Apple Watch、Basis Peak、Fitbit Charge HR、Microsoft Band、Moto 360、Moov、Withings Activité Popなど、前回は過去1年半の間に使用してきた7つのバンド型ウェアラブルデバイスを紹介した。

今日のバンド型ウェアラブルは2つに大別できる。1つはアクティビティ・トラッカーやフィットネス・トラッカーのような特定の目的に特化されたデバイス。用途が絞り込まれているから小型・軽量で装着しやすい。もう1つは多機能なスマートウォッチだ。大きなデバイスになりがちで、さまざまな目的を満足させられるものの、1つの目的において深く満足させられるとは限らない。ただ、人々はより多くの機能をウェアラブルに求める傾向が強く、それがスマートウォッチの話題の盛り上がりにつながったのだと思う。

スマートウォッチはいろいろなことができる1本で十分という人も多いと思う。筆者の場合、機能によって不満を覚え、特定の目的を満たす製品を目的に応じてあれこれ組み合わせて使っている。

例えば、Apple Watchの「アクティビティ」だ。Apple Watchで記録した歩数、エクササイズ、消費カロリー、スタンドなどの目標達成度を、Apple WatchやiPhoneで簡単に確認できる。デザインに優れたアプリで、Apple Watchを使い続ける理由にアクティビティを挙げるユーザーも多い。だが、筆者にとってアクティビティは"使えないアプリ"なのだ。

カジュアルに「毎日5000歩は歩きたい」という程度の目標だったらアクティビティで十分だが、もっと高い目標を設定して本気でその達成を目指すなら、まる1日の本当のデータが欲しい。それなら、常に記録するデバイスを身に着けておく必要があり、ほぼ毎日充電が必要で装着感のあるApple Watchだと不可能と言わないまでも一苦労である。

やはり、常に身に着けていられるデバイスは小型・軽量、具体的にはコイン型のMOOV NowやMisfit FLASHぐらいのサイズと軽さで、かつバッテリーが少なくても数日(できるなら数週間から数カ月)はもってくれるデバイスである。

ムーブ、エクササイズ、スタンドの目標達成度を一目で確認できる「アクティビティ」

それならスマートウォッチを使用していないかというと、筆者はApple Watchユーザーで、今でもバッテリー切れにすることなく、ほぼ毎日使用している。ただ、Apple Watchを使うメリットがある場面のみ使っている。かたよったユーザーである。使っている機能は「通知」と「時計」だ。

例えば、自宅ではスマートフォンを机の上に置きっぱなしにしているから、テレビを見ている時や料理している時など、机を離れる時にApple Watchを巻いて通知をチェックしていることが多い。外出時は取材などでスマートフォンを取り出しにくい時はApple Watchを付けて出掛けるが、普段はiPhoneだけである。ジョギングに「iPhone+Apple Watch」は重装備すぎるので、iPhoneしか持っていかない。本気で走る時はiPhoneとMOOVである。Apple Watchの時計は周りに迷惑をかけずに起きられるアラーム機能やタイマー機能が便利で、Apple Watchをはめて寝ることが多い。

この使い方だと、いろんなデバイスを使ってバラバラに歩数や移動距離を計測することになるが、基本的にHealthKit対応製品のみを使っているので、iOSの「ヘルスケア」アプリに集まるデータをグラフ化するアプリを使って毎日の歩数や移動距離、消費カロリーなどを確認している。アクティビティほど見やすくないのは残念だが、目的に応じて好きなデバイスを選べる自由さを気に入っている。小型・軽量デバイスを24時間・365日装着してはいないものの、ヘルス関連のデータを収集できるデバイスを常に何かしら身に着けているので、ほぼ同じ状態になっている。

iOSのヘルスケアのデータを分析しやすくまとめる「FitPort」

Appleがヘルスデータにこだわる理由

アクティビティの設計から想像すると、AppleはApple Watchをユーザーが毎日身に着けるAppleデバイスにしたいのだと思う。そうしたい理由も理解できる。

先月、マサチューセッツ州の高校生がフットボールの練習中に胸痛を感じ、Apple Watchで心拍の異常に気づいてすぐに救急医療を受けたことで一命を取り留めたことが話題になった。先週末には9to5MacのエディターであるJeremy Horwitz氏の「Apple Watch should double down on health sensors, battery life + waterproofing」というコラムが話題になった。Horwitz氏の奥さんが子供を学校に送り出した後、突然、呼吸困難に陥った。医師がブルガダ症候群を疑った際、Apple Watchで記録していた心拍数のデータが役立ち、適切な救急措置によって大事にならずに済んだ。

こうしたストーリーに触れると、ムリしてでもApple Watchの装着を続けてみる価値があるように思えてくるが、実際にやってみても筆者の場合は続かない。ヘルス関連のデータを常に記録する価値はわかるものの、それを普及させるにはハードウェアもソフトウェアも進化し、心拍数以外にももっとさまざまなデータを収集できるようになる必要があると思う。

ただ、Appleの目標がはっきりしているから、遠くない将来にApple Watchは通知機能が便利というだけではなく、ヘルス関連のデータ収集に優れたデバイスになると期待できる。でも、理想を言えば、それはApple Watchの進化で実現するのではなく、ウェアラブル全体の進化として実現してほしいと思う。主役はデバイスではなく人である。1日1万歩歩かないといけないのはデバイスではなく人なのだ。

Apple Watchが記録した歩数とFitbitが記録した歩数を、ユーザーがサードパーティのツールを使ってまとめないと使えるデータにならない現状は明らかに不便である。特定のプラットフォームやデバイスに縛られることなく、Apple Watchでも、iPhoneでも、Fitbitでも、Android端末でも、ヘルス関連のデータを収集できる何かを身に着けていたら、その人のデータが着実に記録されていくような未来が実現してほしいと思う。