リユースサーバを紹介する本連載の3回では、実際にリユースサーバを利用されているユーザー事例を紹介しよう。

今回は、リユースサーバを活用してSI事業の強化に成功しているマスターピースの事例を取り上げ、取引開始に至るまでの経緯や導入後の感想、今後の計画などについて、マスターピースSI事業部事業部長の高橋秀彰氏と、データライブ代表取締役社長 山田和人氏に対談していただいた。

ゲームとSI事業が大きな柱

マスターピースと聞くと、往年の名作ゲーム「ザ・コンビニ」シリーズを思い浮かべる読者も多いだろう。「現在はPlayStationシリーズやXbox360などのコンシューマ機、PCのほか、DeNA様の『モバゲー』でも展開しています」と高橋氏が語るように、今でも根強い人気がある。

マスターピース

マスターピースは、システムコンサルティングから開発業務、サーバ管理・運用・保守まで、ネットワーク運用に関するあらゆるサービスを高いクオリティで提供し、ユーザーからの信頼を得ていると同時に、新世代CGMサービス『XIMA(シマ)』や携帯電話用ゲーム『ザ・コンビニネットバトル』など、様々なプラットフォームに向けた自社ブランドによるコンテンツを開発・提供している。
http://www.masterpiece.co.jp/

ゲーム事業は同社の柱ではあるが、マスターピースにはもう1つの柱としてSI事業がある。「インターネットに特化したWebシステム開発からネットワーク構築、運用・保守に至るまで、システムのライフサイクルをトータルにサポートしています」と高橋氏は語る。

これには、ユーザー企業が契約したデータセンターに出向いて運用・保守を請け負うパターンと、マスターピースが契約したデータセンターにハードウェアを用意して、サービスとして提供するパターンがあるという。同社では、サーバ資産として150-200台ほどを保有している。

リユースサーバとの出会い


-リユースサーバを知る以前は、サーバをどのように調達されていたのでしょうか?

マスターピース
SI事業部 事業部長
高橋秀彰氏

高橋: ハウジングやホスティング事業では、お客様から短納期・低予算の要望をよく受けます。当社ではハードウェアを安く仕入れるため、秋葉原などの販売店で調達していましたが、迅速性や我々の要望に柔軟に対応してもらうといった点では難しい面がありました。

-初めてリユースサーバを導入された時は、かなり切迫した状況だったようですね?

高橋: お客様の希望でその日中にどうしても入手しなければならない機器があり、秋葉原の販売店を夜遅くまで探し歩きましたが、結局、見つけられませんでした。仕方なくインターネットで探したところ、たまたまデータライブさんのWebを発見して問い合わせたところ、在庫があるということですぐに入手できたのです。それからは、継続して取引をしています。迅速で丁寧な対応が得られ、企業としてきちんとした取引ができるので、とても満足しています。

山田: 当社もSI事業から出発したので、ユーザーの要望との板挟みになる状況はよく理解できるのです。我々はそのギャップを埋めるお手伝いをしたいと考えています。マスターピース様から初めてご相談いただいた時は在庫もあり、その日のうちに出荷できました。

保証制度はユーザーにとって大きなメリット


-信頼性の面で不安はありませんでしたか?

高橋: 一般の中古サーバでは、信頼性の問題が払拭できません。当社でも以前、安い中古サーバを購入して失敗した経験があります。ただ、それはジャンク品に近いものでしたので、データライブさんのように、動作検証を行った上で、初期保証もあるというのは非常に安心できます。実際、新品のサーバと変わらない故障率です。

-なるほど、故障は想像以上に少ないのですね。それでも、保証制度の有無は導入の判断に影響するのでしょうか?

高橋: 保証は、導入を決定する大きな理由になると思います。保証が無ければ、お客様に安心してお勧めできませんね。

データライブ
代表取締役社長
山田和人氏

山田: 当社のリユースサーバは当初、エンドユーザーの情報システム部門を主な対象に宣伝していましたが、実際の購入先はSIerの方が中心でした。最近『システム延命』がキーワードとして大きな意味を持ちつつあり、リユースサーバが本番環境に使われ始めているとの感覚を持っています。搬送中の故障を含む初期不良への対応は、SIerの方を意識して始めた制度なのです。

-現状リユース品の利用はサーバが中心とのことですが、他の機器についてはいかがですか?

高橋: 今後はネットワーク機器の導入を検討していきたいと考えています。サーバと違い、ネットワーク機器は技術の進化スピードはそう速くなく、1-2年前の製品なら新品とそれほど変わらないからです。

-ユーザーから、サーバに対する細かな要求もあるのですか?

