本連載では、先進的な働き方・オフィス構築を行っている企業に潜入し、思わず「うらやましい」と声を漏らしてしまうその内容を紹介していく。「これからのオフィスどうしようか……」と考えている読者の手助けにもなれば幸いだ。
第22回となる今回は、簡単なアンケートに答えるだけで、身体にぴったり合う洋服サイズを表示してくれるWEBサービス「unisize」の開発運営を行うメイキップのオフィスを紹介する。
オフィスの中に試着室?
メイキップは2024年1月に、従業員数の増加や商談・会議スペースの拡張、実証実験エリアの設置などの理由から、神楽坂の本社の増床を行った。元々、同社は2022年からNITTOビルの1階をオフィスとしていたが、これに加えて4階の全フロアをオフィスとした形だ。
2フロアの体制になってからは、4階を従業員の執務室、1階を商談・会議スペースとしてリニューアルした。メイキップの代表取締役CEOである柄本真吾氏は、新オフィスのテーマとして「アパレルの未来を共に創造する」という内容を挙げた。
「オフィスに神楽坂という土地を選んだのは『ネット系の会社が少なかったから』です。場所を選ぶ際に、渋谷や六本木などの名前も出たのですが、他社に流されず『自分たちらしさを出したい』という想いから神楽坂を選びました。テーマとしては『アパレルの未来を共に創造する』というテーマを掲げ、居心地の良さと創造性の発揮を両立できる空間作りを目指しました」(柄本氏、以下同氏)
4階の執務フロアに訪れると、最初に目を引かれるのは「試着室」の存在だ。この試着室は、OMO施策(試着室で体型を測定しそれをECでのサイズフィッティングに活かす)の実験場所として設置されているもので、同社のサービス開発の際に利用されているという。
この試着室を設置することで、アパレルの未来に寄り添い、共創していけるオフィスを実現している。また、昨今の洋服廃棄問題を意識し、カフェスペースのテーブル下部には、廃棄予定の洋服を社内で持ち寄り展示しており、それを見た従業員や来訪者が「アパレルの未来」を考えさせられるオフィスとなっている。
カラフルで個性的なミーティングルーム
「新しく増床したオフィスは、1階の雰囲気と近いイメージで作りました。『今までにないサービスを作る』『クリエイティブなことができる』などの発想から、カラフルで明るい雰囲気のレイアウトにしています」
柄本氏の言葉通り、インタビューを実施した部屋のようにメイキップのコーポレートカラーであるオレンジが鮮やかな会議室もあれば、まるでキャンプに来ているかのようなテントの中で打ち合わせができるミーティングルームも設置されている。
これ以外にも、大きな円卓を囲むミーティングスペースや畳が敷かれた茶室のような雰囲気の会議室まで用意されており、カラフルで心が躍る仕掛けがたくさん散りばめられたオフィスとなっている。
このレイアウト以外にも、柄本氏がさまざまなオフィスを回って感じた、おしゃれなオフィスの3大要素である「天井が抜かれてること」「床がフローリングになっていること」「照明が明るいこと」という点が盛り込まれているそうだ。
部署の垣根を超えてチームでオフィスを作る
ここまで紹介した試着室や廃棄予定の洋服の展示、カラフルなデザインといった点を見てもメイキップらしさが感じられるが、最も特徴的な仕掛けは、オフィスの「作り方」にある。このオフィスは、「社員自らがDIYで作り上げたオフィス」なのだ。
「オフィスの増床を決めた時、真っ先に『自分たちの手で新しいオフィスを作りたいな』と思いました。そこで、家具のグループや配線のグループなど、オフィスのエリアや必要な物資に合わせてチームを作り、部署横断型のチームごとにオフィスをDIYしました」
この共同作業を通じて、仕事以外では関わりがなかった社員同士に絆が芽生え、コミュニケーションの活性化につながったそうだが、一方で苦労する点も多かったという。
特に大変だったのは「進捗の管理」だ。オフィスを手作りするにあたり、チームを10個ほど作ったが、その中には作業の進捗が良くないチームも出てしまっていたという。そのチームに対して、他のメンバーをアサインしたり、モチベーションアップにつながるような声掛けをしたり、と対策を行った。
反対に、オフィスを作る作業にのめりこみ過ぎてしまい、従来の業務がおざなりになってしまう人も少なくなかったようで、それぞれのバランスを取るのが大変だったそうだ。
最後に柄本氏に今後のオフィスの展望を聞いた。
「オフィスは完全に完成してしまったら面白くなくなると思っています。ずっと作り続けられるオフィスを目指したいです。会社としても、新しいオフィスでよりクリエイティブな思考を得て、それを事業に反映させていきたいと思っています」