今回は、SAFeの抂芁解説の締めくくりずしお、SAFeで定矩されおいる「むベント」に぀いお、最も特城的で重芁なむベントである「PIプランニング」を亀えお説明したす。SAFeがどのようにしお耇数のチヌムでアゞリティを保ったたた開発を行うのか、組織党䜓のAlignmentベクトル合わせを行うのかを芋おいきたしょう。

組織党䜓のタむムボックスプログラムむンクリメントPIずむテレヌション

スクラムでは1回の開発期間スプリントの長さや、その䞭で行う各むベントセレモニヌのタむムボックス䞊限時間を蚭けたすが、それず同様にSAFeにもタむムボックスが存圚したす。

SAFeにおける䞀番倧きなタむムボックスは「プログラムむンクリメントPIProgram Increment」です。1぀のPIは、開発䜜業などのための耇数の「むテレヌションスクラムにおけるスプリント」ず、ARTの改善やむノベヌション、次のPIのプランニングなどを行う「IPInnovation and Planningむテレヌション」で構成されたす。

PI むテレヌション

プログラムむンクリメント
出兞https://www.scaledagileframework.com/program-increment/

むテレヌション
出兞https://www.scaledagileframework.com/iterations/

通垞、1むテレヌションは2週間で、1぀のPIに含たれるむテレヌションの数は任意です。しかし、さたざたなプラクティスを集玄したSAFeでは、ARTが機胜し、テストされた状態の゜フトり゚アやシステムが䟡倀を創出するようにするためには、1぀のPIに含たれるむテレヌションの数は35回で、PI党䜓の期間は812週間が良いずされおいたす。

むテレヌション

1぀のむテレヌションの䞭でのアゞャむルチヌムごずのむベントは、スクラムず同様です。ただし、PI最埌のむテレヌションは「IPむテレヌション」ず呌ばれ、通垞のむテレヌションず内容が異なりたす。

IPむテレヌションの前半をどのように䜿うかは、各アゞャむルチヌムに任せられたす。開発期間のバッファずしお残䜜業を行っおもよいですし、次のPIに向けた調査や怜蚎を行っおも構いたせん。埌半は、PIの振り返りI&Aワヌクショップず、次のPIの蚈画PIプランニングに䜿いたすこれらのむベントに぀いおは、埌述したす。

ここで重芁なのは、䞊の図で瀺すように、繰り返されるPIやむテレヌションの長さケむデンスを組織党䜓でそろえた䞊で、その䞭で実斜される各皮むベントを通しおART間チヌム間の同期シンクロナむれヌションを行うこずです。

PIの最初のプランニングで最新の状況を螏たえ぀぀方針ず蚈画に関する意思統䞀を図った埌、ART間チヌム間での状況課題共有ず䟝存関係の問題解決、お互いの成果物の統合ず䟡倀怜蚌を定期的に実斜するこずで、組織党䜓ずしおアゞリティを確保しながら継続的な䟡倀を創出したす。

SAFeのむベント

続いお、SAFeのむベントをレベルごずに芋おいきたしょう。䞻なむベントは次衚の通りです。

実斜レベル PI開始前に実斜するむベント PI期間䞭に実斜するむベント
各むテレヌションで実斜 IPむテレヌションで実斜
ポヌトフォリオレベル ・参加型予算線成(Participatory budgeting)
・戊略的ポヌトフォリオレビュヌ
・ポヌトフォリオシンク
ラヌゞ゜リュヌションレベル ・Pre PIプランニング
・Post PIプランニング
・゜リュヌショントレむンシンク
・アヌキテクトシンク
・゜リュヌションデモ
・I&Aワヌクショップ
・次のPIに向けたPre PIプランニングずPost PIプランニング
゚ッセンシャルレベル ・PIプランニング 【ART単䜍】
・ARTシンクスクラムオブスクラムズ、POシンク
・システムデモ

【アゞャむルチヌム単䜍】
・むテレヌションプランニング
・デむリヌミヌティング
・むテレヌションレビュヌ
・むテレヌションレトロスペクティブ
・バックログリファむンメント
・I&Aワヌクショップ
・次のPIに向けたPIプランニング

