Google Geminiは汎用性の高い生成AIであり、Webで公開されているGoogle Geminiは特にその傾向が強い。Geminiは汎用的な生成AIチャットサービスであり、OpenAIのChatGPTやMicrosoftのCopilotと同じような位置付けにある。今回はそうした汎用的な生成AIチャットとしてのGoogle Geminiの特徴や強みについて取り上げる。
連載「Google Geminiの活用方法」のこれまでの回はこちらを参照。
最新の検索データの活用
Googleエコシステムとの統合や多言語サポートの充実度、翻訳精度の高さなどGoogle Geminiの特徴はいくつか挙げることができるのだが、これらはOpenAI ChatGPTやMicrosoft Copilotにもそれぞれに言えることなので、それほど強い特徴とは言いにくい。
Googleの最大の特徴は世界的に圧倒的なシェアを持つ検索エンジンサービスだ。Google Geminiの最大の特徴は、このGoogleの最大の強みである最新検索データが活用できるという点にある。
生成AIチャットの汎用度の高さと精度で頭一つ抜き出ているように見えるOpenAIのChatGPTだが、OpenAIは自前の検索エンジンを持たないため、データのリアルタイム性という面では弱いところがある。OpenAIはこの部分の強化に取り組んでいるが、リアルタイム性という面ではGoogle Geminiに一日の長があるように見える。
今回はいくつかの例を取り上げながら、Google Geminiが比較的リアルタイム性に優れているという点について取り上げる。
明日の千代田区の天気予報
まず天気予報について生成AIチャットに質問する。常にリアルタイムなデータが必要となるものだ。
明日の千代田区の天気予報を教えてください。
それぞれの回答は次のとおり。
申し訳ありませんが、私のデータは最新の天気予報を提供することができません。しかし、千代田区の天気予報を確認するには、気象情報のウェブサイトやアプリを利用するのが便利です。例えば、気象庁の公式サイトや天気予報アプリ、またはニュースサイトで最新の天気情報をチェックすることができます。
GoogleはGoogle検索で天気予報を提供している。どうやらGoogle Geminiはこのデータに基づいて天気予報のデータを表示しているように見える。一方、ChatGPT (4o mini)は最新の天気予報は提供することができないとして、他の情報源をあたるようにと回答している。
台風10号がもたらした被害
最近のニュースとして台風10号がもたらした被害について情報をまとめるように生成AIに指示を出す。
台風10号がもたらした被害についてまとめてください。
それぞれの回答は次のとおり。
台風10号は、各地に甚大な被害をもたらしました。具体的には、以下の様な被害が報告されています。
- 浸水:大雨により、河川が氾濫し、住宅や道路が浸水する被害が多数発生しました。特に、九州地方を中心に大きな被害が出た地域があります
- 土砂災害:土砂崩れや崖崩れなどの土砂災害も発生し、家屋が倒壊したり、道路が寸断されたりしました
- 停電:強風により、電線が切断され、広範囲で停電が発生しました
- 断水:浸水や配管の損傷により、断水が発生した地域もありました
- 交通機関の麻痺: 鉄道の運休や道路の通行止めなど、交通機関が麻痺し、人々の生活に大きな影響が出ました
被害状況の詳細については、以下の情報源をご確認ください。
- 気象庁:台風に関する最新の気象情報や過去の台風に関する情報が掲載されています
- 各地方自治体のホームページ:被災地の自治体のホームページでは、具体的な被害状況や支援情報などが掲載されています
- 報道機関:テレビや新聞、インターネットニュースなど、様々な報道機関が台風による被害状況を報じています
台風10号による被害を受けた皆様には、心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復旧を心よりお祈りいたします。
もし、台風10号に関するさらに詳しい情報が必要な場合は、お気軽にご質問ください。
以下に、台風10号に関する情報収集に役立つキーワードをいくつかご紹介します。
- 台風10号 被害
- 台風10号 浸水
- 台風10号 土砂災害
- 台風10号 停電
- 台風10号 断水
- 台風10号 交通機関
これらのキーワードを参考に、インターネットなどで検索してみてください。
