使わない理由がない「NotebookLM」
NotebookLMは、Googleが提供するAIアシスタントツールだ。文書、音声、動画といった資料を読み込み、要約や知識整理データを生成する。これまで、会議・講義・資料・論文などの内容を整理するには膨大な時間と労力を要したが、NotebookLMを活用することで、その作業が飛躍的に効率化される。
このツールの最大の特徴は、利用者が入力した資料に基づいてAIが応答する点にある。一般的な検索エンジンのようにWeb全体を対象とするのではなく、自分が用意したデータを基盤に処理を行うため、内容の正確性と一貫性が担保されやすい。これにより、誤解や情報の混在を最小限に抑えつつ、必要な要点を迅速に把握できる。
また、NotebookLMは単なる要約にとどまらず、ノート形式への変換やマインドマップ化、さらには音声や動画への変換機能も備えている。これらの機能により、利用者は自分の学習スタイルや業務環境に合わせて柔軟に情報を再構築できる。こうした多様な出力形式は、教育や研究、ビジネスの現場でとくに有用だ。
さらに、NotebookLMはGoogleアカウントと連携することで、クラウド上のストレージや他のGoogleサービスとの連携も容易になる。すでにGoogle Workspaceを利用しているユーザーにとっては、自然にワークフローに組み込める点も大きな利点だ。
要約作業をAIに任せるべき理由
関係者間でシームレスに情報を共有することは、業務を効率的に進めるうえで欠かせない。しかし、すべての会議にすべての関係者が出席するのは非現実的だ。担当者や議論に必要となる関係者のみが会議を行い、会議の内容や結果を後から共有するというのが一般的だ。
そして、この方法にはいくつか課題がある。まず一つは、会議の内容を要約するのにそれ相応のマンパワーを消費するということだ。会議の内容を要約する能力に優れた人材を当て、数時間といった労働時間を消費し、資料を作成する。関係者はこの資料を読むことで情報を共有する。情報を共有するまでにマンパワーを使う必要があり、その分コストがかさむ。
もう一つの問題は、要約する過程で担当者による情報の取捨選択が行われるということだ。担当者がいかに公平に情報の要約を試みたとしても、持ち合わせている知識の偏りや好みなどはどうしても要約作業に影響を与える。このため、会議に直接参加していた人たちよりも、資料を経由して情報共有をした人材には偏った情報が与えられることになる。
この問題を一気に解決するのがNotebookLMだ。NotebookLMを使うと、会議ログ(文書、音声、動画)から数秒~数分で要約を生成することができる。この作業は生成AIが最も得意とする分野だ。要約の質もよい。どう判断すべきかは議論の余地があるが、一般的にNotebookLMが生成する要約はかなり質が高いように見える。
NotebookLMは、使う使わないを検討するサービスではなく、使うのが当然というサービスだ。使ったことがないのであれば、必須のスキルとして使い方を身につけるところからはじめよう。
ChatGPTじゃダメなの?
