Google Appsの利便性と拡張性に感動
電気機械機具の製造、販売を行う日東工業。売上高600億円、従業員数2,500名の会社だ。配電盤やキャビネット、ブレーカー、サーバー用システムラック等を主力製品とする一方、近年は電気自動車用の充電スタンドや太陽光発電関連製品の開発を手掛けるなど、新たな市場開拓に余念がない。本拠地の名古屋を中心として日本国内に8つの工場および44の営業所を持つほか、中国とタイにも生産・販売拠点を設けるなどグローバルなビジネスを展開している。
同社ではこれまで、メール・スケジューラー・掲示板をメインにオンプレミス環境の社内システムを使用していた。2012年1月にサーバーの更新時期を控えており、サーバーマシン自体の交換が必要だったという。そこで、日頃従業員から要望のあったメール容量やレスポンスの改善などにも着目し、2011年4月に「社内快適プロジェクト」を発足。具体的なグループウェアの見直しを含めて改善に乗り出した。グループウェアの見直しには利便性のみならず、マシントラブルによるサービスの停止やBCP対策など、冗長性、可用性も考慮する必要があった。
オンプレミスを中心にいくつかのグループウェア製品の検証を行い、既存グループウェアのバージョンアップで対応することがほぼ決まった矢先にGoogle Appsに出会ったという。サーバー更新を4ヵ月後に控えた2011年9月のことであった。
日東工業 情報システム部 システム技術課長 |
情報システム部 システム技術課の川治慎吾氏は「社内で一番要望が多かったのはメールに関することだったので、Gmailの利便性と1人あたり25GBのメール容量はとても魅力的でした。また、グループウェアを入れ替えるとなると社内での反発は避けられませんが、Google Appsの直感的に操作できるユーザーインタフェース機能や簡単に構築できる社内ポータルやファイル共有も大きなポイントでした。コスト面では一見高価に感じましたが、機能やセキュリティー、拡張性などに軸を置くとオンプレミス版のグループウェアや他のクラウドサービスと比べ安価となることがわかりました。なにより、Google Appsを初めて紹介してもらったときにメンバーがワクワク感を持ったことが印象に残っています」と、Google Appsの選定理由を語る。
先行導入でGoogle Appsの効果を実感
日東工業ではまず2011年の10月後半から11月にかけて、無料試用期間を利用して情報システム部内で使用。12月中旬にGoogle Appsの採用を正式決定し、12月末より実際の導入作業をスタートした。
既存のグループウェアとはかなり印象が変わるため、社内での混乱を最小限に抑える工夫が必要だった。そこで、Gmailをいち早く利用したい人を各部署から募集し、「先行導入」という形で利用してもらうことにした。先行導入ユーザーにはGoogle Appsのファンになってもらい、全社導入の時にキーパーソンとして活躍してもらうという目的もあったという。
「当初の予想を大幅に上回る希望者が集まり、多くの社員がメール関連でフラストレーションを溜め込んでいたことに加え、Gmailが持つ利便性の高いインタフェースや高度な検索機能に魅力を感じた方が多かったようです」という川治氏の言葉からもわかる通り、社内でもかなりの反響があったようだ。
「社内快適プロジェクト」メンバー |
こうして集まった200ユーザーで約2週間の先行導入を開始。同時にQ&Aサイトを設置し、実際の使用感や疑問など社員からの生の声を募集し、全社導入での機能の過不足を吸収したという。
川治氏は「こちらもかなりの数の質問が寄せられたので対応が大変でした。内容としては、やはり"今まであった機能は使えないの?"といった、従来システムとの機能比較が多かったですね」と語る。これに対し、Google Appsで実装されている機能については、機能の呼び出し方や使い方を解説し、同時にQ&A集に掲載。メールの再送機能や組織アドレス帳など、未実装ながら業務上で本当に必要とされるものに関しては、サテライトオフィスにモジュール作成を依頼した。その他、緊急性や必要性を整理し、優先度の低いものに関しては稼動後に徐々に対応していくという判断も行ったそうだ。
先行導入者がキーパーソンとなりスムーズな導入を実現
こうして先行導入から全社導入フェーズへと移行した日東工業では2月いっぱいの期間をかけ、説明員を全国の拠点へ派遣する形で社員教育を実施。「マニュアルはシンプルに!」ということで1枚分の独自テキストを使い、メール・カレンダー・掲示板など基本機能に絞った解説を行った。
導入当時は新しい環境に拒否反応を示す人への配慮として、従来システムと並行運用をしたこともあり、特に大きな混乱もなくGoogle Apps環境へと移行できたそうだ。移行成功の裏には各拠点のキーパーソンの活躍もあったという。200名の先行ユーザーがキーパーソンとなり、自ら周囲の社員に説明するなど、サポート役を果たしてくれたのである。
また、社内システムのリプレイスでなにかと問題が発生しやすいデータ移行だが、同社はこちらも難なくクリアした。まずメールデータに関しては必要に応じて個人単位で旧システムから部門サーバー上などへ各自エクスポートする程度。スケジューラは明確な移行日を事前に連絡し、1~2週間程度の猶予期間"慣れる時間"を設けることでトラブルは発生しなかったそうだ。
全社導入では最終的に1,600アカウントを導入。現在はメール・スケジューラ・掲示板に加えてファイル共有や社内ポータルサイトなどを活用している。導入に成功した今でも「Google Apps活用」と題して情報システム部での新たな活用方法を見い出し積極的に社内情宣を行っているという。
社員からも「メールの検索が便利」「レスポンスが速いので業務も捗る」「直感的で使いやすい」といった満足の声が聞かれるという。
「今後は海外子会社を含めたグループ企業への展開や、並行利用しているファイル共有システムの完全移行も視野に入れています」と川治氏。さらに、現在はまだ検証段階ということで申請制にしているモバイル連携も積極的に活用していきたいとのことだ。