また、以下の点にご注意ください。
- 情報の真偽:インターネット上の情報の中には、誤った情報やデマが含まれている場合もあります。信頼できる情報源から情報を収集するようにしましょう
- 二次災害:復旧作業中には、二次災害が発生する可能性もあります。安全に注意して、復旧作業を進めてください
ご自身の安全を第一に、状況に合わせた行動をお願いします。
台風10号(2024年)の影響についての具体的な被害状況をお伝えするためには、最新のニュースや気象庁の情報を確認するのが最も正確です。しかし、一般的に台風による被害は以下のようなものがあります:
- 風による被害:建物や家屋の屋根が吹き飛ばされる。樹木が倒れ、道路や電線に影響を与える。看板や広告などが破損する
- 雨による被害:洪水や浸水が発生し、住宅や商業施設が被害を受ける。土砂災害(地滑りや土石流)が発生する。河川の氾濫や堤防の崩壊
- 交通機関の影響:電車やバスの運行が停止する。空港が閉鎖され、フライトがキャンセルされる。道路が通行止めとなり、交通渋滞が発生する
- 停電や断水:電力供給が中断され、停電が発生する。水道管の破損や水源の影響で断水する
- 農業への影響:作物が風雨で損傷する。農地が浸水し、収穫量が減少する
- 経済的影響:ビジネスや商業施設が被害を受け、営業停止や修復に費用がかかる。保険金の請求や支援が必要となる場合がある
台風の影響を受けた地域では、早急な復旧作業が行われ、被害状況に応じた支援が提供されることが多いです。最新の情報を確認し、必要な支援や対策を講じることが重要です。
Google Geminiは台風10号の被害を大雑把にまとめた上で、詳細な情報を得る方法、被害を受けた方へのお見舞いメッセージの表示、さらに情報を得るための検索キーワードの紹介、デマ情報への注意喚起、二次災害への注意喚起などを掲載している。取りまとめているデータは大雑把だが、Webに掲載されたとみられる台風被害情報などに基づいてデータをまとめているものだと考えられる。
一方、ChatGPTは一見すると回答しているように見えるが、その内容は台風によってもたらされる一般的な被害に関するものであり、台風10号に関係するものではない。ChatGPTはリアルタイムデータについては扱っていないことが分かる。
米の価格の急騰原因
次に、少し前から騒がれているニュースとして米価の高騰について生成AIに情報を取りまとめるように指示を出す。
このところ米の価格が急騰しています。原因を分かりやすくまとめてください。
それぞれの回答は次のとおり。
米の価格が急騰している原因について
最近の米の価格高騰は、様々な要因が複雑に絡み合っているため、一概に特定の理由に絞り込むことは難しいですが、主な原因としては以下の点が挙げられます。
- 供給の減少
- 異常気象:昨今の異常気象による冷害や干ばつなどの影響で、米の収穫量が減少し、供給が不安定になっています
- 減反政策:長年続いた減反政策の影響で、米の生産量が減少している地域もあり、供給不足に拍車をかけています
- 病害虫の発生:新たな病害虫の発生や、既存の病害虫の蔓延により、米の品質が低下し、出荷量が減るケースも考えられます
- 需要の増加
- 人口増加:世界人口の増加に伴い、食料としての米の需要も増加しています
- 健康志向の高まり:健康志向の高まりから、米を主食とする人が増え、需要が伸びています
- インバウンド需要:訪日外国人の増加に伴い、日本の米への需要も高まっています
- 流通コストの上昇
- 燃料費の高騰:農業機械の燃料費や運送費の高騰が、米の生産コストを押し上げています
- 包装資材費の高騰:プラスチックなどの包装資材費の高騰も、米の価格上昇の一因となっています
- その他
- 政府の政策:政府の米政策の変更や、輸入規制の強化などが、米の価格に影響を与えることがあります
- 投機的な動き:商品先物市場での投機的な動きが、米の価格を不安定化させることがあります
これらの要因が複合的に作用し、米の価格が上昇していると考えられます。
具体的に、なぜ今、米の価格が上昇しているのか、という点については、以下の記事が参考になるかもしれません。
- キヤノングローバル戦略研究所:不作でもインバウンドでもない コメが買えない「本当の理由」 https://cigs.canon/article/20240830_8303.html
この他にも、新聞やニュースサイトなどで、より詳細な情報が掲載されている場合がありますので、参考にしてみてください。
