米ヒューレット・パッカードでPC事業などを担当するパーソナルシステムズグループでは、「コネクテッド・ライフ(Connected Life)」という言葉を提唱しはじめている。
所有する複数のデバイスが常にネットワークに接続され、これにより新たな体験の実現、イノベーションの促進が生まれ、生活を豊かにするというのが、この言葉に込められた意味だ。
そして、米ヒューレット・パッカード パーソナルシステムズグループ チーフテクノロジーオフィサーであるPhil McKinney副社長が、中国・上海で開かれたアジア・パシフィック地域の報道関係者およびアナリストを対象としたプライベートイベント「A NEW HP WORLD」において、コネクテッド・ライフをベースに、今後10年の技術トレンドと、それによってもたらされる新たな世界を姿を予測。McKinney副社長は、
- Social Dynamics
- Personal Entertaiment
- Intelligent Network
- Gadgets
- Ubiquitos Content
の5つの観点から、2019年までの変化をそれぞれ指摘してみせたのだ。
それぞれの変化をMcKinney副社長の発言から追ってみたい。
「Social Dynamics」では、現在のソーシャルメディアの広がりに触れながら、「2010年はビジネスや生活のなかで情報を広く共有する時代が訪れている。2013年にはこれがひとつの体験に統合されるSocial Media Experience Convergeの時代が訪れ、GPSとの連動により、自分が歩いている場所に最適な情報が入るようになる。さらに2016年には現在のオンラインゲームの世界で利用されているようなコマースの世界が、人々の生活のなかに広がり、これが社会基盤となるSocial Commerceの世界になり、そして、2019年には個人同士のコミュニケーションとして最も好まれるのがテレビ会議の手法を用いたVisual Collaborationになるだろう」と語った。
「Personal Entertaiment」では、2010年の現在はスマートテレビやスマートエンターテイメントといったネットワークと接続して各種サービスを受けられる環境が整い始めようとしていることを指摘。2013年には、これが家全体に広がるSmart Houseの時代となり、家のセキュリティを制御し、家族のひとりひとりの好みにあわせた空調や照明の制御などを行う時代がくるとした。また、2016年はSensor Networks Envelop Usの時代とし、センサーネットワークが爆発的に広がり、これを利用したサービスが増加するという。遠隔医療などもこのセンサーネットワークを利用して一気に広がることを予想した。そして、2019年にはIntelligent Solutionsとして、これまでの履歴情報やセンサー情報を利用することで、家族がいまなにを必要としているのか、どんなものが好みなのかを予想してそれに対応したサービスが提供される時代になるという。さらに、このネットワークを利用することで、高齢の両親が遠隔地に住んでいても、朝起きて健康に生活していることを確認できるようになるとした。
「Intelligent Network」では、「2010年は先進国においては、常にネットワークにつながっているという時代が訪れた。だが、2013年には、より多くのデバイスが常に接続されるようになり、帯域が足りなくなり、制約される時代になる可能性がある。それを解決するためのインフラの強化、デバイスの改善、アプリケーションの改良が進むことになるだろう。この経験を経て、2016年にはNetwork Of Thingsと呼ばれるようにすべての物事がネットワークに接続された状態になり、2019年にはPervasive Connectivityの時代として、世界のどんな国、どんな場所にいても、ブロードバンドネットワークに接続されていることが当たり前になる。水や空気と同じようにネットワークに接続されていることを意識しなくて済む」と予測してみせた。
「Gadgets」では、いまは過渡期にあるとしながらも、2010年はMobile Dominanceとして、モバイル製品の広がりを指摘。2013年には、ノートPCやスマートフォン、タブレットといった複数のデバイスを利用しそれぞれがひとつの環境で動作するFamily Of Devicesの世界が訪れると予測した。さらに、2016年には、Mobile Becomes The PCと説明。「これはモバイルがPCにとって変わるのではなく、モバイルの体験とPCの体験がひとつになり、PCの機能がモバイルのなかでも利用されるようになる」とした。そして、2019年にはAmbient Intelligenceとして、すべての情報が持ち運び可能なデバイスのなかに集約され、社会生活におけるあらゆる意思決定がモバイル型の情報端末の上で行われるようになるという。ここにヒューレット・パッカードが今年夏以降に投入するwebOSの役割があるとする。
最後に掲げた「Ubiquitos Content」では、2010年には電子書籍の広がりに代表されるようにコンテンツのデジタル化が進んでいることに触れ、「2013年にはEmergence Of Digital Fortressと呼ばれるように、プライバシーや著作権の保護などが注目され、サードパーティーから投入される情報管理ツール、情報管理サービスなどが話題になる。いかに情報を保護するかということが課題になるだろう」とした。2016年にはPersonalized Information/Contentとして、パーソナル化した情報やコンテンツが増加し、これらをもとにスマート化したデバイスの活用が広がるという。そして、2019年にはAugmented IQの時代とし、「情報がより人に密着した形で提供されるようになる。会った相手の名前が思い出せなくても、名前や住所、最後に会った日や最後にメールした日などを、デバイスを通じて教えてくれるようになる。これは私にとっても非常にありがたい世界だ」などとした。
McKinney副社長は、これらの将来に向けた情報ツールのひとつとして、時計メーカーのFOSSILとの協業によって開発した、あらゆる情報を集約できる腕時計のプロトタイプを披腕してみせた。
「こうした時代に向けて、ヒューレット・パッカードは技術の進化に取り組む」と、McKinney副社長。これからの10年で、我々の生活はまた大きく変化しそうだ。