堀 ライフハックの本道って、「小さなことを繰り返す」とことだと思うのですが、今日は僕らが毎日使っているアプリや便利なツールを紹介してみたいと思います。この2人なのでMac OS X寄りになってしまいますが!
佐々木 時間の節約と言えば、私はQuitApp++というアプリを重宝しています。これはアプリケーションの自動起動・自動終了を行ってくれるものですが、私はこれで、TwitterやMixiに現実逃避を始める前に最大10分間でブラウザやクライアントを「自動終了」させるようにしています。そして、エディタを自動起動させると、強制的に仕事に戻されるわけです。時間の節約術とはちょっと意味が違う気もしますが、実際にはずいぶん節約されています。
堀 僕が時間節約のために1日に100回は使っているのがTextExpanderです(今も使いました)。TextExpanderは「;tx」といった簡単な省略形に文字列を割り当てておくことで、1日に何度も入力する文字から、住所、電話番号、間違えやすい単語、メールのテンプレート、HTMLのスニペットなどまで自動入力できるツールです。QuitApp++と同様、ちょっとした近道を作ることで本来失われたはずの時間が回収できるのは嬉しいですね。
佐々木 そうですね。Windows時代にはこれと似たようなことをするために、eClipを使っていました。これはクリップボード拡張ソフトというものですが、ほぼ無制限に記録を保存しておくことが可能で、しかも検索ができたので、「以前こういうことを書いたはず」という文面さえ思い出せれば、入力の手間が大いに省けました。
堀 テキストファイルの最後に文章を少し追加したり、ファイルをとってきて開いたりといったことなら、ギークの伝家の宝刀、Quicksilverでもできますね。ただし、佐々木さんはもっと一般のMacユーザー向けのクリップボードツールを使ってるんでしたよね?
佐々木 私はeClipの代わりにPTH Pasteboardを使っています。保存データを溜め込みすぎると重くなることもありますが、機能的な不満はありません。
堀 なるほど、TextExpander、Quicksilver、PTH Clipboardはすべて、「操作の手数を減らす」という意味合いも持っていて、使えば使うほど楽になるツールですね。楽と言えば、ファイルを古さや種類に応じて自動的に整理するHazelというツールも、考えずに使えるので日々のファイル整理に割く手間が不要になりますね。
佐々木 Hazelは便利ですね。性格的に、私に合っているような気がします。長年PCを使っていますが、条件に応じてフォルダの名前を付けたり、ファイルを移動したりしてくれるので、ようやくフォルダに規則的な名前を付けられるようになってきました。今では「新しいフォルダ」をデスクトップに作っておくだけで、Hazelが適切な名前を付けてDropboxのサブフォルダに移動してくれたりします。
堀 あと、単に作業を速く済ませるだけでなく、.「物事を忘れない」というのも究極の時間節約だったりします。ここでいろんなタスク管理アプリを使うこともできますが、定番ワザとして、忘れてはいけないことをMac OSの有名なスティッキーズに書いておくのは今でも有効です。
佐々木 WindowsにもStickiesというソフトがあります。これには独特の機能があって重宝していました。付箋ソフトであると同時に、リマインダ機能を持っていて、メモを「何分後に最前面に出す」、「毎週何曜日の何時に表示させる」という指定ができるんです。だから、「○○をいつ頃やりたい」ということがあったら書いておいて、その日が来るまで隠しておくという使い方をよくやりました。メモを画面上で震えさせることもできるので、安易に無視できないようにもなっていたりして。
堀 これを自動でやってくれるAppleScriptがMac OS Xにもないですかね……探しておきます。なお、ツール探しは楽しいので、ハマりすぎないようにするのも大事ですね。時間を細かく取り返してくれるツールを1日に何百回も使うことで、自然に作業のペースが速くなる。コツは、ツールを使用していることを意識しなくなるほどに手になじませることです。
編集後記(佐々木正悟)
今回紹介したツールは「小技」と言ってよいような機能を持つものばかりですが、だからといって、これらが生み出してくれる時間的恩恵や生産効率は決して小さくありません。
これらのツールをほとんど無意識で使いこなせるようになって1年も経過すれば、莫大な時間が節約されているのです。意識的に活動のスピードアップを計らずとも、それだけの成果が得られるのです。
ぜひ読者のみなさんにも、無意識のうちに小さなツールが生み出す莫大な時間を手にしていただきたいと思います。
佐々木 正悟(ささき しょうご)
心理学ジャーナリスト
「ハック」ブームの仕掛け人の一人。専門は認知心理学。 1973年北海道旭川市生まれ。97年獨協大学卒業後、ドコモサービスで働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。 著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほかに『ブレインハックス』(毎日コミュニケーションズ) 『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などある。
堀 E. 正岳(ほり まさたけ)
ブロガー・気候学者
1973 年アメリカ・イリノイ州エヴァンストン生まれ。筑波大学地球科学研究科(単位取得退学)。理学博士。地球温暖化の影響評価と気候モデル解析を中心として研究活動を続けている。その一方でアメリカでライフハックが誕生したころからその流行を追い続け、最新のハックやツール、仕事術や自己啓発に至る幅広いテーマをブログ Lifehacking.jp で紹介している。 著書に、「情報ダイエット仕事術」(大和書房)、「英語ハックス」(日本実業出版社、佐々木正悟氏との共著)、Lifehacks PRESS vol2(技術評論社、共著)がある。