もし、特定の地域や品種の米の価格について詳しく知りたい場合は、その旨をお知らせください。
ご不明な点があれば、お気軽にご質問ください。
米の価格が急騰する原因は複数あり、以下のような要因が考えられます:
- 気象条件の悪化:異常気象:台風や豪雨、干ばつなどの極端な気象条件が米の生産に悪影響を与えることがあります。特に主産地での気象異常は収穫量の減少を招きます
- 供給チェーンの問題:物流の問題:輸送の遅延や混乱、港の閉鎖などが米の流通に影響を及ぼし、価格の上昇を引き起こすことがあります。労働力不足:農業や加工業での労働力不足が生産コストを押し上げ、価格に反映されることもあります
- 生産コストの上昇:肥料や燃料の価格上昇:肥料や燃料の価格が上昇すると、米の生産コストが増加し、その分価格が上がることがあります
- 需給のバランスの崩れ:需要の増加:新興国の消費増加や、特定地域での消費増加が需給バランスを崩し、価格を押し上げることがあります。供給の減少:生産量の減少や在庫の不足が供給を下回り、価格が上昇します
- 国際市場の影響:輸出制限や関税:主要生産国が輸出制限をかけたり、関税を引き上げたりすると、国際市場での価格が上昇します。通貨の変動:生産国の通貨安が米の価格を押し上げることもあります。輸出国の通貨が弱くなると、他国にとって米が高くなるためです
- 投機的要因:投資家の動き:投資家が商品市場において米を買い占めると、価格が急騰することがあります。特に不安定な経済状況では、投資の一環として商品が選ばれることがあります
これらの要因が複合的に影響し合い、米の価格が急騰することがあります。具体的な価格動向を把握するためには、最新の市場レポートやニュースを確認するのが良いでしょう。
GeminiはWebに掲載されている米価高騰に関する話題とその理由を説明したものをざっくりまとめたような内容になっている。取りまとめた内容の真偽に関してはなんともいうことができないので、その点に関しては自分で調査して判断していく必要があるが、比較的最近のデータに基づいてとりまとめを行っているようには見える。
一方、ChatGPTの方は一見すると回答しているように見えて、汎用的な回答を行っているだけで、今回の米価高騰に関しては説明していない。
ただし、有償版になるとまた話は変わってくる
上記はどちらも無償で利用できるGeminiとChatGPTについて取り上げている。このサンプルを見るだけならリアルタイムに近い情報に関してはGeminiを使う方がベターということになりそうだが、他にも選択肢はある。
有償版のChatGPT 4oで同じ質問をすると次のような結果になる。
- 天気予報 - 詳細な天気予報情報を表示する
- 台風10号の被害 - 人的被害および物的被害について人数や棟まで含む詳細な情報を取りまとめて報告したほか、気象条件の特徴についても説明。日本政府の財政支援に関しても言及している
- 米価高騰 - 2024年の気象条件や経済状況などを加味した要因を取りまとめている
OpenAIもChatGPTの弱点がリアルタイム性にあることは認識しており、有償版に関してはWeb検索の結果からデータを取りまとめる機能がすでに動作している。有償版のChatGPTが取りまとめたデータは無償版のGeminiよりも詳細で、かつ、簡潔にまとまっているように見える。無償版と有償版の比較になるので簡単に捉えることはできないが、有償版になるとまた状況が異なるということは認識しておく必要がある。
無償版しか使ってないならGeminiのリアルタイム性は有用
生成AIチャットサービスとして無償版しか使っていないのであれば、その特徴を捉えて使い分けるのは賢い方法だ。すでにデータが広く出回っているものについてはChatGPTを使い、よりリアルタイム性が求められるものについてはGeminiを使う。これはそれぞれの特徴を捉えたロジカルな使い方だと言える。
ただし、こうした状況はそれほど永続しない可能性が高い点にも留意しておいてほしい。現在、生成AIチャットサービスは機能強化や改善の真っ只中にあり、OpenAIが無償版のChatGPTに対してリアルタイム性の改善を取り込んでくる可能性があるし、Googleが無償版のGeminiにAdvancedの機能を取り込んでくる可能性もある。状況は想定しているよりも短い周期で変わっていく可能性がある。
状況はどうなるとしても、生成AIがもたらす恩恵が大きなものであることは間違いない。ユーザーはそれぞれのサービスの最新の状況を把握し、適材適所で活用していくことが大切だ。