「時々勤払拭」(じじにつとめてふっしきせよ)という言葉があります。中国禅の第五祖、弘忍禅師の後継者として有力視されていた神秀という弟子が、「自分が体験した悟りの境地を詩に表しなさい」という課題に答えて詠んだ言葉とされています。
その後で悟りの境地をより的確に表したとされる詩(第56回「本来無一物」)を詠んだ慧能という弟子が後継者に選ばれるのですが、神秀の残した「時々勤払拭」も大切にされているのです。
神秀の詠んだ詩はこうです。
「身はこれ菩提樹 心は明鏡台(うてな)の如し 時々に勤めて払拭し 塵埃(じんあい)をして有らしむことなかれ」(我が身は悟りを宿す樹、心は曇りのない鏡のようなもの 煩悩の埃がつかないよう、常に磨きをかけておかねばならない)
「心も放っておくと小さな塵や埃がたまってしまうので、常に掃除やメンテナンスをする心がけが大切だ」ということですね。誰かが空き缶を放置した場所に次から次へと空き缶が溜まっていくように、「このままでいいや」という気の緩みが増幅して積み重なり、小さな厄介ごとを大きな問題にしてしまうことがあります。
何か問題が起きた時、対処すべきことができた時、それがいかに些細なものであっても、放っておくと長い間もやもやとした気持ちを抱えなくてはなりません。
いつのまにか細々とした問題に埋もれていて、本当にやりたいことができていないと感じたら、この言葉を思い出し、「このままでいいや」が積み重なっていないかどうか、メンテナンスをする習慣をつけるように心がけてみましょう。
じっくりと対処すべきこと、すぐに解決すべきことの優先順位をはっきりさせて行動すれば、自分の「こころ」の容量を確保しておくことができるようになるはずです。
■こむぎこをこねたもの、とは?
■著者紹介
Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。
「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。