いま、世界各国ではキャッシュレス決済への対応が加速している。これまで”現金主義”の日本ではなかなか浸透しなかったが、ここにきて大きな動きが見え始めたようだ。

そこで今回は、スマホ決済サービス「Origami Pay」を提供している、Origami マーケティング部 ディレクターの古見幸生氏にインタビューを実施。世界と日本におけるキャッシュレス決済の現状や、そのメリットなどを伺った。

Origami マーケティング部 ディレクターの古見幸生氏

世界各国で対応が加速しているキャッシュレス決済

いま世界各国では、現金のやりとりなしで支払いが行える「キャッシュレス決済」への対応が加速している。

日本銀行 決済機構局が2017年2月に発表した「BIS 決済統計からみた日本のリテール・大口資金決済システムの特徴」によると、調査時点(2015年)における現金流通残高の対名目GDP比率は、スウェーデンがもっとも低く1.7%。同国では、政府による脱現金社会に向けた法的な手当て施策が行われており、小規模な店舗でも現金決済に対応していない店舗が数多く見受けられる。

また、隣国の中国もキャッシュレス化が進んでいる国のひとつ。こちらは「支付宝(アリペイ)」や「Wechat Pay(微信支付/ウィチャットペイ)」によるQRコードを用いた支払い方法が広く浸透している。

さらに、最近はメーカー各社から決済機能付きのスマートウォッチや指輪型ウェアラブルデバイスなども登場しており、キャッシュレス決済の動きはますます加速しそうだ。

ようやく日本にもキャッシュレス決済の波が到来

一方で日本はといえば、いまだ根強く現金支払いの習慣が根強く残っている状態だ。

前述の調査によると、日本における現金流通残高の対名目GDP比率は19.4%と、BIS決済・市場インフラ委員会(CPMI:Committee on Payments and Market Infrastructures)メンバー国の中でもっとも高い結果となっている。

そんな日本においても、政府側でようやくキャッシュレス決済への取り組みに本腰を入れる姿勢が見えてきた。まず、2016年6月に閣議決定された「日本再興戦略 2016」で2020年を視野に入れたキャッシュレス化推進を示し、2017年5月公表の「FinTech ビジョン」ではキャッシュレス化促進のための課題や方策を継続的に分析・検討していく必要性を提示。

そして、2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略 2017」では、KPIとして10年後の2027年までにキャッシュレス決済比率を4割程度まで増やすことを発表。その後、2025年に開催される大阪・関西万博に向けて、この目標を前倒しした。日本もここにきて、ようやくキャッシュレス決済の波が訪れようとしているのだ。

ユーザーと加盟店の双方にメリットがあるキャッシュレス決済

それでは、キャッシュレス決済は実際にどのようなメリットを生み出すのだろうか。

古見氏は「まずユーザー側では、現金を持ち歩くことなく、手軽かつ素早く決済できる点が挙げられます。小銭がかさばらないのはもちろん、スマートフォンを使ったモバイル決済なら財布やカードケースすら不要で、瞬時に会計が済ませられるわけです。一方で、キャッシュレス決済は加盟店にとってもメリットがあります。現金を数えたりお釣りを渡す手間がないためレジ業務の効率化が図れますし、なにより現金管理コストが大幅に減らせるのは重要なポイントです。実店舗に現金を置くことはそれ自体がリスクにつながります。チェーン店舗における現金の回収作業や店頭で現金を扱うための保険加入などは、加盟店にとって大きな負担です。しかしキャッシュレス決済が普及すれば、これまで現金管理にかけていた手間や時間が減り、本質の接客業務に注力できるようになります」と説明する。