12月3日、4日に開催された「マイナビニュースフォーラム 2020 Winter for データ活用」では、特別講演にみずほフィナンシャルグループ デジタルイノベーション部 ビジネスデザインチーム 次長 多治見和彦氏が登壇。「大企業での新規ビジネス創出を成功させるために - 地域振興券を電子化した取り組み」と題し、地域振興券や商品券を電子化した取り組みや、今後のデータ活用のビジョンなどについて解説を行った。

メガバンクとしての危機感に対応するために

みずほフィナンシャルグループでは、2014年にみずほ銀行内にインキュベーション室を、2015年にみずほフィナンシャルグループ内にインキュベーションプロジェクトチーム(PT)をそれぞれ新設し、デジタル変革に向けた取り組みを推進してきた。

「メガバンクとして危機感を覚え、対応している状態です。デジタライゼーションに向けた取り組みは、次世代のお客さまニーズに対応するための新規ビジネスの創出と、みずほ自身の業務スタイルの変革を目的としています」(多治見氏)

多治見和彦氏

みずほフィナンシャルグループ デジタルイノベーション部 ビジネスデザインチーム 次長 多治見和彦氏

同社は2015年までに外部のネットワーキングやFinTech企業への投資、イベント協賛といった”種まき”に取り組んだものの、「新規ビジネス創出らしきこと」には着手できていない状態だった。そこで、2017年にインキュベーションPTを発展的に解消し、デジタルイノベーション部が新設されたというわけだ。

「『新しいみずほをつくるんだ』という意気込みで、デジタルイノベーション部を作りました。とはいえ、みずほの内部(の組織)であり、まだまだ外部企業との連携が弱い。そこで外に出ようということで、2017年6月にBlue Labを設立しました。インキュベータとして、あらゆる産業/業種に裾野を広げ、新たなテクノロジーを活用して次世代のビジネスモデルを創造することを目指しています」(多治見氏)

そうした取り組みの中から生まれたのが、「デジタル地域振興券」だ。

デジタル地域振興券のメリット

デジタル地域振興券は、従来紙で提供されてきた地域振興券をデジタル化し、コスト削減、三密回避、店舗負担の低減などを目指したものだ。すでに東京都三鷹市、山形県山形市、福岡県新天町商店街、福岡県花みずき通り商店会などで導入されている。

「デジタルと比較して、紙の地域振興券には、高コスト、高リスク、非効率という課題があります。コストについては、印刷コスト、郵送コストに加え、販売窓口の人件費も発生します。また、リスクとしては、販売窓口での”三密”の発生や受け渡し時に”接触”が発生するリスクや、ホログラムなどを施さないと偽造されるリスクがあります。さらに、店舗が終業後に紙の振興券を集計して換金、郵送するなど非効率であることも課題でした」(多治見氏)

デジタル地域振興券では、これらの課題を解消するとともに、さらに多くのメリットを提供できる。まず、コスト削減については、販売と印刷のためのコストが減ることで約30%削減が可能だという。また、オンライン購入も可能なため、利用者が振興券を買いに行く必要がなくなり、三密を回避できる。さらに、端末設置も換金も不要なため、店舗負担が少ない。

加えて大きなメリットが、デジタル化されることでそこから生み出されるさまざまなデータを活用した新しいビジネス創出が可能になることだ。