取り組みをどのように扱うのかをご玹介したす。

今回解決する課題

今回解決する課題は、次の3぀です。

  • A-1優先床の高いビゞネスアむデアがあっおも、開発の着手たでに時間がかかる
  • A-2新技術が登堎しおも、それを甚いたサヌビスを他瀟に先駆けお生み出せおいない
  • D-5既存のレガシヌシステムの維持メンテナンスのコストが高く、DXに予算を確保できおいない

組織のDXを掚進するためには、経営局リヌダヌ局が具䜓的な「組織戊略ずビゞョン」を瀺した䞊で、垂堎や自瀟の状況に応じた「リヌン予算線成戊略ずそれに䌎う予算や䜓制の芋盎し」が必芁です。リヌン予算線成では、プロゞェクト単䜍ではなく䟡倀のある掻動単䜍で玠早く資金提䟛を行いたす詳现は、次回説明したす。

これを行うのが、䞋図に瀺す「SAFe Big Picture」の䞭の「ポヌトフォリオレベル」です。今回は、ポヌトフォリオレベルの栞ずなる「リヌンポヌトフォリオマネゞメントLean Portfolio Management」に぀いお抂説をお䌝えし぀぀、そこで扱うものの䞭で特に重芁な戊略テヌマポヌトフォリオビゞョンバリュヌストリヌムに぀いお説明したす。

SAFe

SAFe 5.0のBig PictureFull SAFe Configuration出兞https://www.scaledagileframework.com

組織のポヌトフォリオを叞る「リヌンポヌトフォリオマネゞメント」

第4回で觊れたように、ポヌトフォリオレベルでは以䞋のような項目を行いたす。

  • 組織の戊略テヌマずポヌトフォリオビゞョンの確立
  • リヌンな予算線成の実斜ずバリュヌストリヌムぞの予算の割り圓お
  • 組織の取り組み状況の評䟡ず戊略の芋盎し

ポヌトフォリオレベルは、組織のアゞリティ向䞊の䞭心的圹割を担っおいるず蚀えるでしょう。ポヌトフォリオレベルを導入するこずで、以䞋の項目の実珟が期埅できたす。

  • 䌁業戊略に沿ったビゞネス䟡倀の提䟛
  • 䌁業戊略に盎結した予算配分の可芖化
  • プログラムや゜リュヌションぞの暩限移譲予算配分ず、自埋的な自己管理自己組織化により、組織運営の効率化ず顧客ぞの䟡倀提䟛の迅速化を掚進
  • 垂堎の倉化、䌁業戊略の倉曎に応じた予算配分の芋盎し

ポヌトフォリオレベルで特に重芁なのが「リヌンポヌトフォリオマネゞメント」です。これは、SAFeのコアコンピテンシヌの1぀でもあり、ポヌトフォリオマネゞメントにリヌンアゞャむルシステム思考を導入したものです。その取り組みには、倧きく3぀の取り組みがありたす。

リヌンポヌトフォリオマネゞメント

リヌンポヌトフォリオマネゞメントの3぀の特長出兞https://www.scaledagileframework.com/lean-portfolio-management/

◆1. Strategy and Investment Funding戊略ず資金投資
組織の幹郚管理職、ビゞネスオヌナヌ、゚ンタヌプラむズアヌキテクトらが参画し、以䞋を行いたす。

  • 組織の戊略テヌマずポヌトフォリオビゞョン蚭定
  • デベロップメントバリュヌストリヌムぞの予算配分
  • ビゞネス゚ピック組織ずしお取り組むビゞネステヌマぞの投資刀断

◆2. Agile Portfolio Operationsアゞャむルポヌトフォリオオペレヌション
LACE、リリヌストレむン゚ンゞニア、スクラムマスタヌが連携し、ARTや゜リュヌショントレむンが協調し぀぀、組織党䜓が目暙に向かっお業務を遂行できるよう、調敎や支揎を実斜したす。

◆3. Lean Governanceリヌンガバナンス
LACE、ビゞネスオヌナヌ、゚ンタヌプラむズアヌキテクトが連携しお、以䞋を行いたす。

  • ポヌトフォリオ党䜓の投資の割り圓おの動的な調敎リヌン予算線成
  • ポヌトフォリオの投資期間ごずのフォヌマンスの枬定
  • 組織党䜓のコンプラむアンスの継続的な担保

これらに取り組み぀぀、結果ず状況に応じお組織の方針を倉えるこずで、アゞリティを向䞊し、新しく必芁なこずにすぐ取り組めるようにしたす。

では、䞊述の1぀目の取り組みにある「戊略テヌマ」や「ポヌトフォリオビゞョン」、「バリュヌストリヌム」ずは具䜓的にどのようなものなのでしょうか。その詳现を芋おいきたしょう。

組織の方向性を瀺す「戊略テヌマ」ず「ポヌトフォリオビゞョン」

ここでいう「戊略テヌマ」ずは、䌁業戊略䞭期経営蚈画などに結び付いた、組織のビゞネス䞊の目暙であり、組織の意思決定の指針のこずです。

組織は䌁業たたは官公庁、非営利団䜓の䞀郚であり、䌁業戊略の実行の䞀翌を担いたす。そのため、䌁業戊略に結び付くかたちで、戊略テヌマを決定したす。䌁業の経営戊略、事業蚈画、経営課題に加えお、垂堎競合の状況を入力ずし、SWOT分析/TOWS分析などを甚いお自組織の状況を明らかにしたす。リ゜ヌスを集䞭するべき事業領域や顧客セグメントが定たったら、「自組織が提䟛できる䟡倀」を怜蚎し、今埌12幎での実珟を目指す目暙を戊略テヌマずしお蚭定したす。この戊略テヌマが、組織のあらゆるビゞョン、予算配分、バックログなどの根拠ずなりたす。

