動画配信、オンラインゲームから太陽光発電まで、40以上のさまざまな事業を手がけるDMM.com。同社は昨年、技術志向のテックカンパニーへと変革していくため、「当たり前を作り続ける」というDMM TECH VISIONを公開した。
DMM TECH VISIONは、”当たり前”をアップデートし続けていくためのテックチームの在り方が表現されたものだ。
こうしたビジョンをもってDMM.comのテックチームを率いるのは、昨年10月にCTOに就任した松本勇気氏だ。松本氏は東京大学在学中に、3社のスタートアップの立ち上げに関わった後、Gunosyへ入社。同社CTOとして会社の規模拡大に伴うエンジニア組織の立て直しを実施したほか、新規事業開発を手掛けた経験も持つ。
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DMM.com CTOの松本勇気氏(左)と同 General Engineering Managerの大久保寛氏(右) |
現在、松本氏はDMM.comのテックカンパニー化というミッションの達成に向けて、まずはエンジニア組織の改革を進めている。松本氏のCTO就任によってエンジニアの組織、そして評価制度はどう変わりつつあるのだろうか。
松本氏と、エンジニアの人材育成を統括する General Engineering Manager 大久保寛氏に聞いた。
CTO就任直後にエンジニア組織としてのビジョンとバリューを設定
CTO就任当時の状況について松本氏は、「DMM.comをテックカンパニー化していきたいという考えは社内にすでにあったものの具体的な将来像はない状態で、実際には長らく使ってきたシステムがあったり、情報のサイロ化が起きていたりなど、大きな会社のよくある問題が詰まっているような状況でした」と振り返る。
そこで松本氏は、まず現状分析から着手していくことにする。主要事業の本部長やマネージャーに対して30分から1時間程度のヒアリングを行い、社内の課題を洗い出していった。ヒアリングは、1日十数本に及ぶ日もあったという。
「ヒアリングで出てきた課題を付箋紙に書き出し、グルーピングして、依存関係をチェックして……と、いわゆるKJ法を使って状況を整理していきました。それをもとに透明性の重要度やコミュニケーションのあるべき姿を見直したり、テクノロジー面の課題、その解決手順・方法などを考えたりなどして、最終的には端的な言葉に落とし込みました。それがDMM TECH VISIONです」(松本氏)
そして、このビジョンを達成するうえで必要となるのが、下記4つのDMM TECH VALUEだ。
こうしたビジョンやバリューは、「課題をひっくり返した言葉」だという松本氏。
「2018-19年時点での当たり前=ベストプラクティスができていないケースが多いという課題がありました。したがって、『当たり前を作り続ける』という言葉は、さまざまな事業を展開している企業として、新しいものにチャレンジして当たり前を自ら作っていくというスタンスを表現しつつ、ベストプラクティスの集合体をきちんと使いこなせる組織であろうという思いを込めたものでもあります」と説明する。
DMM TECH VALUEのひとつにあるAGILITYという言葉も、リリース速度やシステムの複雑度等に課題を感じたことから自然と出てきたものだという。