B2B企業のビジネスを飛躍的に成長させる営業プロセスを確立したい。そう考える企業経営者に示唆を提供する1冊として注目を集めているのが、書籍『THE MODEL』(発行:翔泳社)である。

9月17日にマイナビニュースが開催したオンラインセミナー「Digital Marketing DaysDay2:[BtoB] 営業スタイル変革の第一歩を」では、その著者であるジャパン・クラウド・コンピューティング パートナー/ジャパン・クラウド・コンサルティング 代表取締役社長 福田康隆氏が登壇。「分業から共業へ。自社の営業・マーケティングプロセス確立に向けて」と題し、パラレルマーケター/Still Day One 代表社員 小島英揮氏が聞き手を務めるかたちで対談が実施された。

小島英揮氏、福田康隆氏

(写真左から)小島英揮氏、福田康隆氏

10年前とは大きく様変わりした営業プロセス

『THE MODEL』では、4つの役割で構成される営業プロセスの解説だけでなく、福田氏が日本オラクル、セールスフォース・ドットコム、マルケトでの実践経験を通して得た仕事の原理と原則が綴られている。同氏は自著の出版以来、多くの人たちから質問を受ける機会が増えているが、なかでも多いのが「分業」と「リードのリサイクル」に関するものだという。セミナーではこの2つに焦点を当てたトークが展開された。

現在、セールスフォースをはじめとする外資系SaaSベンダーの営業組織は、リードの獲得から受注に至るまでのプロセスを分業体制でカバーするスタイルが標準になりつつある。そのプロセスとは、「マーケティング」「インサイドセールス」「営業」「カスタマーサクセス」から成る4つのチームがそれぞれ「獲得リード数」「案件化数」「受注件数」「契約更新件数」をKPIに持ち、相互に連携してビジネスを進めるというものだ。最近では、外資系のベンダーだけでなく、国内スタートアップもこれに倣う傾向が見られる。

一方、従来型の営業スタイルでは、1人の営業が新規顧客との商談から既存顧客のクレーム対応に至るまで幅広い業務を担当する。これは野球で言えば、全てのピッチャーに先発完投を要求するようなものだ。

多くの企業が、営業プロセスの分業化へと変革を進める背景には市場環境の変化がある。10年前、典型的なB2Bのソフトウエアビジネスの世界において、顧客が情報収集する方法は主に営業担当者から話を聞くことだった。しかし、現在の顧客はWebサイトから自分で情報収集して、詳しい話を聞く候補を絞り込む。営業に「話を聞きたい」と声がかかった頃にはすでに勝負が決まっていることも少なくない。つまり、商談の主導権は顧客に移っているのだ。営業する側としては、「お客様は専任の営業が担当につくほうがうれしいのではないか?」と思うかもしれない。しかし、福田氏が実際に聞いた顧客の声は「ごあいさつだけでもと押しかける営業ほど、うっとうしいものはない」という辛辣なものだったという。

顧客が必要な情報を必要なタイミングで得たいと考えているのであれば、インサイドセールスが間に入り、嫌がられない程度に早めに情報を提供して、温まった段階で営業に引き渡すように変えればいい。また、既存顧客の対応をカスタマーサクセスチームに任せれば、営業は商談化に集中できる。プロセスの分業を進めて効率化することと、顧客の要望に応えることは両立できるわけだ。

小島氏も、従来型の営業がこなす業務範囲の広さに警鐘を鳴らす。組織が成長途中の場合は何とかなっても、そのやり方では全方位をこなせるスキルのそろった人を採用しなくてはならないため、組織が大きくなるほど思うように人員を増やせなくなる。「営業組織の人数が増えたとしても、分業体制のほうがチームパフォーマンスは高くなる」と小島氏は経験談を語った。