䞀方で、「ポヌトフォリオビゞョン」ずは、戊略テヌマに基づく、組織の将来の到達点です。その芖芚化には、䞋図のような「ポヌトフォリオキャンバス」を利甚したす。

ポヌトフォリオキャンバス

ポヌトフォリオキャンバス出兞https://www.scaledagileframework.com/portfolio-vision/

ポヌトフォリオキャンバスでは、組織が提䟛する䟡倀が顧客たで届く流れバリュヌストリヌムや、それに関わる゜リュヌション、顧客、チャネル、予算、KPIなどず、その実珟に必芁な䞻芁な掻動ずリ゜ヌス、およびコスト構造ず収入源を明らかにしたす。なお、組織のポヌトフォリオは耇数のバリュヌストリヌムで構成されたす。

組織が提䟛する䟡倀ずその実珟たでのステップを明らかにする「バリュヌストリヌム」

ポヌトフォリオキャンバスの項目の䞀぀に、バリュヌストリヌムずいう聞き慣れない蚀葉がありたす。バリュヌストリヌムには、顧客の䟡倀を届けるたでのステップずそれに関わる人々、および゜リュヌションITシステムなどを掗い出す「オペレヌショナルバリュヌストリヌム」ず、゜リュヌションの提䟛を実珟するためのプロセスを掗い出す「ディベロップメントバリュヌストリヌム」の2皮類がありたす。2぀のバリュヌストリヌムのむメヌゞは、䞋図の通りです。

バリュヌストリヌムの党䜓像

バリュヌストリヌムの党䜓像出兞https://www.scaledagileframework.com/value-streams/

たた、バリュヌストリヌムを可芖化する手法ずしお、「バリュヌストリヌムキャンバス」を䜿甚したす。

バリュヌストリヌムキャンバス

バリュヌストリヌムキャンバス出兞https://www.scaledagileframework.com/value-streams/

ポヌトフォリオキャンバス、オペレヌショナルバリュヌストリヌムディベロップメントバリュヌストリヌム、バリュヌストリヌムキャンバスの䜜成時期や䜜成者を䞋衚にたずめたした。

  ポヌトフォヌリオキャンバス オペレヌショナルバリュヌストリヌムディベロップメントバリュヌストリヌム バリュヌストリヌムキャンバス
䜜成時期 SAFe 導入での「倉革゚ヌゞェントの教育」で状況に応じお䜜成。䞀定期間毎に継続的に曎新 SAFe 導入での「バリュヌストリヌムの特定ずARTの線成」で初期䜜成。その埌継続的に曎新 SAFe 導入での「バリュヌストリヌムの特定ずARTの線成」で初期䜜成。その埌継続的に曎新
䜜成者 幹郚、管理職、リヌダヌなど 幹郚、管理職、リヌダヌ、LACE、ステヌクホルダヌ 幹郚、管理職、リヌダヌ、LACE、ステヌクホルダヌ

SAFeは、これたでのITシステムの開発ずは異なり、プロゞェクト期間ず成果物の決たった開発ではなく、プロダクト䟡倀を実珟する゜リュヌションに焊点を圓おおいたす。その䞊で、プロダクトを考える際に着目するのがバリュヌストリヌムです。぀たり、「組織がい぀たでに䜕を䜜るか」ではなく「組織がどのような䟡倀の提䟛をどのように実珟するか」を意識しおいたす。

加えお、予算配分に関しおも、期間ず成果物の決たったプロゞェクトに予算を割り圓おお完成を目指すのではなく、耇数のバリュヌストリヌムの䞭から、その時の状況に応じおより䟡倀を生み出すバリュヌストリヌムに察しお重点的に予算を配分したす。戊略テヌマの䞋で、組織が提䟛する䟡倀が最倧ずなるように配分を芋盎すこずで、倉化に匷いDX組織を実珟したす。

たた、この考え方の䞭でもう1぀重芁なこずは、組織のポヌトフォリオの怜蚎に゜リュヌションITシステムが含たれおいるこずです。

これたで、特にIT業界でない䌁業においおは、ITシステムが業務効率化の方法だず芋なされ、新しいビゞネスを生み出すものだずは認識されおいない傟向にありたした。その結果、IT予算の甚途は埓来システムの維持管理に偏重し、新芏のビゞネス創出に関わるIT投資が積極的に行われおいなかったのです。

珟圚倚くの分野で、ITを駆䜿した新たなプレヌダヌが垂堎に参入しおおり、ビゞネスにおけるITシステムの重芁性は高たっおいたす。そのため、バリュヌストリヌムに着目する際には、戊略テヌマの実珟においおITシステムをどのように掻甚するかを考えるこずが求められたす。たた、ポヌトフォリオずは別に、ITの維持改修コストを抑えるための方法ずしお、倉曎に匷いアヌキテクチャマむクロサヌビスアヌキテクチャを採甚するこずが考えられたす。「組織」ず「システムの぀くり」の䞡面から改善するこずで、より組織のアゞリティを高めるこずが可胜になるのです。

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今回は、アゞリティの高いDX組織を実珟するための手法ずしお「リヌンポヌトフォリオマネゞメント」を取り䞊げ、その䞭で甚いられる「戊略テヌマ」「ポヌトフォリオビゞョン」「バリュヌストリヌム」に぀いお解説したした。組織倉革には、リヌダヌシップだけでなく、倉革のための手段ず、倉革埌の組織のビゞョンが䞍可欠です。その1぀の手法ずしお、今回の内容が参考になればず思いたす。