新型コロナウイルスの影響で既存のビジネスモデルに変革が必要になったり、新しい事業を立ち上げる必要性が出てきたり、世の中の混乱を解決するために起業するといった人たちは一定層いらっしゃるのではないでしょうか?
今回、当社の新規事業を例として、新規事業アイディアのブラッシュアップ、ユーザーインタビューやプロダクト開発、そしてプロダクトマーケットフィット(PMF)達成のプロセスをご紹介します。新規事業を立ち上げようとしている方々に対して、当社の事例から皆さんにヒントになることをお伝えしていきます。
私が経営しているスタートアップ「株式会社atta」の簡単なご紹介をします。当社は2018年3月に創業し、旅行検索サービスを日本および東南アジアマーケットにて展開をしていたスタートアップです。昨年の新型コロナウイルスの影響で皆さんがコロナ禍、前のような旅行をすることが難しくなったこと、そして再び、皆さんが自由に好きなときに旅行にいけるようになるタイミングがいつなのか当社ではコントロールができないこと、自社で努力をしてもマーケットが早く戻るわけではない状況のため、旅行検索サービスは開発リソースを抑えてプロダクトを継続的に改善していくが、もう一つの軸になる事業を作ることを昨年の緊急事態宣言下で意思決定をしました。その事業案として、お客様がスマホで注文し、30分で商品をお手元にお届けするバーチャルコンビニ事業「SmartMart」を新規事業として2021年3月にリリースしました。現在、そのプロダクトの早期PMF達成のため、日々、PDCAサイクルを回しています。
新規事業を立案するときに役立つフレームワーク
新規事業のアイディアを出す上で、さまざまな方法があると思いますが、私が使った考え方やフレームワークをご紹介します。
イノベーション発想マップ
イノベーション発想マップとは既存ビジネス、またはベンチマークビジネスをテクノロジー軸、ビジネスモデル軸、ポジション軸、オペレーション軸で分析します。そして、それらのポイントをさらに進化、もしくは180度逆の発想をすることで、新たなビジネスアイディアが出すフレームワークです。私なりにさまざまなフレームワークを組み合わせて、下記のようなフレームワークを作りました。
事例をもとに解説していきます。当社は私も含めて、リテールビジネスの経験があるメンバーが多く、既存のコンビニビジネスをベンチマークとし、上記に記載した軸で分析し、一部を進化、一部を逆転の発想しながら、新しい事業を考案しました。
このマップをつくる上で大事なのは、できないことを考えないことです。既存サービスの進化や真逆の視点で物事を考えることで、アイディアがでます。そして、既存サービスをさらに進化するポイントが思いつかないというご質問を良く頂きますが、どんな些細な進化でも良いです。自分がイチ顧客としてそのサービスを受けた際に少し不便なことがあると思います。それを進化ポイントとして検討すると良いです。
リーンキャンバス(Lean Canvas)
イノベーション発想マップででてきた新規事業案を非常に有名なリーンキャンバスに沿って、ビジネスモデルをさらに磨いていきます。
リーンキャンバス(Lean Canvas)とは、「Running LEAN ? 実践リーンスタートアップ」の著者として知られるアッシュ・マウリャ氏が提唱するビジネスモデルを9つの要素に分けて考えるフレームワークです。
このリーンキャンバスの書き方はすでにさまざまな書籍やWeb上で紹介されているので、ここでは概要をお知らせします。
リーンキャンバスは一言でいうと、ビジネスモデルを一つの図で表現できるフレームワークです。左側が課題、右側に顧客を整理し、中心部に最も大事なセクションである独自の価値提案があります。ここはビジネスのコアであり、課題解決、そしてお客様が求めている価値を明確にします。そして、その左にあるソリューションや主要指標で課題解決の方法の見える化と検証時に必要なKPI設定、右にある圧倒的な優位性とチャンネルで他サービスとの差別化ポイント、お客様との接点ポイントを記入します。図の下部には費用、そしてマネタイズ方法を明記します。
このフレームワークは非常に強力です。数十枚のビジネスプランを何カ月もかけて準備するよりも、このリーンキャンバスを何度も何度も繰り返し、書き直して完成させた1枚のキャンバスの方が説得力があります。重要なのは一度このキャンバスを完成させて終了ではなく、改善を何度も繰り返してビジネスモデルを進化させながら、お客様の課題を解決し、わかりやすくて非常に強力な価値をご提供することを考え続けることです。
Job-to-be-done(JTBD)
次に紹介するのが、ジョブ理論やjob-to-be-done、略してJTBDと呼ばれているフレームワークです。ジョブ理論もさまざまな書籍やWebでご紹介されているので、概要のみのご紹介とします。これを活用することで、リーンキャンバスよりもさらにユーザーに集中し、彼らのニーズを視覚化することができます。お客様はサービスを利用するときに何か成し遂げたい目的があるという考えのもと、ニーズを掘り下げていきます。
このjob-to-be-doneフレームワークはさまざまなかたちのものが展開されていますが、私はMinder Chenさんが展開している図が非常に使いやすいと考えています。お客様が実際に当社サービスをご利用されるさまざまなシーンを一つ一つイメージをして記入し、ご利用シーンの明確なイメージを持つこと、そして、なぜそのようなお客様がご利用して頂けるのか、目的の明確化、そしてそのニーズをさらにイメージできる状態にすることができます。
特にこのフレームワークはユーザーに集中して、どんな目的でご利用して頂けるかを明確にできるため、実際に検証を進めていくところまで至った際に、PDCA検証が非常にしやすく、かつモニタリングもしやすいです。検証結果で何が原因で目標値まで達しなかったのかがわかりやすいため、次の検証を立てやすくなります。
今回ご紹介した3つのフレームワーク以外にも非常に多くのものがあるかと思います。私はイノベーション発想マップで大きなビジネスビジョンをイメージし、リーンキャンバスでビジネスモデルをブラッシュアップ、そして、Job-to-be-doneでお客様のご利用シーンとその目的を明確にすることで、新規事業案を磨いています。
そして繰り返しになりますが、この新規事業アイディアを考えるステップは一度行えば終わりというわけではありません。何度も繰り返していくことでさらに良いアイディアに洗礼されていき、実際に事業を展開した際には成功確率が上がると思います。
次回は、磨いた新規事業アイディアをユーザーインタビューし、確かにニーズがあることを確認。そして、最小限の機能をもったMVP開発をして、テストしていくことをご紹介をします。