執筆時点でGoogle Chromeにおいて生成AIチャットを活用しようと考えるとSider拡張機能がもっとも有力な候補のひとつになる。サイドパネルから生成AIが使えることが便利というのは間違いない。この拡張機能を使い続けるかどうかは提供されているUI/UXやコンセプトが気に入るかどうかになるのではないかと思う。今回はそのあたりをピックアップして紹介する。

連載「Google Geminiの活用方法」のこれまでの回はこちらを参照

有料版へのアップグレード

Sider拡張機能は便利な拡張機能だが完全に無償ベースというわけではない。より高性能な生成AIを利用するための有償版プランを用意しており、ことあるごとに有償版へのアップグレードを促してくる。次のスクリーンショットはSiderの新しいバージョンについて説明したダイアログだが、ダイアログの下には有償版へのアップグレードを促すページへのリンクが掲載されている。

  • 新しいバージョンの説明と有償版へのアップグレードを促すリンク

    新しいバージョンの説明と有償版へのアップグレードを促すリンク

執筆時点では次のような有償プランを説明するページが表示される。

  • 表示された有償版の説明ページ

    表示された有償版の説明ページ

通常の利用においても有償版へのアップグレードを常に意識させる表示が行われている。下のスクリーンショットのようにプロンプトの下にアップグレードを促すリンクが掲載されている。

  • 有償版へのアップグレードを促すリンク

    有償版へのアップグレードを促すリンク

このリンクをクリックすると次のスクリーンショットのように有用版のポイントをまとめたダイアログが表示される。

  • 有償版の特典を簡単にまとめたダイアログが表示される

    有償版の特典を簡単にまとめたダイアログが表示される

拡張機能の開発者が全てボランティアというわけではなく、有償版を提供するというのは開発者の正当な権利だ。このような仕組みにすることはなんの問題もない。しかしながら、このようにことあるごとに有償版へのパスが表示されるというのをこころよく思わないユーザーがいることも分かる。受け入れることができないと思ったら、この拡張機能の利用はやめておこう。

逆に、今後もこの拡張機能を使い続けたいと考えるなら、対価として購入を考えるのは悪くない選択肢だ。より上位の大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)が使えるようになるので性能も向上することになる。

既存の他のアカウントが使えない

ユーザーにとってもっとも悩ましいのは、Sider拡張機能は既存の正規のアカウントに対応していないということではないかと思う。Google Geminiに有用性を見出しているのであれば、Gemini Advancedを使うためにサブスクリプション契約をしている可能性も高い。すでにこうした契約をしている場合、Sider拡張機能で契約済みのGemini Advancedを使いたいと思うのは自然な発想だ。

しかし、Sider拡張機能が提供しているのは独自のアカウントであり、個別の生成AIのアカウントについては対応していない。サイドパネルで自分の契約しているGemini Advancedを使いたいとか、自分のアカウントでGeminiを使いたいと考えているユーザーにとって、Siderは適した選択とは言えないところがある。

いろいろな機能が統合されている

Microsoft EdgeのCopilotパネルには生成AIチャット機能以外にも、文書の作成機能が統合されているほか、画像生成機能も生成AIチャットに機能統合が行われている。Sider拡張機能はこうした機能に加えてさらに多くの機能が統合されている。

まず、次のスクリーンショットのように翻訳の機能が統合されている。日本語も対象に入っているので、翻訳の機能が必要な場合には便利な機能だ。

  • 翻訳機能

    翻訳機能

Sider拡張機能には画像からテキストや数式などを抽出するOCR機能が統合されている。画像からテキストデータを抽出しなければならないケースではこれも便利な機能だ。

  • OCR機能

    OCR機能

Sider拡張機能には文法チェック機能も用意されている。これは英語に限定された機能なので英文を書くようなケースではちょっとした確認に使うことができる。

  • 文法チェック機能

    文法チェック機能

画像を生成する機能も統合されている。

  • 画像を生成する機能

    画像を生成する機能

また、PDFを明示的に読み取らせる機能も用意されている。

  • PDFを読み込ませる機能

    PDFを読み込ませる機能

ただし、これら機能が必須かと言えばそうとも言えない。まず、Webページの翻訳機能はそもそもGoogle Chromeに備わっている。表示している日本語以外のWebページの内容を日本語で閲覧したいといった用途であれば、Google Chromeで事足りる。生成AIチャットに指示を出せば翻訳させることもできる。

画像からテキストを抽出する機能はすでにWindowsが提供している。ディスプレーに表示されているものであればWindowsのSnipping Toolアプリ経由でテキストとして取り出せるので、必須の機能かと言われるとこれもそうでもない。

画像については無償で使うのであればMicrosoft Copilotから利用できるDALL E・3が優れている。この機能はChatGPTの有償版からも使用できる。Siderから使うことに利点があるかというと、これも必須とは言いにくい。

このように機能は多いものの必須かどうかと言われるとそうでもないケースが多く、あとはこの拡張機能が気に入るかどうかにかかってくるように思う。

気に入ったら使ってみよう

執筆時点の状況から鑑みるに、GoogleがGoogle ChromeにGoogle Geminiパネルを追加する可能性は低いものとみられる。この機能が欲しい場合にはChromeの拡張機能を使う必要があるというのが、今のところ現実解ではないかと思う。

拡張機能の選択肢はいくつかあるが、人気という面で見るとSiderが有望な候補であるのは間違いのないところだ。この拡張機能を使ってみてサイドパネルで生成AIを使うことの利点を見出したのであればこの拡張機能を使っていこう。また、今後も長期的に使いたいと考えるなら、有償版にアップグレードして支払いを行うのもひとつの方法だ。開発活動を支えるひとつの方法は対価を支払うことであり、有償版はそのパスとして無難な方法と言える。

Google Chromeのユーザーであれば選択肢の可能性としては低くなるが、生成AIチャットが必要なWebサーフィンではMicrosoft Edgeを使うというのもひとつの方法だ。Microsoft EdgeのCopilotパネルはシンプルで扱いやすい。GeminiではなくCopilotになってしまうのと、常にChromeを使っているというケースでは一部の操作だけEdgeを使うというのは不便になるので難しいところだが、可能であればそれもひとつの選択肢であることは覚えておきたい。

参考