マルケトは7月6日、マーケティング業界・技術の最新動向を紹介する自社イベント「THE MARKETING NATION SUMMIT 2016」を開催した。同イベントでは、豊富なセッションにより、昨今のマーケティング事情やマーケティングオートメーションツール「Marketo」の活用事例などが語られた。ここでは、ガリバーインターナショナル(以下、ガリバー)による事例講演「ガリバーが目指す『リアルの営業原場』と『デジタルマーケティングの融合』―自社の目的に合ったMAツール選定のポイントとは―」の模様をお届けする。
ガリバーのビジネスモデル
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ガリバーインターナショナル Gulliverマーケティングチーム チームリーダー 中澤伸也氏 |
ガリバーインターナショナルは車の買取・中古車販売を主要事業とする企業だ。国内に約500店舗を展開し、シェアは国内最大。現在はニュージーランドにも出店するなど、グローバル展開を加速させている。
登壇した中澤伸也氏は、同社のデジタルマーケティングチームでチームリーダーを務める。家電量販店のソフマップやGDO(ゴルフダイジェスト・オンライン)、エクスペリアンジャパンを経て2015年に入社した経歴を持つ。
講演では、事業側のマーケターとツールベンダー側双方の経験を持つ中澤氏から、ガリバーが目指す営業現場とデジタルマーケティングの融合、そして自社の目的に合ったMA(Marketing Automation)ツール選定のポイントが語られた。
まずはガリバーのビジネスモデルを押さえておこう。
同社は買い取った中古車を販売することで利益を得ているのだが、「買い取った中古車が店舗に3週間以上留まっているとキャッシュフロー的に苦しくなる」(中澤氏)のだという。
そこで、ガリバーでは必ず中古車を2週間で現金化する。そのために取り入れているのが、データベースを使った画像販売モデルだ。ガリバーでは中古車を買い取った瞬間、データベースに登録して商品化する。こうすることで、ガリバーの店舗を訪れた顧客は全国の在庫から商品を選ぶことができるのだ。他社では多くの場合、顧客は店頭にある在庫のみの中から選ぶことになるわけで、この違いは大きい。
こうしたビジネスモデルを持つガリバーは、自社に合ったMAツールをどのように選定したのだろうか。
MAツールの選択に必要な「5つのステップ」
中澤氏はMAツール選択のステップとして、次の5段階を挙げる。
1. MAが何を最適化できるものなのかを理解する
2. 自社のマーケティング構造と課題を理解する
3. 最適化が本当に機能するのかを確認する
4. 自社が理想とするシナリオを書き、それに適合するツールかを確認する
5. 自社の戦略方向性とツールの方向性が合致するかを確認する
氏によれば、MAが最適化するのは「タイミング」「コンテンツ」「媒体」の3要素とのことで、これらはガリバーが抱えている課題とも一致していたという。
では、その課題を1つずつ見ていこう。
国内の中古車市場は新車市場よりも小さく、さらに一般的な自動車の購入サイクルは約8年とかなり長い。そして、顧客が自動車の購入を検討し始めてから、実際に購入するまでの期間はおよそ3カ月と言われている。つまり、中古車販売業者は8年のうち3カ月間しか顧客に接することができないわけだ。
したがって、顧客が今購買プロセスのどのステージにいるのかを常に把握し、適切なタイミングで接触を図る必要がある。
また、「接触」のためのツールがコンテンツであり、これを顧客のステージに合わせて最適化することも重要なポイントとなる。もちろん、コンテンツを届ける手段(媒体)も最適化しなくてはならない。メールが良いのか、SMSが良いのか、それとも電話が良いのかはタイミングとコンテンツの内容によって異なるだろう。
次に考えるべきは、そうして検討した最適化が本当に機能するかどうかだ。
中澤氏はまず、自動車の購入を検討し始めた顧客が「来店してから購入に至るまでの期間」を「1カ月」と仮定し、その期間を「最も顧客の購入モチベーションが高い時期」と考えた。そして、「店舗から顧客が去った後でも、新しい提案をし続ければ再訪してくれるのではないか」という仮説を立て、店舗商談後の後追いメルマガの発行を手動で実施したのである。
その結果、通常であれば16~18%と言われるメルマガ開封率が56%まで上がるなど、明らかな効果が見て取れたという。これはまさに「タイミング」を最適化した成果である。
この検証をきっかけに、中澤氏はMAツールの導入を決めた。