ルータの特徴

ルータはネットワークを相互接続するためのネットワーク機器です。社内ネットワークには、いくつものネットワークが存在しています。ルータによって、それらのネットワークを相互接続します。インターネットにも膨大な数のネットワークが存在していて、ルータによって、それぞれのネットワークが相互に接続されています。

ここで「ルータがネットワークを相互接続する」ということについて、もう少し詳しく考えましょう。

ルータがネットワークを相互接続するには、ルータのインタフェースの物理的な配線に加えて、インタフェースにIPアドレスを設定します。たとえば、インタフェース1の物理的な配線を行ってそのインタフェースが有効になり、IPアドレス192.168.1.254/24を設定すると、ルータのインタフェース1は192.168.1.0/24のネットワークに接続していることになります。ルータには複数のインタフェースが備わっていて、それぞれのインタフェースの物理的な配線とIPアドレスの設定を行うことで、ルータは複数のネットワークを相互接続することになります。

次の図は、ルータによるネットワークの相互接続の様子を表しています。

図1 ルータによるネットワークの相互接続

図のR1には3つのインタフェースがあります。インタフェース1の物理的な配線を行ってIPアドレス192.168.1.254/24を設定すると、ルータ1のインタフェースはネットワーク1の192.168.1.0/24に接続しています。同様にインタフェース2とインタフェース3にもIPアレスを設定することで、R1はネットワーク1、ネットワーク2、ネットワーク3を相互接続しています。

ネットワーク3にはR1だけではなくR2も接続されています。R2の3つのインタフェースにもR1と同様に物理的な配線をしてIPアドレスを設定することで、R2はネットワーク3、ネットワーク4、ネットワーク5を相互接続しています。

ルータによるデータの転送

前回のレイヤ2スイッチでも解説しましたが、ネットワーク機器はデータを転送することが主な機能です。ネットワーク機器によるデータの転送を考えるポイントは、

・データを転送する範囲 ・何に基づいてデータを転送するか

ということです。

データの転送範囲

ルータによるデータの転送範囲は、ルータによって相互接続されているネットワーク間です。ルータが行うネットワーク間のデータの転送のことを特に「ルーティング」と呼びます。1台のルータで相互接続されているネットワーク間ではなく、何台ものルータで相互接続されているネットワーク間でのルーティングが可能です。

図2 ルータのデータの転送範囲

この図のように、異なるネットワークに接続されているホストとサーバ間の通信のことをエンドツーエンド通信とも呼びます。ルータがネットワーク間でのルーティングを行うことで、エンドツーエンド通信を実現することができます。

何に基づいてデータを転送するか

TCP/IPで通信するときには、通信相手を識別するためにIPアドレスを利用します。ルータはIPアドレスに基づいてデータを適切なネットワークへ転送します。ただし、そのためにはルータにはあらかじめルーティングテーブルに転送先のネットワークの情報が登録されている必要があります。ルーティングするためには、まず、ルータのルーティングテーブルを作成することが大前提となります。

ルーティングテーブルの内容は、次回、あらためて詳しく解説しますが、宛先のネットワークアドレスとネクストホップアドレスが主な内容です。ネクストホップアドレスとは次にデータを転送するべきルータのアドレスです。ルータにデータがやってくると、データに記されている宛先IPアドレスとルーティングテーブルから次に転送するべきルータを判断して、データを転送します。ルーティングテーブルに登録されていないネットワーク宛てのデータは転送することができずに破棄されることになります。ルーティングテーブルにネットワークの情報を登録するということは、ルーティングを考える上でとても重要なことです。

次の図はルータによるネットワーク間のデータのルーティングの例です。

図2 ルーティングの例

まず、R1とR2はルーティングテーブルにデータを転送したいすべてのネットワークの情報を登録しておく必要があります。この図では、ネットワーク1(192.168.1.0/24)~ネットワーク5(192.168.5.0/24)の5つのネットワークです。ルーティングテーブルにネットワークの情報を登録する方法は、次回、あらためて解説する予定です。

そして、ホスト(192.168.1.100)からサーバ(192.168.5.100)へデータを転送するときには、宛先IPアドレスは192.168.5.100が指定されます。R1は宛先IPアドレスに一致するルーティングテーブル上のネットワークの情報を検索します。すると、ネクストホップがR2となっているのでR2へデータを転送します。

続いて、R2でもデータに記されている宛先IPアドレスとルーティングテーブルを見て、直接接続されているネットワーク5(192.168.5.0/24)上のサーバへとデータを転送します。

このようにルータはIPアドレスとあらかじめ作成しているルーティングテーブルに基づいてデータを適切なネットワーク間で転送するためのネットワーク機器です。IPアドレスはOSI参照モデルのレイヤ3、すなわちネットワーク層のアドレスなのでルータは「レイヤ3のネットワーク機器」です。