今回は、前回インストールしたGoogle Chromeの拡張機能「Sider」を使ってインターネット検索を行ったり、表示させたWebページまたはPDF文書の要約を生成する方法を取り上げる。サイドパネルでこうした生成AIチャットを使うとインターネットが今までよりも便利になる。まだ使ったことがなければぜひ一度試してほしい機能だ。

連載「Google Geminiの活用方法」のこれまでの回はこちらを参照

ChromeにSider拡張機能でCopilotパネル風

前回は、Google ChromeにはMicrosoft EdgeのCopilotパネルのような機能が存在していないものの、拡張機能を使うことで似たようなUI/UXを実現できることを取り上げた。

  • Google Chrome

    Google Chrome

  • ChromeでSiderサイドパネルを開いたところ

    ChromeでSiderサイドパネルを開いたところ

前回取り上げた拡張機能は「Sider」だ。Microsoft EdgeのCopilotパネルのように生成AIチャットパネルをWebブラウザの右端に表示してくれる。上記スクリーンショットがSiderのパネルを開いた状態であり、Microsoft EdgeのCopilotパネルのような表示になっていることを確認できる。

今回はこのSiderを使ったGoogle Geminiの使用例を取り上げる。

SiderパネルからWebページを検索

Siderパネルを使うとインターネット検索を検索エンジンからではなく、Siderパネルにおける生成AIチャットから始めることができる。例えば、次のようにプロンプトに質問を入力する。

日本人の食事摂取の基準について説明したWebページを列挙してください。

Gemini 1.5 Flash(Sider)は次のように回答している。

  • 日本人の食事摂取の基準について説明したWebページを列挙するように指示

    日本人の食事摂取の基準について説明したWebページを列挙するように指示

日本人の食事摂取基準について説明したWebページ

日本人の食事摂取基準について説明したWebページはたくさんありますが、信頼性の高い情報源としては以下のものが挙げられます。

厚生労働省:

その他信頼できる機関:

これらのウェブサイトでは、年齢、性別、妊娠・授乳などの状況に応じた食事摂取基準の詳細が掲載されています。食事の改善や健康管理に役立てるために、これらの情報をご活用ください。

注意:

  • ウェブサイトの情報は常に更新される可能性があります。最新の情報は各機関の公式ウェブサイトでご確認ください
  • 食事に関する情報は多岐にわたるため、専門家のアドバイスを受けることも重要です

健康的な食事を心がけ、健康的な生活を送ってください。

このように欲しいWebページの内容を要約して列挙してくれる。検索エンジンやオムニボックスから検索するのではなく、生成AIチャットをWebページ探索の始まりとして使うことができるのだ。

ただし、この方法は完璧ではない。先ほど表示されたURLをクリックすると、下記スクリーンショットのようになる。生成AIチャットが使う情報は膨大な量の学習を済ませた後のものであり、リアルタイム性に欠けている。各社そのあたりは工夫しているものの、現行の検索エンジンには及ばないのが現状だ。生成AIチャットを経由する情報は最新の状況を反映しない可能性があることは知っておく必要があるだろう。

  • リンクが適切ではない

    リンクが適切ではない

Webページの概要を生成させる

Siderのパネルには表示しているWebページの要約を生成するために「要約する」というUIが用意されているので、プロンプトに指示を出さなくてもクリックするだけで要約を生成できる。

ここでは「「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書|厚生労働省」を開いた状態で「要約する」をクリックする。次のような要約が生成された。

  • 表示されているWebページの要約を生成するように指示

    表示されているWebページの要約を生成するように指示

概要

厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書は、国民の健康増進と疾病予防を目的として、年齢や性別に応じた適切な食事内容を推奨しています。報告書は、エネルギー・栄養素の摂取目標量、対象特性、生活習慣病との関連など、多岐にわたる内容を網羅し、具体的な食事改善のための指針を提供しています。特に、近年増加している生活習慣病のリスクを軽減するため、食生活におけるバランスの重要性を強調し、食品群別摂取目標量などの具体的な情報を提供しています。

主要ポイント

  • 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書が公表されました
  • 報告書は、健康な生活を送るための食事内容を推奨しています
  • 報告書では、エネルギー・栄養素の摂取目標量、対象特性、生活習慣病との関連など、様々な視点から食事の重要性を解説しています
  • 報告書は、国民の健康増進と疾病予防に役立つ情報源として活用することができます
  • 報告書は、食事のバランスを意識することの重要性を強調しています
  • 報告書は、食品群別摂取目標量などの具体的な情報を提供しています
  • 報告書は、生活習慣病のリスクを軽減するための食事改善の指針を示しています

