明日10月5日は「達磨忌」と呼ばれ、禅の始祖である達磨大師の命日の法要が行われます。デフォルメされて絵に描かれることも多い達磨さん。今週は、そんな達磨大師の思想から学んでいきます。
達磨大師は禅の基本となる考え方として、仏教の哲学を4つの言葉で表しました。
「不立文字(ふりゅうもんじ)」:ブッダの教えの重要な部分は言葉や文字にして伝えることができない
「教外別伝(きょうげべつでん)」:文字では表せない「体験」による、心と心のやりとりで真理は伝授される
「直指人心(じきしにんしん)」:ただひたすらに自分の心を見つめることによって
「見性成仏(けんしょうじょうぶつ)」:己の中にいる仏(悟りや真理)の存在に気付くだろう
答えは自分で自分の中から見つけ出すものであって、それを引き出す手がかりとして、さまざまな「体験」があるというわけです。
特に「直指人心 見性成仏」という教えの言葉は、達磨の肖像を描いた禅画(達磨図)に添えられることが多いのですが、江戸時代の僧、白隠慧鶴(はくいんえかく)禅師が描いた達磨図の一枚には、一風変わってこんな言葉が記されています。
「このつらを 祖師の面と見るならば 鼠を捕らぬ猫と知るべし」
「この絵の顔を達磨大師だと思っているうちは、自分のことがわかっていない役立たずだ」といった意味の言葉で「直指人心 見性成仏」、つまり答えは自分の中を見つめた先にあるはずなのに、達磨大師の姿を崇拝しているようでは本末転倒であるということです。
「この人が言っているのだから正しい」「これだけ多くの人に支持されているのだから正しい」という風に、尊敬する人物や権威のある人物の言っていること、多くの人に支持される意見や理論などに触れると、深く考えることをせずにそのまま自分のスタンスとしてしまいたくなるものです。
周囲の人物の中をいくら探しても自分自身は見つかりません。優れたアドバイスやさまざまな「きっかけ」はあっても、そこから自分で考え、行動を起こし、答えを見つけてこそなのです。
■今回登場したのは、禅のぼさつが宿った「こねり」
■著者紹介
Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。
「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。