紙の新聞からWebやニュースアプリの時代になって新聞を読まなくなった若い層は、エンターテインメントや娯楽に関する情報には強くても、ビジネス・経済に関しては常識的なことも追えていないと新聞世代に怒られる。でも、本当に若い層はビジネス・経済に対する興味、そうした知識や情報を得ようという意欲が薄いのだろうか?
ミレニアルズをターゲットにした「Morning Brew」というビジネス・経済関連のニュースメールが好調だ。1年前の20万人から、この春に100万人を突破。それからも増加を続けている。キャッチコピーは「わずか5分でスマートになれる」だ。
平日に毎日届くニュースレターの成功は、株式や先物市場の動き、ビジネス・経済のニュースが5本、広告、小さなニュースのリスト (5本)、ネットの話題の紹介とクイズなどとなっている。
ミレニアルズが興味を持つようなニュースや話題を意識してはいるものの、基本的に取り上げているのは、その日に知っておくべき一般的なニュースや話題である。だから、ミレニアルズ以外の人達が読んでも同じようにためになる。でも、購読者の平均は28歳。約20%は学生だ。
特徴は、小難しい経済紙調の書き方を避け、柔らかい表現で分かりやすく、ミレニアルズに伝わるジョークも交えながらコンパクトに紹介していること。ニュースで100~150単語ぐらい、リストは20~25単語ぐらいなので、リンク先にアクセスせずにザッと目を通すだけなら5分で読み終わる。簡単にニュースを消費できるようになっており、開封率が47%と高い。
共同設立者のAlex Lieberman氏らがMorning Brewを始めたきっかけは大学時代だった。Lieberman氏はいち早くMorgan Stanleyに就職を決め、あとは数単位を残すだけの状態で自由な時間があったので友達の就職活動を手伝っていた。
面接の練習で面接官役をやっていた同氏は、いつも「ビジネス情報をどのようにアップデートしていますか?」という質問をしていた。すると、「必要だから、Wall Street JournalやFinancial Timesを読んでいます」という答えがほとんどの学生から返ってきたが、経済紙に書かれている基本的な知識が身についていないケースが少なくない。深堀りしてみると、ビジネスや経済には興味があっても、Wall Street JournalやFinancial Timesは堅くてビジネスの面白みが掴めず、ただ目を通しているだけで身につくように読んでいない学生が多数だった。
そこでビジネスに興味を持つミレニアルズが飽きずに効率よくビジネスニュースや情報を得られる日刊のメールニュースを開始。ウォートン・スクールやノースカロライナ大学といった大学から少しずつ購読者を拡大してきた。
この1年の急増はMorning Brewが広く知られるようになって増加に加速がついたこともあるが、昨年末の株価下落の影響が大きい。Deloitteの分析によると、10年前のリーマンショックの影響を色濃く受けたミレニアルズは、金融機関に不信感を持つ割合が大きい。Facebookの市場調査によると、ミレニアルズが投資銀行に対して抱くイメージは自動車セールスに近く、金融アドバイザーの利用に慎重な傾向が強い。そんなミレニアルズは景気減速の兆候に敏感で、そうした時に特にビジネス経済への関心が高まる。
ミレニアルズは消費に慎重だが、20代から30代へと広がってきたミレニアルズは大きな可処分所得を持っている。Morning Brewの購読者だった学生が社会人になり、ミレニアルズのネットワークの間で購読者が増え、今やテクノロジー、金融、不動産、小売りなど幅広い分野で、年収95,000ドルを超えるビジネスマンが購読者の大きなグループになっている。だから、効率性を求めるミレニアルズにビジネス・経済のニュース・情報を届ける術を用意したMorning Brewは広告も好調だ。CitigroupやMicrosoftなどミレニアルズの理解を得たい大手企業からQuipやCasperなど話題のスタートアップまで、ユニークな広告が毎日掲載されており、広告も読み物として面白いものになっている。