Web版のGoogle Geminiを使う場合にはいったん操作をWeb版Geminiの方に移さなければならないが、Sider拡張機能を使うことで対象のWebページを表示させたまま要約を生成させ内容を確認することができる。

PDFの概要を生成させる

そして同じことがWebページに対してのみならず、PDFに対しても可能だ。Chromeで「日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書 (PDF)」を表示した状態で「要約する」を選択すれば、次のようにPDFの要約を生成してくれる。

  • 表示しているPDFの内容を要約するように指示

    表示しているPDFの内容を要約するように指示

概要

本資料は、高齢者におけるエネルギー代謝、たんぱく質代謝、ビタミンD、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、n-3系脂肪酸などの栄養素と健康状態の関係について、最新の知見をまとめたものである。特に、フレイルとサルコペニアの予防、認知症と認知機能低下、高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病などの生活習慣病との関連について詳しく解説している。

主要ポイント

  • 高齢者の基礎代謝は加齢とともに減少し、75歳以上の後期高齢者では低栄養のリスクが高まる
  • 後期高齢者の要介護状態の原因として、「高齢による衰弱」が挙げられ、フレイルやサルコペニアの予防が重要となる
  • フレイルは老化に伴う種々の機能低下(予備能力の低下)を基盤とし、健康障害に陥りやすい状態を指す。サルコペニアは加齢に伴う筋力の減少又は老化に伴う筋肉量の減少を指す
  • フレイル及びサルコペニアの予防には十分なたんぱく質摂取が重要であり、特にレジスタンス運動と組み合わせることで効果が期待できる
  • ビタミンDはカルシウム代謝や骨代謝に密接に関わっており、高齢者では骨粗鬆症との関連が注目されている。ビタミンDは骨以外の骨格筋などの組織にも何らかの役割を果たしている可能性が示唆されている
  • 葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12はホモシステインの代謝に関与し、これらの栄養素の欠乏は血中ホモシステイン濃度の上昇につながる。ホモシステインは血管への影響の他、神経毒性が指摘されており、認知症との関連が指摘されてきた
  • 高血圧は、収縮期血圧及び拡張期血圧のいずれかが基準値を超えて上昇した状態であり、環境要因(生活習慣)と遺伝要因の相互作用から成り立っている
  • 高血圧の発症予防と重症化予防には、減塩、エネルギー摂取量の適正化による体重管理、アルコール摂取量の制限などが重要である
  • 脂質異常症は動脈硬化性疾患の危険因子となる疾患であり、特に飽和脂肪酸やコレステロールの過剰摂取はリスクを高める
  • 糖尿病は、インスリン作用の不足に基づく慢性の高血糖状態を主徴とする代謝症候群である
  • 糖尿病の発症予防と重症化予防には、総エネルギー摂取量の適正化による肥満の是正、炭水化物や脂質の適切な摂取などが重要である
  • 慢性腎臓病(CKD)は慢性的に腎機能が低下した状態であり、早期発見と適切な治療が重要である
  • CKD の重症化予防には、たんぱく質や食塩の摂取制限、リンの摂取量に注意するなど、食事療法が重要となる

報告書はWebページ(HTML)の形式ではなくPDFのかたちで提供されていることも多い。PDFに対してもWebページと同じように操作ができるのは便利だ。

サイドパネルから使えるGoogle Geminiは便利

Web版で提供されているのと同じGoogle Geminiが使えるわけではないが、Sider拡張機能を使うことでGoogle ChromeのサイドパネルからGoogle Geminiを使うことができる。インターネット検索、Web文書の要約、PDFの要約といった操作をサイドパネルから行うことができ、別タブや別ウィンドウにすることによる思考の断絶が発生しにくくなる。なかなか便利な拡張機能だと言えるだろう。

Microsoft EdgeのCopilotパネルと比べれば煩雑な面は否めないが、あるのとないのとでは大きな違いだ。サイドパネルで生成AIチャットを使うといった経験をしたことがなければぜひ一度試してもらえればと思う。Webブラウザと生成AIチャットは相性が良い。今後インターネット検索がどのようなかたちに変わっていくか現時点ではなんとも言えないところがあるが、Webブラウザと生成AIチャットの融合はひとつのかたちであり、当面は存在し続けるスタイルになるのではないだろうか。

参考