米プリンストン大学による概念辞書「WordNet」では、「emboss(エンボス)」を『レリーフ(浮き彫り)の隆起している部分』と定義しています。それはまた、面上に隆起している凸形状でもある、ボスそのものの定義でもあります。樹脂製のパーツにおいて、ボスは複数のパーツを組み合わせる際のネジ穴やピンをはめる穴、別パーツと嵌合させる際の位置合わせのためなど、アセンブリを補助する目的で使われることが多いです。

このような機能を考慮し、ボスは充分な強度を備えている必要があります。そこから形状の最小サイズも決まってきます。また、ボスは隆起しているため、樹脂の厚さを増すことにつながり、パーツの冷却に伴って発生するヒケやボイドの原因になる可能性があります。つまり、ボスを設計する際の課題は、その機能を果たすだけの十分な大きさを持たせながらも、ヒケが起きるほど大きくしないということです。

図1:樹脂パーツ上のさまざまなボス

典型的なボスは上部が開いた円筒形であり、見方を変えれば「丸い形のリブ」とも言えます(図1 a)。標準的なガイドラインでは、ボスの肉厚はそのボスが立っている面の肉厚の約半分が適切とされています。設計の条件によっては、このガイドラインよりも強度が求められる場合があるかと思います。そのような場合には、それ以上に厚肉にしないで強度を増す方法を考えたほうが良いことになります。最も一般的な対処方法は、ボスの周りにガセットを立てることです(図1b)。

ボスがたち壁の一部である場合でも、厚肉の部分ができないようにする必要があります。図1cは、そのような場合の対処例の一つです。同様に、ボスがたち壁の近くにある場合、ボスと壁の間を埋めてしまいたくなるかもしれません。しかし、それでは厚肉の領域ができてしまいます(図1d)。よりふさわしい方法は、一つ以上のリブでボスと壁をつなぐことです(図1e)。

プロトラブズでは、比較的高さのあるボスを形成する場合は、内径を鉄のコアピンで製作します。ボスの高さが大きくなると、それにともなってボスの内径の深さも長くなるため、鉄のコアピンに分割し、金型の強度を保つ必要があります。また、コアピンに分割することによって金型上深い形状となるボス形状も加工がしやすくなるのです。

ボスの設計には、考慮するポイントがもう二点あります。前述したように、ボスとは丸いリブです。つまり、その他のさまざまなリブと同様、スムーズにパーツを離型できるよう、内側と外側の両面に抜き勾配があった方が望ましいです。ボスの高さによりますが、抜き勾配の角度は、少なくとも0.5度以上必要になります。

また成形時のことですが、ボスの先端部分は金型上、袋小路の形状となるため、ボスの縁にベントピン、あるいは内径をコアピンに分割することによって、樹脂が充填する際のガスを逃し、ショートやヤケが発生しないよう対処していることを認識しておくと良いでしょう。

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Youtubeのプロトラブズチャンネルでは、ボスの設計について動画で解説しています。合わせてご覧ください。動画はこちら

ご参考:

プロトラブズ樹脂部品設計ガイド
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本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。