本連載では、今まさに日本市場進出を目指しているスタートアップ企業たちを紹介している。今回は、製造業に特化したAIプラットフォームを提供するProfet AIだ。

モデル抽出まで1~2時間程度の手軽さが強み

Profet AI社は2018年に設立された、製造業向けAIプラットフォーム「Profet AI AutoML」を提供する企業だ。Profet AI は台湾企業のみならず、複数の日本企業の台湾現地工場でも導入されているほか、2022年には日本市場向けの販売も開始された。競合ひしめくAIプラットフォームの分野に打って出たProfet AIだが、その強みはどこにあるのだろうか。

Business Development Director のマーク・ウー(Marc Wu)氏は、1つ目の強みとして予測モデルを作成するハードルの低さを挙げる。Profet AIは、データをアップロードすると、プラットフォームにあらかじめセットされているアルゴリズムを用い、自動的に解析してモデルを作成する。結果は複数提示され、その中で最も良いモデルを抽出することが可能だ。モデル抽出までの時間はおおよそ1~2時間程度である。この手軽さは、Profet AIが製造業向けに特化していることで実現されていると同氏は話す。

  • Profet AI Business Development Director ののマーク・ウー氏

「ユーザー側にソフトウエアの知識や、データ分析のノウハウは一切いりません。導入企業の約8割は、特別なチューニングなしですぐにProfet AIを使えます」(ウー氏)

生産ラインにおける余剰予測や品質予測、原材料の価格予測、顧客の需要予測などで活用されているほか、社員の離職率予測に用いている例もあるそうだ。

また、2つ目の強みとしてウー氏が挙げたのが、オンプレミスであることだ。同氏によると、製造業の多くは、独自の研究データや顧客データを外部に出したくないという意識が強い 。そのため、社内のみでデータを扱え、データ流出の危険性が少ないオンプレミスが重宝されるという。

3つ目の強みは、価格面での優位性である。Profet AIの費用はユーザーライセンス数によるサブスクリプション制になっており、1つのアカウントを複数人で使用することもできる。1アカウントが日本円で約270万円程度。この価格設定は「台湾でジュニアデータサイエンティストを1人雇う程度の費用よりも安くしている」(ウー氏)のだという。

目標は「2024年に日本市場で売上1億円」

日本市場進出を決めた理由について、ウー氏は「日本はアジアで最も製造業の品質が高い。そこにAIの力をプラスすることで、さらに品質を高めることができるのではと考えた」と語る。2022年に日本市場向けの販売を開始する際、日本語設定を加えたほか、トレーニング用の資料なども全て日本語版を用意した。体制は万全だ。

今後の目標は、2024年に日本支社を設立し、同年内に売上1億円を達成することだ。大手企業3社、中小企業10数社に導入が決まれば達成が見込めるという。

一方で、懸念しているのは、日本企業は導入の検討に時間がかかるのではないかという点だ。ウー氏は「他の国の企業はAIを積極的に活用し、どんどんと品質改善をしていっている。日本企業はゆっくりしていては危ないという危機感を持つべきだ」とした上で「もっとオープンなマインドで、外資系企業が持つ最新のテクノロジーを使ってほしい」と、自身の思いを語った。