スペシャルインタビュー　経営トップが語る　新たなる1世紀への挑戦(7) 株式会社トーコー　常務取締役　西田敏典

戦後間もない頃、初代社長が銅板をたたいてバケツを作って販売し始めたのを機に、大阪の小さな町工場として設立されたトーコー。やがて、住宅関連に使用される金属部材のメーカーとして拡大成長し、設備投資のため奈良県に本社を移転。現在では、業界でのシェアを着実に広げている。中でも、換気棟（かんきむね）と呼ばれる金属部材の製造・販売は全国でもトップクラスを誇り、取引先からの注目度も高い。設立当初から「メーカーとして大規模な工場を作り、自社製品を全国に販売したい」というビジョンを掲げ、実践してきた同社の取り組みを、3代目次期社長である西田敏典氏に聞いた。

--主力商品である『換気棟』について教えてください--

換気棟とは住宅の屋根に取りつける金属部材で、建物の換気を良くするもの。換気棟を使用することで、カビの温床となりやすい小屋裏の湿った空気を排出できます。外部と同じ湿度・温度の状態にすることで住宅の劣化を防ぐとともに、寿命を延ばすことができるのです。以前の日本は、建物を作っては壊すという"スクラップ＆ビルド"型の社会でしたが、現代ではエコの観点からも"今あるものを末永く使う"社会へと変化しています。そうした時流にマッチしており、社会的意義の高い製品だと言えるでしょう。

また、新しい製品の開発も意欲的に行っており、狭い軒先から吸気することができる『エアーフレッシュ』や、キュービック型住宅や屋上庭園でも換気ができる『カンキィー』といったように次々と換気部材のシリーズ製品を販売しています。狭小地に建てられるようになど、現代日本の住宅事情に合わせた換気製品を提供することで、お客さまからの評判も高まっています。

--そうした商品は、どのようにして生み出されているのでしょう？--

当社の強みは"開発力"にあると考えています。たとえモノを作る設備機器が十分に整っていても、何を作るかをしっかり検討しないと生産する意味はありません。つまりただ"作る"のではなく、"開発"することが重要なのです。その根底には、同じモノを作り続けるのではなく、常に新しいモノを世の中に生み出し、お客さまの元に届けるのがメーカーの役目だという思いがあります。そのため当社では、お客さまが求めている製品を営業担当者がていねいにヒアリングして、得た情報を開発担当者にフィードバックしています。その結果、完成した商品を営業担当者が提案して、さらに商品のブラッシュアップを図っていく。この開発と営業のサイクルが、うまく機能しているのだと自負しています。

とはいえ、最初からこうした社内体制が確立されていたわけではありません。「商品を置けば売れる」と言われた高度成長期には、メーカーとしての本分を果たさず、ただ商品を仕入れて売っていた時代も正直ありました。そうした反省も踏まえ、原点であるビジョンに立ち返り、15年前に開発部を設置。自社製品を製造・販売することで、他社との差別化を図ってきたのです。その取り組みが、今になって実っているのだと言えますね。

--今後は、どのような事業展開を行う予定ですか？--

今までなかった商品を、現在のお客様と、今までなかった取引先に提案していくというのが基本の方針です。これまでは施工店様がメインの取引先でしたが、最近ではより上流のハウスメーカーやビルダー様とのお取引も増えています。後で住宅に部材を取りつけるのではなく、あらかじめ仕様として扱ってもらうことで、製品の認知度を高めるともに販売を拡大していこうというのが今後の戦略ですね。

また、これまで関西が中心でしたが、昨年11月に東京に営業所を設置。本格的に関東へ進出するとともに、将来的にはアジアへの進出も視野に入れて販路を拡大していくのが目標です。ひとまずは換気棟のマーケットシェア15％を獲得し、「換気棟といえばトーコー」と言われるよう積極的に提案営業を行っていきます。そして、ゆくゆくは100億円企業を目指していきたいですね。

--どのような人材が活躍していますか？--

当社は事業の拡大に向けて、今は第二成長期を迎えているところです。そのため、会社の成長を支える人材を育成するリーダーの存在が不可欠。自社の教育制度でリーダーを育てていくことはもちろん、できれば外部から新しいノウハウを持ち込んできていただきたいと思っています。

設立してから60年以上経っていますが、当社はまだまだ発展途上のベンチャー企業だという風土があります。そのぶん、やりたいと手を挙げれば仕事を任せますし、バックアップは惜しみません。何か達成した経験のある方であれば、それを活かせる環境が整っていると言えるでしょう。また、どの部署でも社長と近い距離で仕事ができますので、ゆくゆくは経営の視点を持って働きたいという方にはうってつけの会社ですよ。