飲食店に入ると、iPadをレジ代わりに使用しているシーンは珍しくなくなった。そんなPOSレジアプリで、先頭集団に位置するリクルートライフスタイルの「Airレジ」が2016年11月に3周年を迎えた。同12月に行われた「Airレジ カンファレンス2016」の基調講演にも登壇した同社 執行役員 ネットビジネス本部 スモールビジネスソリューションユニット長の大宮英紀氏に、Airレジの現状と見通しについて話を聞いた。

リクルートライフスタイル 執行役員 ネットビジネス本部 スモールビジネスソリューションユニット長 大宮 英紀氏

AirペイのApple Pay対応で小規模店舗の導入進む?

――Airレジの現状についてお聞かせください

大宮氏 : 2016年11月19日でリリースから3年を迎えました。9月末時点で25.5万アカウントがアクティブ(2015年同月末時点20.5万、前年同月比24%増)であり、利用店舗数ではNo.1だと思います。

3年間の歩みでは、Airレジを皮切りに受付管理アプリの「Airウェイト」、予約管理の「Airリザーブ」、モバイル決済の「モバイル決済 for Airレジ」、決済サービスの「Airペイ」と、さまざまなサービス業の方を支援するサービスをリリースしてきました。

プロダクトに限らず、2016年4月からはビックカメラの店舗でAirレジの導入支援などを行うサービスカウンターを設置し、東京の3店舗から26店舗まで増えました。また、AppleのMobility Partnerとなったことで開発環境や技術の最適化を進めたことに加え、Apple StoreにおけるAirレジの相談受付なども行っています。

――順調にビジネスが伸長していく中で、今後はどういう手を打たれるのでしょうか

大宮氏 : すでにリリースしているサービスも含まれますが、4つの進化をカンファレンスで発表しました。それが「レストランボード」の業務サポートパックと「POICHI for Airレジ」のポイントプログラムへの対応、AirペイのApple Payへの対応、「おみせのでんき produced by Airレジ」の提供です。

――ポイントプログラムとAirペイは10月に大きな発表がありましたね

大宮氏 : ええ、POICHI for AirレジではJCB加盟店で共通ポイントの付与・決済が可能になる「ポイントおまとめサービス POICHI」のスキームを活用してTポイントとPontaのポイントサービスプログラムを小規模店舗でも利用できるようになります。一方でAirペイは、当初よりご好評をいただいており、Airペイに切り替えて売上アップに繋がったという店舗さんが70%にも上りました。

一方で私たちも課題に感じていたのが取り扱いブランドの少なさ。そこで2016年12月より6ブランドまで対象を拡大したほか、電子マネー決済にも対応した新端末の提供も開始しました(関連記事 : 「クレカと交通系電子マネーに初めて両対応」 - リクルートのモバイル決済「Airペイ」が狙う対面型200万店舗)。

なお、電子マネーは2016年度内に交通系ICの利用が可能になるほか、4月にはあの”大物”にも対応すべく開発を進めているそうだ。「Apple Payについても対応を目指しています。4月時点では交通系IC以外に、QUICPayとiDも決済できるようにしたい」(大宮氏)。

また、電力自由化がスタートしましたが、「自由化」というキーワードを知っていても実際に動いたユーザーはごくわずか。ただ、お店には電力会社を変えるメリットが大きいことから、丸紅との協業によるお店の電気支援サービス「おみせのでんき produced by Airレジ」の申込受付を開始しました。

――レストランボードについてお聞かせください

大宮氏 : レストランボードは2016年5月に提供を開始しましたが、以前より提供している予約管理のAirリザーブとは異なり、飲食店における業務支援に特化したサービスとして予約管理と顧客管理、リピーター販促や予約受付の促進を主眼においています。飲食店検索・予約サービスのホットペッパーから予約情報がすぐに反映されるだけでなく、過去の来店者についてもさまざまな属性登録・閲覧が可能です。もちろん、テーブルや席の配置はお店ごとに異なりますから、レイアウト管理もiPad上で簡単に行なえます(レイアウト変更機能はホットペッパーグルメの登録が必要)。

――飲食店を対象にした予約台帳アプリは競合も多い印象です

大宮氏 : 予約管理アプリで言えば強力なライバルも存在しますが、そうしたサービスでは「顧客管理」までトータルに把握できません。「予約台帳」だけでは、コースの予約で金額や人数といった表面上の記録はわかるかもしれませんが、何を食べたかというデータのコアがプラットフォームをまたいでわからなくなってしまう。一方でレストランボードはAirレジと連携していますから、価格とメニューの登録によってお客さまがどういう食事を頼んだのかがわかる。この情報を日々蓄積していけば、ダイレクトメッセージによる誘客が可能になるというわけです。

ただ、データが溜まったところで日々の業務で煩雑なシステム上の操作を店舗側で行うなど大変な作業になります。そこで発表したのが、月額1.8万円で「ネット広告配信」と「ホームページ作成」「メッセージ配信」が簡単に行える「業務サポートパック」です。

――ホームページ作成を必要とする飲食店は多いのでしょうか?

大宮氏 : 基本的にホットペッパーに掲載されている飲食店さんであっても、それとは別にWebサイトをお持ちのところがほとんどです。でも、サイトを作成したのが10年前というケース、数年間更新されていないケース、予約機能がないケース、スマホサイトが用意されていないケースが散見されます。