ChatGPTがダメなわけではない。ChatGPTとNotebookLMができることは似ている。両者の違いは、ChatGPTが汎用的な利用に対応しているのに対し、NotebookLMが情報の要約というところに特化している点にある。
ChatGPTは汎用的な対話型AIとして幅広い用途に対応するが、NotebookLMはユーザーが提示した資料や情報群を効率的に整理し、要点を抽出することを前提として最適化されている。そのため、長大なテキストや複数の資料を横断して理解しなければならない場面では、より迅速かつ的確に要約を得ることができる。
また、NotebookLMは文書やノートのような形式化された情報を対象とする前提で作られているため、情報の関連付けや文脈の把握に強みを発揮する。ChatGPTでも要約は可能だが、幅広い対話機能に比重が置かれているため、文書構造を意識した整理力や一貫性の高い要約の提示においてはNotebookLMが適している。特に研究や学習といった体系的な情報整理を求める場面で有効だ。
さらに、NotebookLMはユーザーの入力に対して一貫したスタイルで要約を生成しやすい。ChatGPTの場合、要約の仕方は柔軟性がある反面、スタイルや粒度が会話に応じて揺らぐことがある。対するNotebookLMは要点の抽出と簡潔なまとめを安定的に提供するため、比較可能性や再利用性の高い要約を得たい場合に有利だ。この一貫性はとくに複数の資料を比較検討する際に役立つ。
NotebookLMは情報を「学習ノート」として蓄積する設計思想を持つため、継続的に情報を追加しながら要約を積み重ねる使い方ができる。ChatGPTでも履歴を利用したやりとりは可能だが、ノート形式で体系的にまとめるという点ではNotebookLMが一歩抜きん出ている。したがって、情報の要約を中心に効率的な知識整理を進めたい場合、NotebookLMを選択することが合理的だ。
入力データの基本的な種類
NotebookLMが対応する入力データには、大きく分けて音声録音データ、録画されたビデオデータ、そして公開されているYouTube動画がある。これらは日常的に生成・利用されることが多く、NotebookLMの価値を最も発揮しやすいデータ群だ。
まず、音声録音データは会議や取材、講義といった場面でよく用いられる。NotebookLMは音声を文字起こししたうえで要約を行い、ノート形式にまとめることができる。これにより、従来は文字起こし作業に追われていた利用者が、内容の理解と活用に集中できるようになる。
次に、録画されたビデオデータは、映像と音声を同時に記録した形式だ。NotebookLMはYouTubeを経由することで内容を把握し、その内容をノートやマインドマップとして整理する。講義やセミナー、プレゼンテーションといった長時間の映像資料を効率的に理解するうえで有効だ。
そして、すでに公開されているYouTube動画の活用もNotebookLMの特徴的な機能の一つだ。公開されている動画を参照資料として取り込み、内容を要約してノート化できる。教育動画やニュース解説といったコンテンツを短時間で把握し、知識として蓄積することが可能となる。
入力データを活用する意義
NotebookLMにおいて多様な入力データを活用する意義は、情報収集と整理の効率を飛躍的に高める点にある。従来、会議や講義の録音・録画を扱う場合、すべてを視聴・聴取しなければならなかった。しかしNotebookLMを使えば、AIが要点を抽出して提示するため、利用者は短時間で本質的な理解に到達できる。
また、複数の入力ソースを組み合わせて活用できる点も重要だ。例えば、会議の録音データと関連するYouTube動画を同時にNotebookLMに取り込み、双方を要約・比較することで、新たな発見や整理の切り口が得られる。このような統合的な活用は、人間の手作業では容易に実現できない。
さらに、入力データをノートやマインドマップに変換することにより、理解の定着と共有が促進される。個人の学習だけでなく、チーム内での情報共有にも適しており、共同作業の効率化にも直結する。NotebookLMを用いることで、情報は単なる記録から「活用可能な知識」へと変換される。
このように、入力データの活用は単なる効率化にとどまらず、利用者の思考や学習、意思決定の質を高める効果を持つ。NotebookLMは入力の多様性を受け入れることで、知識活用の可能性を大きく広げている。
知識整理の新定番・NotebookLM
NotebookLMの利用は、すでに多くの分野で実用化が進んでいる。リモート会議の増加に伴い、会議録音を効率的にまとめるニーズがとりわけ高まっている。また、オンライン教育や自己学習の場でも、講義録画やYouTube動画を整理するツールとして注目されている。
今後は、NotebookLMの入力対象がさらに拡張される可能性もある。例えば、専門分野に特化した動画資料や、研究データベースとの連携といった応用が想定される。これにより、教育・研究・ビジネスにおける知識活用の幅はいっそう広がることになる。
ただし、利用者にとってはまず基本的な入力データの扱いに慣れることが重要だ。NotebookLMは高機能で、すべてを一度に使いこなすのは難しい。本連載では段階的に機能を解説し、確実に実践的なスキルを習得できるよう配慮する。
次回は、最も利用頻度の高い音声録音データを入力として活用し、NotebookLMでノートを生成する具体的な手順を解説する。実際の操作を通じて、読者はNotebookLMの基盤的な使い方を理解していこう。