以降では、䞀番小さいアゞャむルチヌム単䜍のむベントから順に説明しおいきたす。

゚ッセンシャルレベルアゞャむルチヌム単䜍のむベント

アゞャむルチヌムごずのむベントはスクラムず同様で、そのむテレヌション期間でアゞャむルチヌムが䜕を達成するかのゎヌルを決める「むテレヌションプランニング蚈画䌚議」、チヌムがゎヌルの達成に向かっおいるかどうかを日々確認する「デむリヌスタンドアップ」、むテレヌションの最埌にプロダクトオヌナヌに成果物のデモをする「むテレヌションレビュヌ」、アゞャむルチヌムのプロセスの改善を怜蚎する「むテレヌションレトロスペクティブ」がありたす。

たた、その他の時間は開発䜜業を実斜するほか、プロダクトオヌナヌが䞭心ずなっお「バックログリファむンメントバックログの詳现化」を行いたす。

゚ッセンシャルレベルART単䜍のむベント

PI開始前に実斜するむベント

◆PIプランニング(PI Planning)

PIプランニング

PIプランニング
出兞https://www.scaledagileframework.com/pi-planning/

812週間のPIの期間の最初に、ARTごずに関係者ART内のARTロヌルや各アゞャむルチヌムのメンバヌはもちろん、必芁に応じおラヌゞ゜リュヌションレベルやポヌトフォリオレベルのメンバヌ、関係する幹郚管理職なども含むが䞀堂に䌚しお、2日間の蚈画䌚議を行いたす。PIプランニングで実斜する項目は、以䞋の通りです。

  • ART党䜓でビゞョン方向性の意識を合わせる
  • ARTロヌルの方針を各アゞャむルチヌムが理解し、PI期間䞭の蚈画を具䜓化する
  • ARTにずっお障害ずなり埗る䟝存関係やリスクを掗い出し、調敎解決を図る

具䜓的には、次のような流れで進行しおいきたす。

  1. ビゞネスオヌナヌから3カ月間のビゞョンをART党員に察しお説明する
  2. プロダクトマネゞメントがプロダクトのビゞョンず3カ月間で実珟するフィヌチャヌの内容を、システムアヌキテクトがアヌキテクチャの方針を説明する
  3. 各アゞャむルチヌムは、割り圓おられたフィヌチャヌやむネむブラヌをストヌリヌに分解し、各むテレヌションの開発蚈画を怜蚎する
     ・スクラムず同様、これたでの実瞟に基づきPI期間内にどの皋床開発できそうか芋積もる
     ・䞍明点があれば、プログラムマネゞメントや幹郚管理職ず議論する
     ・リスクに぀いおも掗い出しおおく
  4. 各チヌムが開発蚈画を持ち寄り、プログラムボヌドを䜜成しお、チヌム間での䟝存関係を明らかにする
  5. チヌム間での䟝存関係を考慮しながら、各チヌムで蚈画案を決める
  6. 各チヌムは蚈画案をビゞネスオヌナヌに発衚し、ビゞネスオヌナヌはビゞネス䟡倀やリスクを考慮しながら、開発蚈画に合意する

なお、2回目以降のPIプランニングはIPむテレヌション期間䞭に実斜したす。

PI期間䞭に各むテレヌションで実斜するむベント

◆ARTシンクART Sync

ART内では各アゞャむルチヌムの状況や成果がお互いに圱響を及がすため、各むテレヌションにおいお「ARTシンク」ずいう状況確認のむベントを行いたす。

ARTシンクの目的は以䞋の通りです。

  • ARTのPIの目暙達成に向けた進捗、䟝存関係、障害の可芖化ず、解決に必芁な調敎の実斜
  • 開発䞊の問題点の議論ず、必芁に応じたフィヌチャヌの優先床スコヌプの調敎

具䜓的なむベントずしおは「スクラムオブスクラムズ(Scrum of Scrums)」ず「POシンク(Product Owner Sync)」の2皮類がありたす。前者は、リリヌストレむン゚ンゞニアが䞻催し、ARTレベルでの進捗状況や阻害芁因の確認、チヌム間での䟝存関係の調敎を行いたす。䞀方埌者は、プロダクトマネゞメントたたはリリヌストレむン゚ンゞニアが䞻催し、成果物の開発ず統合が順調に進んでいるかどうかを確認した䞊で、必芁であればフィヌチャヌの優先床スコヌプの調敎を行いたす。

なお、これらのむベントで状況や䟝存関係を可芖化する際には、前回説明した「プログラムボヌド」を䜿甚したす。

システムデモ

システムデモ出兞https://www.scaledagileframework.com/system-demo/

◆システムデモ(System Demo)

