注目の新しいサービスや技術にスポットを当て、深掘りしていく本連載。第1回は、小売業の人材不足を補うサービスとして期待されるNECが提供する「NEC棚定点観測サービス」を取り上げる。

現在、国内のあらゆる業界で人材不足が深刻だ。小売業もその例に漏れず、ITを活用した業務の効率化が求められている。そんな中、NECは2024年3月、小売店舗のDXを支援する「NEC棚定点観測サービス」を強化し、スマートデバイスを活用した棚割自動判定機能を追加した。

はたして、同サービスは、店舗の業務効率化にどれくらい効果が出せるのだろうか。サービス担当のスマートリテール統括部 映像アナリティクスグループ 主任 髙畠真彩氏に聞いた。

  • NEC スマートリテール統括部 映像アナリティクスグループ 主任 髙畠真彩氏

    NEC スマートリテール統括部 映像アナリティクスグループ主任 髙畠真彩氏

「NEC棚定点観測サービス」とは

「NEC棚定点観測サービス」は2022年2月、スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売業向けに提供が開始された。このサービスは、商品棚を映したカメラ映像からAIがリアルタイムで品棚の在庫量を可視化し、商品の補充が必要なタイミングを従業員に通知するものだ。

画像は10分ごとに撮影され、クラウドに保存。在庫があらかじめ設定した「しきい値」を下回ると、担当者に知らせるという機能を持つ。これにより、店舗担当者は、現場に出向いて商品在庫を確認することなく、別の場所にいても品出しタイミングを把握できる。

特に、バックルームが別のフロアにあるビル型店舗、従業員が少なく店舗が大きい郊外店などで効果が見込めるという。なお、このサービスは東急ストアやイオンリテールが先行導入している。

  • アラート通知

    アラート通知(出典:NEC)

サービス価格は、初期費用が7万4,800円から(カメラ+アプリ設定費用、カメラの台数により異なる)、月額利用料がカメラ1台につき3,980円からとなる。

  • 在庫を測定するための定点カメラは、通路の天井に取り付けるケースが多い

    在庫を測定するための定点カメラは、通路の天井に取り付けるケースが多い

「主な用途は、売り場の棚在庫を検知して、適切なタイミングで品出しが行えるように通知を行うことです。在庫が少なくなると自動で従業員の端末に通知がくるので、欠品を気にすることなく、従業員は接客など、別の業務に専念することができます」(髙畠氏)

ある大手GMS(General Merchandise Store)では、納豆・豆腐カテゴリで補充回数が約50%削減したほか、補充で23時間、棚までの往復で4.4時間の計27.4時間の時間削減(月間)につながったという。ただ、バックヤードまでの距離や作業人数、店舗の大きさにより効果に差が出ており、東急ストアやイオンリテールでは、このあたりを店舗ごとに検証しながら導入しているという。

スマホアプリによる数回の撮影で「棚割」を自動設定

「NEC棚定点観測サービス」を利用する場合、まず、「棚割(たなわり)」の作業を行う。「棚割」というのは、棚のどの部分に、どんな商品が置かれているかを指定する作業だ。これにより、商品ごとの在庫状況が把握できる。同社は顧客からの要望を受け、2024年3月の機能強化では、スマホアプリで数回、棚を撮影することにより、「棚割」を自動設定できるようにした。なお、「棚割」は手動で設定・修正も行える。

  • 「棚割」の指定(右側2点の画像)。商品ごとに範囲が線で囲まれ、棚の位置と商品情報を登録する

    「棚割」の指定(右側2点の画像)。商品ごとに範囲が線で囲まれ、棚の位置と商品情報を登録する(出典:NEC)

  • 「棚割」は、スマホアプリで棚を数回撮影することで行える

「棚割」では、値札に商品情報を登録した二次元コードを貼っておくと、スマートフォンのカメラがその情報を読み取り、商品情報も自動で登録できる。実際の在庫状況は、スマートフォンではなく、店舗内に設置した定点固定カメラにより判定するが、「棚割」で使用したスマートフォンの画像と定点カメラの画像をマッチングすることで、定点カメラによる在庫状況の把握を可能にしている。これには、NECの特許技術を利用しているという。

  • 「棚割」が自動で行われる。商品情報は棚につけられた商品ごとの値札のバーコードを読み取って自動設定する

    「棚割」が自動で行われる。商品情報は棚につけられた商品ごとの値札のバーコードを読み取って自動設定する

「本当は棚のカメラだけで2次元コードまで読み取れることがベストですが、今は(定点カメラの)画質が追いついていないため、スマホで撮影をしています」(髙畠氏)

商品を置く位置や面積を変えるとく在庫を正しく把握できないため、基本的には、棚のレイアウトを変更した場合、「棚割」を再登録する必要がある。