iPhone、仕事で使いこなせていますか?

日本はiPhoneの人気が高い。米国もiPhoneの人気が高い国だが、日本のほうがiPhoneのシェアが高い。iPhoneはAndroidスマートフォンと比較すると実売価格が高いケースが多い高級品だ。この高いスマートフォンを多くのユーザーが使っているのはちょっとびっくりすることらしく、仕事で渡日した人から「日本はiPhoneのユーザーが多いね」という驚きの声を何度も聞いたことがある。

  • iPhone 11 Pro - 資料: Apple提供

    iPhone 11 Pro 写真: Apple

iPhoneが最初に市場に登場したのは2007年だ。その時、iPhoneのオペレーティングシステムはまだiPhone OSと呼ばれていた。iPhone OSはバージョン4から「iOS 4」という名称に代わった。以降はずっと「iOS」の名称が使われている。Appleはほぼ毎年のペースでiOSの新しいバージョンをリリースし、さまざまな機能を導入してきた。それらのうち、いくつかは統廃合されて現在では残っていないものもある。しかし、多くの機能はiOSの機能として取り込まれ、ユーザーに毎日使われている。

iPhoneの登場は当時、関係者の度肝を抜いた。iPhoneのUI/UXは当初から優れたもので、多少の操作と試行錯誤でそれなりに使うことができた。操作の経験がないと扱いづらい当時の多機能携帯電話と比べると、iPhoneはマニュアルなしで使える高機能デバイスだったのだ。

使いやすいUI/UXは現在も引き継がれている。新しいiOSがリリースされても、大半のユーザーが新機能や使い方を調べたりはしない。ニュースで新機能を小耳に挟むことはあっても、腰を据えて新機能の使い方を習得しようとはしないはずだ。iPhoneはそうしたことをしなくても何となく使えてしまう。

しかし、これはちょっともったいないことでもある。現在のiOSはビジネスで利用できるさまざまな機能を提供しているが、そうした機能は何となくでは使いこなせない。それらを知っているのと知っていないのとでは、仕事の効率の良さが段違いだ。ノートPCは持ち歩かないこともあるが、iPhoneを身に着けていないことはほぼない。常にそばにあるiPhoneのスキルを向上させることは、そのままビジネススキルの向上につながる。

本連載ではiPhoneを仕事で使うという目的で機能を紹介していく。日々の作業負荷を軽減する機能を紹介できれば幸いだ。

日本はiPhone大国

まずは、日本でどの程度の割合でiPhoneが使われているのかを見てみよう。世界的にもスマートフォン市場ではAppleのiPhoneが人気だ。StatCounter GlobalStatsの報告によれば、2020年8月におけるiPhoneのシェアは25.15%。世界中の4人に1人はiPhoneを使っている計算になる。しかし実は、残りのほとんどはAndroidを使っており、4人に3人はAndroidスマートフォンを使っていることになる。世界シェアで見ると最も多いスマートフォンはAndroidだ。

  • 2020年8月スマートフォンシェア(世界)- StatCounter GlobalStats提供

    2020年8月スマートフォンシェア(世界)資料:StatCounter GlobalStats

しかし、これが日本になると状況が異なる。StatCounter GlobalStatsの報告によれば、2020年8月におけるiPhoneの日本でのシェアは62.69%。日本人のスマートフォンは半分以上がiPhoneということになる。一方、日本におけるAndroidのシェアは37.17%だ。5人中3人以上がiPhoneを使い、5人中2人かそれ以下がAndroidを使う、という状況になっている。

  • 2020年8月スマートフォンシェア(日本)- StatCounter GlobalStats提供

    2020年8月スマートフォンシェア(日本)資料:StatCounter GlobalStats

iPhoneとAndroidでは使われているオペレーティングシステムのバージョン推移にも違いがある。次のグラフは同じくStatCounter GlobalStatsが提供しているもので、2019年9月から2020年8月までのiOSバージョン別シェア推移を表している。

  • iOSバージョン別推移2019年9月〜2020年8月(日本)- StatCounter GlobalStats提供

    iOSバージョン別推移2019年9月〜2020年8月(日本)資料:StatCounter GlobalStats

iOSは新しいバージョンが登場すると、だいたい2カ月くらいでユーザーのアップデートが完了してシェアのほとんどが新しいバージョンに移行する。日本のiPhoneユーザーのほとんどがAppleの提供する最新版を使っていることになる。

同じ時期のAndroidのバージョン別推移グラフは次のようになる。

  • Androidバージョン別推移2019年9月〜2020年8月(日本)- StatCounter GlobalStats提供

    Androidバージョン別推移2019年9月〜2020年8月(日本)資料:StatCounter GlobalStats

AndroidはiOSとは異なるバージョン推移を示す。常に複数のバージョンが存在し、いくつかの主要バージョンが使われているという状況になっている。2020年8月の段階ではAndroid 10とAndroid 9が多く、これにAndroid 8が続いている。4位以降はシェアが減るものの古いバージョンが長期にわたって使われ続ける、という状況になっている。

iPhoneユーザーのほとんどが常に最新のiOSを使っていることから、iPhoneユーザーはiOSの新機能の恩恵を受けやすい状態にあると言える。新機能を調べたり試してみたりするのは手間のかかることだが、スキルを手に入れたあとは調査にかけた以上の見返りが得られる。投資としては悪くない負荷だと思う。

iPhoneの現行モデルと価格帯

iPhoneの現行モデルを確認しておこう。本稿執筆時点で、Apple Storeオンラインで販売されているiPhoneのモデルと価格帯は次のとおり。2020年中には次期iPhoneとなるiPhone 12の販売が予測されているが、本稿執筆時点ではまだ発表も販売も行われていない。執筆時点での最新モデルはiPhone 11だ。

