ゴール・メソッド

まずはちょっと自慢話。

私は、生まれてこの方、試験というものに落ちたことがない。

実は、秘訣がある - ということに、最近、気が付いた。子供の幼稚園でのパパ友である本村弁護士から本をいただいたのだが、その『本村弁護士流読むだけで賢くなる勉強方』を読みながら、その秘訣を再認識した。

本村弁護士いわく「(試験に)早く受かる人は、早い段階で過去の試験問題を解いてみている」とのこと。

私も同じである。まずはゴール設定をしてから、勉強を始めるのだ。これが秘訣である。こんな感じの問題を、7割正解すればいいんだな」というゴールイメージをまず認識し、それから勉強を始める。そうすると、非常に効率的に、しかもモチベーション高く勉強ができるのである。

一方で、世の中の多くの人が、

  • 夏までにXXまでの基礎を勉強して、秋以降は……
  • 夏休みには、評判の「XX式XXX」をやり遂げよう

などとタスクを最初に考える。ゴール設定が曖昧なまま、どうやるかという"HOW(タスク)"を考えてしまうのだ。

これは仕事でも言えることである。

多くの人が、「ゴール(最終的にどのような状態になればよいか)」よりも「タスク(何をすれば良いか、HOW)」ばかりに目が向いている気がする。多少気が利いた人だと、「タスク」ばかりでなく「目的」を意識しながら「タスク」を行っている。しかし、「ゴール」を意識して「タスク」を行っている人はやはり少ない。

「目的」と「ゴール」は似ているようで異なる。

目的には達成基準がない。これが、行動を曖昧にしてく。たとえば、試験勉強をするにあたり、「試験勉強の目的は何だろう?」と自問しても、「会計士という資格を持つため」「将来的に監査業務をやっていくため」という曖昧な回答しか出てこない。達成基準がないのだ。

一方で、達成基準のあるゴールという言葉を使うと、「将来のゴールはいったん置いておくとして、3月のゴールは1次試験に受かっていることであり、言い換えると、あのテストで7割正解できるようになっていることだ」という風に、節目節目での達成している状態が明確になる。結果、今やるべきことが明確になる。

私はこの考え方を、「ゴール・メソッド」と呼んでいる。ゴール・メソッドは、仕事を効率的に回すにあたり非常に重要な考え方だと思う。仕事をする中で、すぐに「やること(タスク)」ばかりに目が行き、タスクの詳細化ばかりをしようとする人には、

「3末時点でのゴールは何? 今月のゴールは?」

とゴールを意識するように誘導することにしている。

会議は仕事術の玉手箱や~

会議は仕事の縮図である。

ゴール・メソッドに代表されるような仕事術を適用していくと、会議はどんどん効率的になっていく。逆に言うと、さまざまな仕事術を活用しない限り、ダラダラ会議、意味なし会議はなくならない。

会議には、さまざまな立場のいろいろな人が集まる場だという特徴がある。個人作業ですら、「ゴール」を意識しないで仕事を進めるとブレが生じるのに、多くの人が集まる場で、その会議のゴールが意識されないままでは、一層大きなブレが生じてしまう。結果、ダラダラ会議が生まれるのだ。

たとえば、「チーム間の状況を共有する」という会議を想定してみよう。以下のようなゴール設定があれば、話す側と聞く側の意識が揃い、手短で効率的な会議となる。一方で、単に「共有しましょう」というだけで会議を始めると、人によってはやたらと状況を詳しく話す人が出たり、自分が悩んでいるポイントをひたすら話す人が出たりと非効率な会議になる可能性がある。

本日の会議のゴール

各チームの状況をポイントだけ理解すること

今後チーム間で連携の可能性があるポイントを理解すること

今後何かあった場合、質問できる窓口を把握すること

このように会議が終わった際、どのような状態になっていればいいのか(ゴール)を明示する。すると、会議参加者の意識が揃い、効率的な会議が実施できるようになる。

仕事のできる人は、たいがい会議の仕切りも良い。できる人が会議を仕切ると、ダラダラ会議を許さず、

  • みんなを巻き込み
  • いろいろなアイディアを呼び起こし
  • グイグイ引っ張る

ことができる。

ゴール・メソッドをはじめとする、効率的な仕事の進め方が身についているので、仕事の縮図である会議でも自然とその推進ができるのである。

次回以降の予定

本コラムでは、「会議を制すれば、仕事を制する」と題し、会議という切り口で、会議のための技術だけでなく、仕事を進める上での技術全般の話をしていく予定である。具体的には、残り5回の連載で、以下の話をしていく。

第2回 「その会議、いるの?」

会議体設計のコツを知る

第3回「ジャミラ出現!? こんなときどうする?」

会議の中での仕切り方(運営)のコツを知る

第4回「事件は会議室で起こってるんじゃない! 現場で起こっているんだ!!」

会議というものを仕事の中でどのように位置づけるかのコツを知る

第5回「ゴールを決めろ!」

複数の人の中で意思決定をするコツを知る

第6回「カッコイイサラリーマンはジャンボ宝くじで『バラ』を買う」

会議とキャリアの関係を知る

スキルの話だけでなく、毎回、「なるほど!」と思えるようなことを散りばめていくつもりなので、ぜひ、次回以降も期待していただきたい。

執筆者紹介

斉藤岳 SAITO Gaku

アビームコンサルティング プリンシパル。東京大学大学院農学生命科学研究科修了。コンサルティングファーム勤務を経て2001年にアビーム入社。新規事業立上げ、事業再編、経営管理、業務改革等のコンサルティング経験多数。また、「会議で結論を出す技術」「インタビュースキル」「ソリューション営業スキル」等の研修を行っている。主な著書に1回の会議・打ち合わせで必ず結論を出す技術など。