実践編連載開始にあたって…

このコラムは、2008年11月~2009年6月に渡って、連載させていただいていた「"PM力"向上に効く、12のレッスン」(執筆: 鷺島淳一、監修: 篠昌孝)の続編である。

先の連載では、PM力向上のためのレッスン理論編という形で、PMBOK準拠の弊社方法論(PMM ※1)をベースに、読者諸兄にプロジェクト管理を実践するための基礎力をつけていただくことを主な目的として12のレッスンを提供してきた。

※1 Hitachi Consulting Project Management Methodology

図1で、プロジェクトマネジメントに関する構成要素を図解しているが、特に「プロジェクト」、「プロジェクト管理プロセス」、「プロジェクトマネジャー」といった個人的な視点からなる構成要素については、上記の方法論における9つの管理領域(PMBOKでいう知識体系)毎に整理する形でわかりやすく解説してきたつもりである。

図1: プロジェクトマネジメントに関する構成要素

また、「IT」、「PMO※2」、「HCM※3」といった組織的な視点からなる構成要素についても、基本的な考え方について解説させていただいている。

※2 Program/Project Management Office
※3 Human Capital Management

前編を読まれていない方は、並行して、そちらにも目を通していただけると、今回の連載をより深く理解できるようになると思われるので、併せてお読みいただきたい。

さて、前置きはこれくらいにして、いよいよ今回からはじまる実践編の概要と方針について、お話しよう。

「6つのケーススタディ」の予定と方針

今回の連載は、私ども日立コンサルティングにおいて、Delivery Support Officeという全社横断的なPM専門組織に所属し、BSI※4を中心とした当社の各種プロジェクトのプロジェクト管理支援を実施しているメンバーが、現場での実践体験を6つのケーススタディという形で紹介していくものである。Delivery Support Officeの活動内容については、図2で簡単にご説明する。

※4 Business Consulting & Systems Integration

図2: プロジェクト品質&プロセス改善活動

今回、執筆に当たるメンバーは、私を除くと6名で、PMとして、日々、様々なプロジェクトのプロジェクト管理業務を実際に遂行している者たちであり、きっと、読者諸兄にとって有用なノウハウを、ケーススタディとして提供できると考えている。各ケーススタディは、前・後編の2回程度で解説していくつもりだが、読み物としても、楽しんで読んでいただけるような内容にしたいと考えている。

では、本連載で取り上げる6つのケーススタディを簡単に紹介していこう。

先ずは、ケーススタディ1だが、複数のプロジェクトを束ねるPMOとしてのミッションコントロールの話である。PMOの形態としては、図3のユーザー企業におけるPMOの形態を想像いただければよいだろう。ミッションコントロールとは、「プログラムの目的や意義を各プロジェクトに浸透させて個別最適視点で判断を行わないように注意を促し、さらには、各種KPIを収集~展開してプログラムの成功度合いを周知する」といったところになる。ケーススタディ1では、その実践手法について解説してもらうつもりである。

図3: ユーザー企業におけるプロジェクトの位置づけ

ケーススタディ2は、「コミュニケーション管理」の実践事例である。プロジェクトをダメにする下手なコミュニケーションの例をあげ、コミュニケーションを円滑化し、効果的なコミュニケーションを行うための実践ノウハウを解説してもらう。

ケーススタディ3は、チームマネジメントの話である。プロジェクトの成功には、プロジェクトメンバーのモチベーション維持・向上が不可欠。そこで、メンバーの力を引き出す効果的なチームマネジメントの方法や、プロジェクト活動を通じてメンバーを成長させる支援策について解説してもらう。

ケーススタディ4は、プロジェクトにおける品質維持管理の話である。品質管理と一口で言っても、具体的に実践に移すのとなると難しいのはご存知のとおり。読者諸兄においても興味深いテーマだろう。品質リスクを回避するノウハウには、どんなものがあるのか、詳しく解説してもらう。

ケーススタディ5は、大規模なプロジェクトであればあるほど、PMが頭を悩ます予算・実績管理の話である。予算超過やスケジュール遅延を早期に発見する方法を、EVM※5という管理手法の実践事例を基に解説してもらう。工事進行基準が、収益認識基準として本年4月から適用されていることから、読者諸兄にとって有用であり、旬なテーマといえるだろう。

※5 Earned Value Management

ケーススタディ6は、PMBOKでいう統合管理の話である。プロジェクト成功の秘訣は、綿密な準備計画にあるとよくいわれる。では、それを怠ってしまったら、どうなるのか? 失敗(に向かっている)プロジェクトを途中から立て直すには、どうすれば良いのか? 実践ノウハウを解説してもらう。

以上、6つのケーススタディを次回より順次ご紹介し、最終回では、私の方で、この6つのケーススタディを踏まえた「失敗しないプロジェクトマネジメントのポイント」を総括していく。

日頃、PMとして、プロジェクト管理業務に取り組まれている方々、更には、PMを目指して成長していきたいと考えている方々にとっても、きっと、有益な内容になると信じている。ご期待いただきたい。

執筆者紹介

篠昌孝(SHINO Masataka) - 日立コンサルティング ディレクター

国内最大手のファイナンシャルグループで、BPRプロジェクトや、数多くのEコマース構築プロジェクトにて、PMを歴任。2001年に外資系大手コンサルティングファームに入社、主にERP導入や、SOA技術を駆使した大規模SIプロジェクトを成功に導いた。同社のパートナー職を経て、2007年より現職。