モデル 価格(税別)
iPhone 11 Pro Max 119,800円〜
iPhone 11 Pro 106,800円〜
iPhone 11 74,800円〜
iPhone XR 64,800円〜
iPhone SE (第2世代) 44,600円〜
  • Apple Storeオンラインで販売されているiPhoneのモデルと価格比較グラフ(執筆時点)

    Apple Storeオンラインで販売されているiPhoneのモデルと価格比較グラフ(本稿執筆時点)

入門モデルとしての位置づけは「iPhone SE (第2世代)」で価格は税別で44,600円から。購入が多いと見られるiPhone 11は74,800円からで、もっとも高性能多機能モデルであるiPhone 11 Pro Maxは119,800円からだ。ここまでくると、PCの購入も視野に入れることができる金額になる。

参考までに、本稿執筆時点でApple Storeオンラインに掲載されているMacBook、iMac、Mac miniのモデルと価格を加えると次のようになる。

モデル 価格(税別)
MacBook Pro 16インチ 248,800円〜
iMac 27インチ (Retina 5K) 194,800円〜
MacBook Pro 13インチ (Thunderbolt3ポート×4) 188,800円〜
iMac 21.5インチ (Retina 4K) 142,800円〜
MacBook Pro 13インチ (Thunderbolt3ポート×2) 134,800円〜
iMac 21.5インチ 120,800円〜
MacBook Air (Retina) 104,800円〜
Mac mini 82,800円〜
iPhone 11 Pro Max 119,800円〜
iPhone 11 Pro 106,800円〜
iPhone 11 74,800円〜
iPhone XR 64,800円〜
iPhone SE (第2世代) 44,600円〜

グラフにしてみると、iPhone 11 Proの価格帯がMacの入門モデルの価格帯とほぼかぶっていることがわかる。iPhoneの上位モデルはプロセッサもパワフルなことが多く、PCでできるさまざまな作業をiPhoneでもこなすことができる。

  • Apple Storeオンラインで販売されているMacとiPhoneのモデルと価格比較グラフ(執筆時点)

    Apple Storeオンラインで販売されているMacとiPhoneのモデルと価格比較グラフ(本稿執筆時点)

Net Applicationsの調査によると、2020年8月におけるスマートフォンのシェアは58.30%で、PCのシェアは38.49%となっている。インターネットの使用はPCのよりもスマートフォンからのほうが多いのが現在の状況であり、日本では5人に3人はiPhoneからインターネットを使用していることになる。

  • デバイス別シェア - 資料: Net Applications提供

    デバイス別シェア 資料: Net Applications

決して廉価ではないスマートフォンだが、日本ではこれほどのシェアがある。ぜひデバイスの性能を遺憾なく発揮していきたい。

PCよりも身近な存在を使いこなそう

常にノートPCを持ち歩くビジネスマンも多いが、PCはオフィスや自宅に据え置きで持ち運ばないという人もいる。普段はノートPCを持ち歩いているが、ちょっとした外出時はノートPCも持ち歩かないという人もいる。しかし、スマートフォンを携帯しないビジネスマンはかなり稀だ。多くのビジネスマンはスマートフォンを常に持ち歩いている。

例えば、PCを持っていない状態で顧客からのメールに返信しなければならなくなった場合、スマートフォンがあれば一応仕事はこなすことができる。しかし、スマートフォンのソフトウェアキーボードで大量の文章を打つのは手間取る。iPhoneはBluetooth接続のキーボードを使うことができるので、バックに小型のBluetoothキーボードを入れておけば、こうした場合に手軽に長文を打つことができる。手帳サイズのキーボードなら持ち運びにそれほど手間はかからない。

iPhoneはMacやiPadとの連携も優れている。Macで行っていた作業をiPhoneに引き継いだり、その逆もできる。Macで入力したテキストや画像を意識することなく、iPhoneで貼り付けることもできる。これはiOSとmacOS、iPadOSの基本機能の1つだが、実は知らない人が多い機能でもある。こうした機能を知っているのと知っていないのとでは、iPhoneを仕事で使う時の手軽さが違ってくる。知っているほど楽ができる。これがiPhoneの潜在能力だ。

iOS (初期はiPhone OS)は2007年に登場してから13年が経過しており、この間に多くの機能が導入されてきた。多くのビジネスマンはiOSの機能のほんの一部しか使っていないというのが現状だ。iOSの機能を知り、iPhoneをもっと効率よく使うことで、ビジネス効率をアップすることができる。本連載ではこうした視点からiPhoneの活用方法を紹介していく。

参考資料