企業によるRPAの活用が進む一方で、導入してみたものの思ったように効果が出ないという声も聞く。RPAの展開やデジタル化を進めるには、単に人による作業をRPAに置き換えればよいというわけではなく、社内の体制づくりや現場で働く社員の協力が不可欠だ。

第一生命保険(第一生命)では2017年度からRPAの導入を開始し、年間約23万時間の定型業務の削減に成功しているという。9月3日に開催されたマイナビニューススペシャルセミナー「全体生産性から導く『働き方改革』主導法」にて、第一生命が推進してきたRPAやAIを活用したデジタル化の取り組みや将来の構想について、同社執行役員 拝田恭一氏が紹介した。

拝田恭一氏

第一生命保険 執行役員 拝田恭一氏

第一生命によるRPA導入の道のり

1902年に「日本で最初の相互会社」として誕生した第一生命。現在は、日本国内の人口減少/市場性を踏まえて、9カ国にて事業を展開する。国内全従業員数5万5000名のうち、内勤職は1万名ほど。拝田氏が今回紹介するのは、事務の生産性向上に向けたRPA活用事例だ。

「人材不足のなかで新規事業分野への展開を行うべく、既存事業を効率化しながら人材を再配置するという取り組みをここ数年間実施しています。その手段の一つとなるのが、RPAです。RPAで単純作業を効率化し、チャレンジングな仕事に人員を再配置しています」(拝田氏)

第一生命がRPAの導入を検討し始めたのは、2016年。一部企業が導入をし始めていた時期だが今ほどの盛り上がりはなく、国内ベンダーが少ない状況のなか、手探りで進めたという。

当時について拝田氏は、「コンサル企業から提案があり、まずはPoCでやってみようということになったが、自社システムとの相性や既存システムの改修などが課題となった。また、RPAを大規模に導入する場合は、経営層の理解が必要。どこまでRPAを展開できそうかある程度見込んでおく必要があるので、ビジネススコープを検証しておかなければならない。この作業に3カ月程度要した」と振り返る。そして2017年からはトライアルで運用をスタートし、2018年には全社展開に至った。

RPAの導入において注意すべきポイントの一つに、社内の体制づくりがあるとする拝田氏。「ビジネスのオペレーションを理解している人が参加しなければRPA導入は上手くいかない。オペレーションを担う各部門の協力は欠かせない」と、現場との協力体制の重要性を指摘する。

第一生命では、全社およそ80の部署の各人員に、RPA化を推進する「RPAアンバサダー」を任命。また、事務企画部においてロボを管理する部門を設け、RPA全体の運用や費用管理、開発(セットアップ)/保守を担当するような体制を構築した。さらに、RPAだけでなくExcelやAccessなども含めたITツールの利用を俯瞰的に検討しながら業務をコンサルティングする機能も同部署に設けた。

しかし「RPA化したい案件がありすぎて、どこから手を着けてよいかわからなかった」と拝田氏は導入開始時の状況を語る。こうした課題を解決するために、RPA化案件選定会議を設定し、そこでの議論の結果によって優先順位を決めていったという。

RPA推進体制

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