今回は、12月10日に開催されたハイブリッドクラウド研究会 第26回勉強会の様子をお伝えします。

勉強会は、日本時間11月3日~11月4日にかけて米国で開催されたMicrosoftのテクノロジーカンファレンス「Microsoft Ignite 2021(以下、Ignite)」で発表されたハイブリッドクラウド戦略を振り返る内容となりました。

同カンファレンスでは、ハイブリッドクラウド以外の分野でもさまざまなアップデートが発表されています。Igniteで発表された最新情報のサマリーに関しては、「Ignite 2021 Book of News」をご覧ください。

なお、今回も勉強会の様子はYoutubeのハイブリッドクラウド研究会のチャンネルにて視聴可能です。お時間のある方はぜひ、ご覧になってみてください。

さらに強化されたハイブリッドクラウドの世界観

メインセッションは「Ignite 2021でさらに強化されたAzure Hybridの世界から注目ポイントをMS高添さんにわかりやすく紹介してもらおう!」と題し、日本マイクロソフト シニア クラウドソリューションアーキテクト 高添修氏が登壇。Igniteの基調講演でMicrosoft CEO サティア・ナデラ氏が挙げたキーワード「Microsoft Cloud」を中心に、解説が繰り広げられました。

広がるエッジコンピューティング

「私たちを取り巻く環境、ワークスタイル、テクノロジーの潮流を俯瞰すると、Mixed Realityに象徴されるようなメタバース(仮想空間)とリアル世界の融合が加速していく世界観となっている」――冒頭、高添氏は世界の現状についてそう説明する。

このような世界観が広まりを見せる中、ここ数年はIoT、AIの分野でエッジコンピューティングが注目されており、特に産業系の制御システムにおける活用は、4年で6倍にも増加している。

一方、よりサイバー犯罪はより高度さを増しており、経済に与えるインパクトは2025年には10兆ドルに達すると予想されるという。こうしたことを踏まえ、高添氏は「エッジ、クラウド、オンプレミスのシステム全体を見据えたセキュリティ/ガバナンスが求められる」と強調した。

Azure Arcの可能性

続いて、Microsoft Cloud + AI Group Executive Vice President スコット・ガスリー(Scott Guthrie)氏のセッションから、ハイブリッドクラウド/マルチクラウド視点での「Microsoft Cloud」について解説がなされた。

話題の中心となったのは、包括的な管理を体現する上でのコアソリューションである「Azure Arc」だ。Azure Arcはリリースされて以降、常に進化を続けており、ハイブリッドクラウド研究会でも幾度となく取り上げてきた。現在は、主に以下のようなパブリックプレビュー機能が発表されている。

  • Azure Arc on VMware vSphere
  • Azure Arc on Azure Stack HCI
  • Azure Arc-enabled PaaS services
  • Azure Virtual Desktop for Azure Stack HCI

セッションでは、これらの機能について順に解説がなされた。その中から本稿では「Azure Arc on VMware vSphere」「Azure Virtual Desktop for Azure Stack HCI」をピックアップして紹介する。

Azure Arc on VMware vSphere

Azure Arc on VMware vSphereは、VMware環境に対し、管理者視点で有用な運用管理面の操作機能だけでなく、スピード感を求める開発者など利用者視点で役立つセルフサービス機能を提供する。

この機能連携は、「Azure Arc Resource Bridge」と呼ばれる仮想マシンが、管理対象となるVMware環境と、Azure管理プレーンである「Azure Resource Manager」との橋渡しになることで実現している。

  • alt
  • alt

Azure Virtual Desktop for Azure Stack HCI

Azure Virtual Desktop for Azure Stack HCIでは、Azureが提供するVDIサービス「Azure Virtual Desktop(以下、AVD)」に対して、Azure Stack HCI上にVDIを構成する仮想マシンリソースを配置する。これにより、Azureが提供するフルマネージドのコントロールプレーンのメリットを活かしつつ、アーキテクチャに柔軟性をもたらしている。

今後は、よりユーザーの利便性を高める「RDP Shortpath(ユーザーのクライアント端末とVDI仮想マシン間を直接的な画面転送によってレイテンシーを改善する機能)」も提供予定となっている。

  • alt
  • alt

高添氏は「Azure Arcによってさまざまな基盤、サービス、データベース、インフラストラクチャといった“場所を問わないイノベーション”を実現させていく」と語り、セッションを締めくくった。

* * *

Microsoft Cloudのコアテクノロジーとも言うべきAzure Arcは、マルチクラウド、オンプレミス、エッジ環境を真の意味での包括的な管理を提供しつつあるように感じました。

Azure Arcでは、多様な顧客環境を保ちつつもAzureが持つ運用管理、セキュリティ、利便性を享受することができます。この点を少しでも多くのユーザーに伝えられるよう、本研究会でも継続して取り組んでいきたいと思います。