JR東日本グループのジェイアール東日本商業開発が運営する「グランデュオ(Granduo)」は、立川と蒲田で2店舗を展開している商業施設だ。2014年5月、同社2店舗のインフォメーションカウンターに、iPadが導入されインフォメーションスタッフの業務軽減と顧客満足度向上に役立っている。
店舗内のことだけに留まらない多岐にわたる質問内容
2008年に「ちょっと上質な毎日の生活を応援する回遊型コミュニティ百貨店」としてオープンしたグランデュオ蒲田店。その入口インフォメーションに立ち笑顔で顧客を迎えてくれるのがインフォメーションスタッフだ。「靴売り場はどこですか?」など、顧客からの質問に分かりやすい説明で店舗を案内してくれるが、その優雅な見かけとは裏腹に、インフォメーション業務は範囲が広く多忙なのだと語るのは、インフォメーション社員を統括する安田穂美氏だ。
蒲田店のインフォメーションスタッフは、現在5名が交代で勤務し、常時4~3名(時間によっては1~2名)が交代で顧客対応をしている。顧客からの問い合わせ対応のほかに、グランデュオカードの登録・作成、商品券販売・包装、店舗内からの顧客対応依頼や、代表電話の取次ぎなどもこなしている。
「グランデュオへご来店されたお客様が快適なお買い物をお楽しみいただけよう、あらゆる質問にスムーズにお答えできる体制づくりに努力しています。店内230店の店舗名と店内位置をすべて暗記し、店内情報は完璧に頭に入れて業務にあたっています」(安田氏)
それでも対応に苦慮することがあるという。
「JR蒲田駅の駅ビルで改札に直通している場所柄、お客様から駅周辺のことをよく聞かれます。銀行の場所から、葬儀場まで…内容は多岐に渡ります。店舗外のお問い合わせについては、受付の業務用パソコンで情報検索しますが、検索に時間が掛かりお客様をお待たせしていました」(安田氏)
地図と翻訳アプリがインフォメーション業務を効率化
蒲田店は、羽田空港直通の京浜急行線沿線にあり2020年の東京オリンピック開催に向け、外国人顧客の増加が見込まれる。今後の混雑時の対応に備えて、iPadが導入された。
インフォメーションスタッフの吉田梨香子氏は、「まず効果を感じたのは、地図と翻訳アプリの活用」と語る。よく聞かれる駅周辺施設の情報ページ(地図や営業時間、電話番号など)を、iPadのホーム画面にブックマークし、カテゴリごとにフォルダに入れて準備している。
「手軽に持ち運べるiPadなら、お客様のお手元で、一緒に地図画面を見ながら道案内ができます。画面を拡大してご説明も可能なので重宝しています」(吉田氏)
業務用パソコンで検索していたころは、検索時間がそのまま顧客を待たせる時間になっていた。また、パソコンを移動させたり印刷することができないので、検索結果は口頭で案内せねばならず、説明にも時間が掛かっていたという。よく聞かれる内容はあらかじめウェブページから印刷したものをファイリングするなど工夫していたが、ファイリングした資料は営業時間や定休日などの情報が古くなっている可能性があった。
「資料の差替えは頻繁には行えません。iPadなら、いつでもリアルタイムの情報をご案内でき安心です」(吉田氏)
外国人対応に翻訳アプリも役に立っていると吉田氏はいう。
「先日も、インフォメーションへ店舗から連絡が入り、最初は『外国人の方からクレームです!』とのことでiPadを持って店舗に向かったのですが、翻訳アプリでやり取りしたら、『この商品を取り置きしたい』という内容だと分かり、スムーズな顧客対応ができました」(吉田氏)
「kintone」で過去の催事や展示情報を保存
もう1つ、インフォメーションスタッフを困らせる難問がある。「少し前に、あの場所に展示してあったグラスが欲しいのですが……」「半年くらい前に催事で買ったお酒をまた買いたいのだけど……」といった、過去のディスプレイや催事に対する問い合わせだ。
「関連しそうな店舗にはすべて電話をかけてその商品があるかを確認し、お客様へご案内していましたが、確認に時間が掛かり、お客様をお待たせしてしまっていました」(安田氏)
催事内容は週ごとに入れ替わる。過去の履歴は紙のリストで保管しているが、具体的な商品を素早く検索するにはどうしても不向きだった。
開催される催事やイベントの情報を記録・管理できるアプリとして同社は、「kintone」(サイボウズ提供)を導入した。kintoneは、日報や顧客管理、案件管理アプリをプログラミングスキル不要で手軽に作れるビジネスアプリ作成用プラットホームだ。
「kintoneにログインすると、蒲田店と立川店で開催している催事状況や履歴を見られます」(吉田氏)
立川店の催事を蒲田店と誤って問い合わせに来る顧客もあるため、双方の情報を共有することで、よりスムーズな対応が可能になる。
また、iPadのカメラ機能を利用して、画像で情報を残す取り組みも始めた。
「店内を巡回して新しく展開された商品や展示があれば、写真を撮ってkintoneに保存します。備考欄にメモを残して、お客様からの質問に備えています」(吉田氏)
「こうして履歴を残しておけば、『あのディスプレイの商品どこにあるの?』と、お尋ねいただいた際にも、お客様に画像をお見せしてご確認いただけます。以前は、既にディスプレイが変わってしまった商品については即座に商品が判明せず、対応に時間を要していましたが、今はkintoneから催事の過去履歴を確認して『そちらは、イベントスペースで〇月〇日から〇日まで入っていたイベントの商品なんです』というところまで丁寧にご説明できるようになりました」(吉田氏)
「ご案内時間はかなり短縮されています。以前は5分以上はお待たせしていたものが、今では一瞬でiPadの画面を見せて解決することも多く、より正確で詳細な情報までお客様にご案内できるようになっています」(吉田氏)
同社では、iPad導入によるインフォメーションサービス向上と業務効率化に満足しているという。今後も活用を進めていく予定だ。