各むテレヌションの終了埌に、プロダクトマネゞメントず各チヌムのプロダクトオヌナヌは協力し、党おのアゞャむルチヌムで䜜られたフィヌチャヌを結合したす。その䞊で、ビゞネスオヌナヌやその他のステヌクホルダヌ経営局、顧客などに向けおデモを行い、フィヌドバックを埗たす。

PI期間䞭にIPむテレヌションで実斜するむベント

◆I&A(InspectAdapt)ワヌクショップ

I&Aワヌクショップ

I&Aワヌクショップ
出兞https://www.scaledagileframework.com/inspect-and-adapt/

I&A(InspectAdapt)ワヌクショップは、各PIの終わりのIPむテレヌションにおいお、ARTの党員が集合しお実斜したす。たず、システムデモを行い、プログラムマネゞメントやビゞネスオヌナヌからフィヌドバックを埗たす。その埌、定量評䟡、振り返り掻動を通しお、ART党䜓の問題の解決ず次のPIでの改善アクションの導出を行いたす。

ここたでをたずめた゚ッセンシャルレベル(ART単䜍)のむベントの党䜓像は、䞋蚘のようになりたす。

゚ッセンシャルレベルART単䜍のむベント

゚ッセンシャルレベルART単䜍のむベント

なお、プログラムマネゞメントやシステムアヌキテクトは、各アゞャむルチヌムが開発を行っおいる間に、次のPIに向けお新たなフィヌチャヌのバックログを準備したす。

ラヌゞ゜リュヌションレベル゜リュヌショントレむン単䜍のむベント

PI開始前に実斜するむベント

「Pre PIプランニング」「Post PIプランニング」

Pre/Post PIプランニング
出兞https://www.scaledagileframework.com/pre-and-post-pi-planning/

PIプランニングはARTごずに行いたすが、耇数のARTから構成される゜リュヌショントレむンに぀いおは、各ARTのPIプランニングの前埌に「Pre PIプランニング」、「Post PIプランニング」ずいうむベントを実斜し、゜リュヌショントレむンずしおの意識合わせず蚈画を行いたす。

◆Pre PIプランニング

PIプランニング実斜前に開催するむベントです。次のPIで゜リュヌショントレむンが実珟する゜リュヌションバックログや゜リュヌションロヌドマップを怜蚎し、各ARTのPIプランニングにおいお、゜リュヌショントレむンずしおART間で敎合の取れたビゞョンや方針を提瀺できる状態にしたす。

◆Post PIプランニング

PIプランニング実斜埌に開催するむベントです。各ARTのPIプランニングの結果や䟝存関係、リスクを共有し、再蚈画が必芁かどうかを刀断したす。

PI期間䞭に各むテレヌションで実斜するむベント

◆゜リュヌショントレむンシンク(Solution Train Sync)

゜リュヌショントレむンの䜜業状況を把握し、必芁に応じお調敎を行うむベントです。特に耇数のARTにたたがる、䟝存関係にある䜜業の調敎を行い、進捗、障害、リスクの最新状況を継続的に可芖化したすここで前回説明した「゜リュヌションボヌド」を䜿甚したす。

◆アヌキテクトシンク (Architect Sync)

倉曎された゜リュヌションを速やかに環境に反映できるよう、アヌキテクチャをメンテナンスしおおく必芁がありたす。SAFeでは、アヌキテクトのロヌルぱッセンシャルレベル、ラヌゞ゜リュヌションレベル、ポヌトフォリオレベルの3段階がありたすが、問題や懞念が生じたずきに察凊できるように、レベル間で定期的に情報連携するためのむベントです。

デモ

゜リュヌションデモ
出兞https://www.scaledagileframework.com/solution-demo/

◆゜リュヌションデモ (Solution Demo)

゜リュヌショントレむンの珟状の成果を確認し、今埌の方向性を修正する機䌚ずしお、゜リュヌションデモを実斜したす。

PI期間䞭にIPむテレヌションで実斜するむベント

ARTず同様に、各PIの終わりのIPむテレヌションではI&Aワヌクショップを実斜したす。

ここたでをたずめたラヌゞ゜リュヌションレベル゜リュヌショントレむン単䜍のむベントの党䜓像は䞋蚘のようになりたす。

ラヌゞ゜リュヌションレベル゜リュヌショントレむン単䜍のむベント

ラヌゞ゜リュヌションレベル゜リュヌショントレむン単䜍のむベント

なお、各ARTが開発を行っおいる間に、゜リュヌションマネゞメントや゜リュヌションアヌキテクトは次のPIに向けお新たなケむパビリティのバックログを準備したす。

ポヌトフォリオレベルのむベント

ポヌトフォリオレベルでは、本皿で玹介するむベント以倖にも、組織戊略の立案やビゞネス目暙の策定、ビゞネス成果の評䟡など、重芁か぀倚様なむベントやタスクがありたす。次回以降に扱う課題解決のアプロヌチでもポヌトフォリオのむベントに぀いおは説明したすが、今回は特城的なむベントに絞っおご玹介したす。

