オンプレミスからクラウドへの移行プロジェクトで求められるのは、クラウドの特性を最大限活かすことである。9月8日に行われたマイナビニューススペシャルセミナー「クラウド移行、成功と失敗の分岐点」では、クラウド移行に関する知見を持つ有識者らが集結。事例を交え、正しい方法論やソリューションについて解説を繰り広げた。
同セミナーの基調講演「アンチパターンから学ぶクラウド移行の鉄則」に登壇したZOZOテクノロジーズ 技術開発本部 アーキテクト岡大勝氏は、クラウド移行において「やってはいけないアンチパターン」を紹介すると共に、自らの経験から学んだクラウド移行の「5つの鉄則」を共有した。
クラウド移行「3つのアンチパターン」
クラウド移行において、選択肢は1つではない。どのベンダーのサービスにするかから始まり、アプリをどうするか。DBをどうするか。そのシステムは社内向けか、社外向けか……と検討を深めるほど、何が正解なのかがわからなくなるかもしれない。
そんな担当者に向けて岡氏が「やってはいけない」と挙げたのが以下の3つの項目である。
- アンチパターン1:目先の動機だけで移行しようとする
- アンチパターン2:今の構成のまま移行したい
- アンチパターン3:クラウド移行の課題は技術だと考えている
これら3つのパターンのいずれかに当てはまる場合、そのクラウド移行はコスト上昇とサービスレベルの低下に陥るのだという。典型的な例としては、クラウドで既存データセンターを再現しようと、VMを並べた構成にするケースが挙げられる。ベンダーは割引プランを提供してくれるが、オンプレミスと同じ使い方をすると以前よりもコストが高くついてしまうし、VMのメンテナンスの負担も大きくなる。ユーザーからは同じに見えたとしても、クラウドはホスティングと同じではない。期待と現実が大きくずれることのないよう、クラウドの特性をよく理解したいところだ。
クラウドの特性で最も理解するべきことは、オンプレミスと比べて短期的にも長期的にも「変化を前提に設計されていること」である。例えば、小売業ではアクセスが少ない夜間はリソースを小さく、反対に平日の午後はリソースを大きく割り当てることがあるだろう。また、サービスの拡張や新機能を追加する場合にリソースの追加、サービスを止める場合はリソースの解放が必要になる。こうした特性を考えると、「変えないことが前提のシステムであれば、クラウドではなくホスティングのほうが適している」と岡氏は説く。