本連載は、簡単かつ即効性のある、ITを用いてビジネスの効率を上げるための方法を紹介している。10回目のテーマは「テキストファイルの活用」だ。文書作成と言えば、条件反射でWordを使っているも少なくないだろう。そんな人たちに、ぜひ、文字情報しかないテキストファイルの良さをお伝えしたい。

PCの世界における「テキスト」の正体

PCを使っていると「テキスト」という言葉を目にすることがよくあると思う。「テキストデータ」、「テキストファイル」といった形で使われているかもしれない。

一般に、テキストとは学校の教科書や習い事の指南書のようなものを指すが、PC用語としての「テキスト」の意味はこれからかなりかけ離れているのでなかなか理解できないだろう。

PC用語としての「テキスト」とは、文字情報だけのデータのことをいう。言い換えれば、文字データのことだ。「テキストデータ」は文字情報だけのデータのことを指し、「テキストファイル」はテキストデータだけが保存されているファイルのことを指す。

Wordのデータはテキストファイルじゃない?

わかりやすくWordを例に説明しよう。Wordで簡単な文書ファイル、あまり文字装飾のない単純な文書を作成したとする。では、この文書が「テキスト」なのかと言うと、厳密には「NO」だ。入力した文字自体は「テキスト」なのだが、Wordに入力した時点で文字情報にはフォントやサイズなどの書式情報が付加されてしまう。だから、Word文書内の文字情報は、純然たるテキストデータとは言えない。

このことは、Word文書の文字を他の場所にコピー&貼り付けするとわかる。フォントやサイズも同じ状態でコピーされる。これは、コピーされた文字にテキストだけでなく書式情報も含まれているからだ。

Word 2003で作成した文書ファイルサンプル。文字だけのシンプルなもの

では、Word文書を保存した場合を考えてみよう。Wordでは、簡単な文章を入力してフォントやサイズの変更や文字装飾をせずに保存しても、ページサイズや上下の余白、テキストのフォントやサイズなどの各種情報が、文書を保存すると文字情報(テキストデータ)と一緒に保存される。

これらのWord固有の機能が持っている各種情報はWordだけが読み書きできる状態で保存され、ファイル形式は「.doc」や「.docx」形式となる。当然、文字情報以外の情報が付加されているのでテキストファイルではない。

ところで、Wordで文書を保存する際、ファイルの種類で「ファイル形式」を選択できる。通常は「Word文書」を選択するが、ここで「書式なし(*.txt)」を選択すると、テキストファイルで保存できるのだ。その際、文字を修飾する書式情報は一切なくなる。保存したテキストファイルをWordで開くと、書式情報がなくなり、すべての文字が初期設定のフォントとサイズになっているのがわかる。

「ファイルの種類」で「書式なし」を選択するとテキストファイルで保存できる

テキスト形式で保存したデータをWordで開いた画面。文字の書式がなくなっている

テキストエディタの特徴

テキスト形式で保存した文書ファイルは「メモ帳」で開くことができるようになる。文字の書式情報が失われた代わりに、他のアプリケーションで使えるようになったわけだ。

Wordで保存したテキストファイルを「メモ帳」で開いた画面

Windowsに標準で入っている「メモ帳」もそうだが、テキストデータを扱うアプリケーションを「テキストエディタ」という。テキストファイルは文字情報しか持たない。そのため、文字装飾のための機能なども必要ないので、Wordに比べれば起動が速く軽快に動作するのが特徴だ。

テキストデータの編集が目的のため、もちろんフォントやサイズ、太字などの指定はできない。フォントを指定する機能はあるが、これは画面上にどのフォントのどのサイズを使って表示するかの設定であり、Wordのように文字単位に個別に設定できるわけではない。

また、テキストファイルにはWordのように「ページ」という概念がないので、設定によっては画面の右端で降り曲がらずに、段落最後の改行があるまで1行で表示されることもある。

テキストファイルの何が便利か?

さて、テキストについて簡単に説明してきたのだが、ではいったいテキストファイルの何が便利なのだろうか? 1つは互換性だ。Windowsには「メモ帳」があるし、Macにも「テキストエディット」というテキストエディタが標準で付いている。テキストファイルであれば、OSの違いも、アプリケーションの有無も気にする必要もないわけだ。

また、テキストファイルには文字情報のほかに情報がないため、多くのアプリケーションで読み込みができる。例えば、Accessなどのデータベースソフトで管理しているデータをハガキ作成ソフトやExcelなどに移行する場合、直接データのやり取りができなくても、テキストファイルに書き出せばどうにかなることが多い。

テキストファイルの性質、そして互換性の高さを知っていると、他のユーザーとデータのやり取りを行う際に便利なことが多い。実際に利用することはないかもしれないが、知識として知っておきたい。

近頃は、Wordのデータを読み込むことのできるアプリケーションも増えてきた。これは、Wordデータを読み込むための機能があってできることで、本来、WordデータはWordでしか読み書きできない。

メモ帳を活用してみよう

テキストファイルのその他のメリットとして、テキストファイルを作成するテキストエディタの動作が非常に軽いということ、そして保存したテキストファイルのファイル容量が小さいことも挙げられる。

そこで今回は、「メモ帳」を使っての、オフィスの日常業務でのテキストファイルの活用方法を紹介しよう。何となく思いついたアイデアや、人に薦められた書籍やミュージックアルバムの名前、これからやろうとしていることなど、取るに足らないことでもなんでもいいので、「メモ帳」を使ってテキストファイルで備忘録として残しておくことをお勧めする。

「書籍」、「映画」といった分野ごとのファイルを作って内容を追加していってもいいし、ファイル名に日時を入れて毎日の仕事の日記などを書きためておくのもいい。重要なのはファイルとして"残す"という作業だ。テキストファイルなら、ファイルサイズも小さいからそれほどハードディスクを消費しない。

XPでファイルに含まれている語句を検索した画面

Windowsでは、ファイル検索で「ファイル名」だけでなく「ファイルの内容」まで検索できるようになっている。内容を検索できれば、何となく書きためたテキストファイルの内容も検索対象となる。Googleでインターネットを検索するのと同様に、自分で書きためたテキストファイルが、数日後、数ヶ月後には貴重な情報源になるかもしれないのだ。

若い頃は忘れずにいられたことも、忙しさとともに忘れるようになってしまう。だから記録する。「メモ帳」なら起動も速いし、レイアウトなども考えずに要点だけを保存できる。しかも検索機能付きだ。実に簡単で実践的なIT活用方法だと思う。