新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、急速にテレワークが普及した。しかし、通常時と比べて対応できる業務が減ったり、業務効率が落ちてしまったりといった課題を抱えている企業もある。

8月20日に開催されたマイナビニューススペシャルセミナー「ひとり情シスの在宅環境づくり」では、情報システム担当者のリソースが限られていたとしてもテレワークを上手に導入するために利用すると良いテレワークツールの実践的な組み合わせや、助成金/支援施策の上手な活用法などについて、パソナ リンクワークスタイル推進統括 湯田健一郎氏が紹介した。

湯田健一郎氏

パソナ リンクワークスタイル推進統括/東京テレワーク推進センター 事業責任者/総務省 テレワークマネージャー 湯田健一郎氏

テレワークの現状 - いかに経営者を説得するか?

コロナ禍によってテレワークを導入する企業が急激に増えた。東京都の調査によると、4月時点での都内企業(従業員30名以上)のテレワーク導入率は、3月時点と比較して2.6倍となっている。さらに、実際にテレワークを利用している社員の割合は、昨年12月時点では2割程度だったのに対し、4月時点ではおよそ5割にまで上昇。昨年12月時点では1.2日程度だったテレワーク月間平均実施日数は、4月には12日程度にまで増加した。導入企業数だけでなくテレワークの実態までも変化していることが、この調査結果からうかがえる。

一方で、日本生産性本部の調査によると、新型コロナウイルス収束後もテレワークを継続したいという回答が6割強だったのに対し、自宅での勤務の効率が上がったとの実感は3割強に留まったという。

こうした状況を踏まえて湯田氏は、テレワーク導入に関する経営者や管理職への説明の際に、「生産性を維持/向上しつつテレワークを進めていくという観点」が重要であるとする。

「テレワーク」という言葉の定義には、在宅勤務だけでなくモバイルワークやサテライトオフィス勤務なども含まれる。テレワークの導入目的を在宅勤務だけに絞ってしまうと経営者の説得は難しいかもしれないが、移動中や客先などでも仕事が行えるといったモバイルワークまで含めたテレワークのメリットが説明できれば、比較的理解が得られやすいだろう。在宅勤務であっても、一部を自宅で勤務する部分在宅から取り入れることで、ハードルは下がる。

20年前のテレワークは育児/介護などを目的とした「個人の視点」が中心となっていたが、現在ではチームの生産性や就業持続性の向上、就業機会の拡大につながる「組織の視点」が重要になっている。そして、組織の視点は、売り上げや利益の向上といった事業への効果にもつながる。湯田氏は、「経営者に対しては、組織の視点や事業の視点でリモートワークがどう使えるかといった説明をしたほうがよい」とアドバイスする。