Microsoft ExcelやWindowsアプリケーションの多くが「Ctrl」+「Z」を「アンドゥ」に割り当てている。操作を差し戻すこのショートカットキーは人間がアプリケーションを操作する上で欠かすことのできない機能だ。しかし、なぜ「Ctrl」+「U」ではなく、「Ctrl」+「Z」なのだろうか。小話をフックにしてこのショートカットキーを覚えよう。
アンドゥ・リドゥのショートカット
キー | 操作内容 |
---|---|
「Ctrl」+「Z」 | アンドゥ。 |
「Ctrl」+「Y」 | リドゥ。 |
ちょこっとアドバイス
人はソフトウェアの操作において必ず間違いを犯す。間違いではないとしても、操作したあとに先程の操作を差し戻したいと思うことはある。「アンドゥ」はこれを実現するための機能だ。さらに、アンドゥしすぎることもしばしばというか、頻繁に起こすものだ。このアンドゥを取り戻すのが「リドゥ」だ。
アンドゥとリドゥは深く考えるとよくわからなくなってくる。これまでに行ってきた操作がすべて記録されており、この記録を現時点を出発点として行ったり来たりする機能がアンドゥとリドゥだと考えるとわかりやすい。これまでに操作した内容を現時点から時系列に過去へ遡っていく機能が「アンドゥ」、時系列に現在へ戻ってくる機能が「リドゥ」ということになる。
問題はなぜ「Z」なのか、ということだ。アンドゥ(Undo)であれば「U」になりそうなものだ。
リドゥはわかりやすい。アルファベットは「A、B、C、D……X、Y、Z」の順で並んでいる。リドゥはアンドゥの操作をひとつ前へ巻き戻す機能だ。アルファベットで「Z」のひとつ前は「Y」だ。ここからリドゥに「Y」の字を当てていると考えると覚えやすい。
アプリケーションによっては「Ctrl」+「Y」ではなく「Ctrl」+「Shift」+「Z」がリドゥになっていることもある。例えば、Macでは「⌘」+「Z」がアンドゥで「⌘」+「Shift」+「Z」がリドゥだ。「Shift」は方向を逆方向へシフトされる目的で使われることが多いので、「Ctrl」+「Shift」+「Z」で「Ctrl」+「Z」とは逆の動き、つまり「リドゥ」ということになる。「Ctrl」+「Z」の逆のショートカットキーは「Ctrl」+「Shift」+「Z」だろうか、という推測をしたことがあるなら、かなりショートカットキーに規則性が身に入ってきていると考えてよいと思う。
そして問題は「Z」だ。
「Ctrl」+「Z」は、UNIX系のオペレーティングシステムではターミナルで動作しているプロセスをサスペンドするためのショートカットキーに設定されていることが多い。これはわかりやすい。眠い、または寝ている、という状態を表記するときに「zzzz」「zzZZ」「ZZzz」といった文字が使われるからだ。
「zzzz」は寝ている時のいびきの音を表現する文字列として使われることが多い(ズズズ、といった鼻や口の奥のほうから出てくる睡眠時の音。日本ではズズズではなくグーグーという擬音語が使われることが多い)。ここからイメージして「Ctrl」+「Z」だ。こちらはイメージからのショートカットキーの割当になっている。
では、アンドゥの「Z」はどうなのかということになるが、残念なことにアンドゥの「Z」には、こうしたイメージに結びつく理由はないと考えられている。アンドゥが「Ctrl」+「Z」になったのは歴史的なものだ。
コピー、切り取り、貼り付けという代表的なショートカットキーを「Ctrl」+「C」、「Ctrl」+「X」、「Ctrl」+「V」に割り当てたのは1970年代にPalo Alto Research Centerで開発されたエディタだったと言われている(参考「Larry Tesler - Wikipedia」)。「Ctrl」+「Z」をアンドゥに割り当てるという設計もこのとき行われている。この4つのショートカットキーは横並びになっており、すべて片手で押すことができる。テキストエディタを操作するにはここにショートカットキーをまとめておけると便利だったということのようだ。
その後、歴史的にこのショートカットキーは広く使われるようになり、現在ではコピー、切り取り、貼り付け、アンドゥのショートカットキーとしてデファクトスタンダードのポジションを獲得した、というわけだ。
「Z」は単語やイメージから「アンドゥ」に結びつけることは難しい。この話をフックして覚えてもらえればと思う。
なお、もしPalo Alto Research Centerで開発されたエディタにもうひとつショートカットキーが設定されていたら、それは「Ctrl」+「B」になっていただろう、という話もよく言われる。これはキーボードの並びとして「Z」「X」「C」「V」の右横のキーが「B」だからだ。