今、注目を集め続けるクラウド環境構築ソフトウェア「OpenStack」。その反面、仮想化基盤とクラウド基盤は何が違うのか、どのような場合に採用するのが最適なのかなどが、今ひとつ曖昧なままというIT担当者も多いのではないだろうか。

7月6日、7日の2日間にわたって開催された「Open Stack Days Tokyo 2016」では、レッドハットのテクニカルセールス本部シニアソリューションアーキテクト 内藤聡氏が、「OpenStackがなぜ必要なのか?素朴な疑問にお答えします。 OpenStackを使って社内で一旗揚げてやろう」と題して講演。日本国内におけるOpenStackの検討/導入事例に触れながら、多くの人々が抱える疑問やモヤモヤに対する回答を示した。

OpenStackは難しい?

レッドハット テクニカルセールス本部シニアソリューションアーキテクト 内藤聡氏

レッドハット テクニカルセールス本部シニアソリューションアーキテクト 内藤聡氏

セッション冒頭、内藤氏はOpenStackの狙いを「単なる仮想化管理ツールではなく、パブリッククラウドと同等の機能を実現するインフラそのものがOpenStackの目標です」と、端的に示した。

一般的にIaaSとは、ITインフラの利用者(クラウドユーザー)自身の手で、自在かつ即座に制御できるように作られたクラウド型のITインフラを指す。そのため、クラウドユーザーは他者の手を借りずとも、さまざまなかたちの自動化システムを作り込むことが可能だ。

では、仮想化基盤とクラウド基盤の違いはどこにあるのか? 内藤氏によれば、まず「誰のための技術なのか」という点が大きく異なるという。

「仮想化基盤というのはITインフラの管理者のための技術ですが、一方でクラウドは明確にクラウドユーザーのための技術です。もう1つ、仮想化の対象も違います。仮想化基盤が抽象化/制御対象とするのは、サーバ、ネットワーク、ストレージといったものであるのに対し、クラウドの場合はこれらに加えてクラウドユーザーが必要とするもの全てを仮想化の対象としています。だからこそ、ユーザーが必要とするサービスをすぐに利用できるのです」

つまり、クラウドユーザー自身の手によってあらゆる自動化が行える仕組みを実装したのがクラウド基盤であり、その目指す方向性も従来の「止まらないインフラ」からもう1歩ユーザー視点で踏み込んで、「止まらないサービス」へ変化しているというわけだ。

「クラウド基盤によって、クラウドユーザー自身が可用性までも作り込めるようになりました。そして、より高度なことをやろうとしたときに必要になるのが、OpenStackが提供するコンピューティング環境なのです」(内藤氏)

OpenStackのユーザーは、Webコンソール・APIを利用して、仮想ネットワーク、仮想マシンインスタンス、ブロックボリュームといったコンピュータリソースを活用することができる。各ユーザーは特定の「プロジェクト」に所属し、プロジェクト内のリソースを共有しながらプロジェクト全体でのリソース使用量の上限設定やリソース使用状況のレポーティングなどが可能となる。

「よくOpenStackは難しいと言われますが、クラウドユーザーに提供する環境は極めてシンプルであることを知ってほしい。そしてユーザー視点でのメリットは、マルチテナントによるインフラの共有、セルフサービスによる利便性など、さまざまなものが挙げられます」と、内藤氏は強調した。

>> それでは、OpenStackの登場で何が変わるのか?