高橋: リユースサーバを発注する際は、CPU/メモリ容量/HDD容量/RAID構成を伝えて、実際の機器選定はデータライブさんにお任せしています。最近はこれらの規格はどのサーバメーカーでも共通で、当社ではサーバメーカーにこだわりは持っていません。ユーザーの方もサーバのメーカーをあまり意識されませんね。当社では複数のサーバメーカーが混在しても、ほとんど問題ありません。

山田: メーカーや機種を指定されないのは、当社のお客様の中では珍しいですね。マスターピース様がサーバを熟知しておられ、『システム勘』をお持ちだからでしょう。他のお客様ではメーカーや機種を指定されるケースが多く、そのため調達に時間をいただくこともあります。メーカーや機種を指定されるのは品質の違いによるものではなく、単に導入するエンジニアが慣れているというのが理由でしょう。

-保有するサーバが故障した場合、どのように対応されていますか?

高橋: 故障事例の8割くらいがHDDでしょうか。次いでメモリの故障で、CPUが故障することはまずありません。これはサーバの設計によるものでしょうね。2-3年前の製品でも、すでに24時間365日の稼働を前提に設計されていますので。

パーツ故障の場合は、代替品をデータライブさんにお願いして調達してもらっています。ときには、自社で秋葉原のパーツショップなどを探すこともありますが。パーツ交換などは、自動車でいうスペアタイヤの発想ですね。

メインボードなど交換が困難な部品が故障した場合は、サーバごと交換します。そのため、予備サーバを常に保有するようにしています。

山田: レンタルサーバ事業者では、すぐにサーバを交換できるようコールドスタンバイ機を用意するのが一般的です。マスターピース様はそういう意味でも、レンタルサーバ事業者に近い考え方をお持ちだと感じています。

コスト削減で競争力強化


-リユースサーバでコストをどれくらい圧縮できましたか?

高橋: データライブさんのリユースサーバをこれまで数10台導入したのですが、コストを1/3-1/10に圧縮できています。実際に使用してみてもまったく問題はなく、これなら今後もお客様に提案できると考えています。コストや納期のメリットが大きいので、お客様から『リユース品で』との要望も増えています。

山田: 業務用システムでもレンタルサーバと同じように、旧式のサーバでも性能的に十分実用になります。サーバや業務用システムに求められる要件が、それほど上がっていないためです。

高橋: 弊社のお客様の場合、Webシステムを構築されるケースが多いのですが、ハードウェア/ソフトウェアとも最小限の投資から始め、事業が軌道に乗ったところで資本を投入していくと考える方が多いので、コストメリットが大きなリユースサーバは最適なのです。

-それだけのメリットがあるなら、もっと多くの企業が導入しても不思議ではないように思えますが・・・

高橋: リユースサーバを導入している同業他社は、それほど多くないのではというのが実感ですが、これは認知度が低いためで、今後は大きく伸びる余地があると見ています。

-リユースサーバを選択するメリットは大きそうですね。

高橋: 最近、ホスティング事業者は乱立の状況にありますが、特色を持っていれば生き残れると考えています。当社ではシステムを24時間365日、有人監視して、ハードウェアやOSの故障には迅速に対応しています。レンタルサーバでも冗長化を実施していますが、冗長化の部分は新品である必要はなく、先程も述べたように、中古サーバでも故障率は極めて低いのが現状です。システムを提案する際、リユース品の利用で価格を下げることができるため、コンペなどでも有利な条件を提示することができるのです。また、コンシューマ向けゲームの開発などにも利用しており、コストダウンが図れています。

-現在、リユースサーバに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?

高橋: 『どうして同業他社が利用しないんだろう』というのが正直な実感です。リユースサーバが要件を満たせるなら、今後もどんどん普及していくと見ています。

-すると、今後も大きく伸びていく可能性があると・・・

高橋: リユースサーバを含む中古市場の伸びが急速かゆっくりかはともかく、今後間違いなく伸びていくでしょう。サービスの良さやレパートリーの広さが認識されれば、現在の中古PCのように中古サーバが広がっていくのではないでしょうか。

山田: 私は市場が成熟していくと、新品と中古との棲み分けが重要になると考えています。大企業の本番システムは新品を導入し続けるでしょうが、中堅以下の企業では新規事業を中心に部分的にリユース品の導入が進んでいくと思っています。

-さらに市場が伸びるためにはどのようなことが重要だと思いますか?

山田: 今後は、サーバメーカーの協力姿勢もカギになるでしょう。例えば、現在は導入の呼び水としてエントリークラスの低価格サーバを各社が販売していますが、それほど利益が出ないクラスかもしれません。中古サーバ市場で低故障率の評判が広まれば、それがメーカーのブランドアップにもなりますから、メーカー側が認識して協力してくれるようになれば、信頼性がさらに向上していくと思います。