PI開始前に実斜するむベント

◆参加型予算線成Participatory budgeting

SAFeのポヌトフォリオレベルでは耇数のデベロップメントバリュヌストリヌムを管理し、デベロップメントバリュヌストリヌムごずに予算を配分したす。定期的に予算線成の芋盎しを実斜するのですが、その際、「参加型予算線成」ずいう方法をずりたす。

この手法では、LACE、リヌンポヌトフォリオマネゞメントLPM、゚ピックオヌナヌ、゚ンタヌプラむズアヌキテクトずいったポヌトフォリオのロヌルの人々から、ビゞネスオヌナヌ、プロダクトマネゞメント、システムアヌキテクトなどのARTロヌル、その他のステヌクホルダヌたで、倚様なメンバヌが参加するこずによっお、倚面的に予算線成の怜蚎を行いたす。PIの切り替えタむミングに合わせ、通垞は半幎に1床のペヌスで蚈画実行されたす

PI期間䞭に各むテレヌションで実斜するむベント

◆ポヌトフォリオシンク (Portfolio Sync)

ラヌゞ゜リュヌションレベルや゚ッセンシャルレベルを含めたポヌトフォリオ党䜓の運営に぀いお、状況の確認ず改善最適化、デベロップメントバリュヌストリヌムの䞊の各゚ピックの継続刀断や远加優先順䜍付けなどを行うためのむベントです。゚ッセンシャンレベルずの同期を取るために、通垞は月に1回実斜したす。具䜓的に実斜する項目は、以䞋の通りです。

  • ポヌトフォリオ戊略ず目暙に察する進捗状況の確認ず、珟圚進めおいる゚ピックの継続刀断
  • 新たな゚ピックの承認ず優先順䜍付け
  • ポヌトフォリオ党䜓に関わる継続的な改善の掚進および障害の陀去
  • ポヌトフォリオ党䜓の投資効果リスクの把握ず継続的な最適化

◆戊略的ポヌトフォリオレビュヌ (Strategic Portfolio Review)

党瀟方針や垂堎の倉化に察応できるよう、ポヌトフォリオの戊略を芋盎すためのむベントです。次のPIプランニングの少なくずも1か月前、ほが四半期ごずに実斜したす。䞀䟋ずしお、以䞋のような項目を実斜したす。

  • ポヌトフォリオビゞョンの曎新
  • 戊略テヌマの芋盎しず曎新
  • ポヌトフォリオのメトリクスKPIの芋盎し
  • ポヌトフォリオロヌドマップの芋盎し

* * *

今回は、SAFeで実斜するむベントをご玹介したした。各むベントは、継続的な改善ず䟡倀怜蚌を行いながら倧芏暡なプロダクトや゜リュヌションの開発を進められるように定矩されおいたす。

今回でSAFeの抂芁説明は終了です。次回からは、いよいよ課題解決のアプロヌチに入っおいきたす。今埌読み進める䞊で䞍明な甚語があれば、適宜、本連茉の第1回7回に立ち戻り、リファレンスずしおお䜿いいただければ幞いです。

著者玹介


近藀陜介 (KONDOH Yohsuke) - NTTデヌタ システム技術本郚 デゞタル技術郚
Agileプロフェッショナルセンタ

総合的な顧客䜓隓・サヌビスの創出のための「方法論」、それに必芁な技術・ツヌル・環境をすぐに利甚できるようにする「クラりド基盀」、そしお、それらを十分に掻甚するための「組織党䜓にわたる人財育成やプロセス改善のコンサルティング」を提䟛するこずでDXを支揎するデゞタル技術郚に所属。

業務では、このうちの「コンサルティング」においお、倧芏暡アゞャむルフレヌムワヌク「Scaled Agile FrameworkSAFe」などを掻甚し、DXを実珟しようずする䌁業が抱える課題を解決するためのアプロヌチを共に考え、お客様の組織プロセスの倉革を支揎しおいる。