2026年2月15日に愛知県名古屋市のIGアリーナで実施された「Samsung Galaxy presents TGC in あいち・なごや 2026 by TOKYO GIRLS COLLECTION」。NTTドコモが「IOWN」などの新技術をアピールしていましたが、中でもアピールに力が入れられていたのが5Gの「ミリ波」です。利用がまったく進んでいないミリ波ですが、NTTドコモその活用を進めるため、どのような点に注力しているのでしょうか。→「ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革」の過去回はこちらを参照。
IOWNに加えミリ波の「推し活」活用をアピール
NTTドコモが中心となって運営している、愛知県名古屋市の「IGアリーナ」。そこで2026年2月15日に開催されたのが、日本のガールズカルチャーを発信するファッションイベント「Samsung Galaxy presents TGC in あいち・なごや 2026 by TOKYO GIRLS COLLECTION」です。
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IGアリーナで開催された「Samsung Galaxy presents TGC in あいち・なごや 2026 by TOKYO GIRLS COLLECTION」。著名なモデルや芸能人が多数登場し、大きな盛り上がりを見せていた
NTTドコモは、TGC(東京ガールズコレクション)を運営するW TOKYOと2023年に業務提携していることから、今回のイベントにも特別協力していくつかのステージを実施。同社のキャラクター「ポインコ兄弟」が登場するステージだけでなく、NTTドコモ、さらにはNTTグループが力を入れて取り組んでいる技術をアピールするステージも実施されていました。
そのうちの1つは「IOWN」を活用したステージです。IOWNのAPN(オールフォトニクスネットワーク)を用い、IGアリーナと、音楽イベント「TOKYO GIRLS MUSIC Fes.」の会場である神奈川県横浜市の「横浜BUNTAI」を接続し、遅延が非常に小さいAPNの特性を生かして、双方の会場にいる2組のアイドルグループが同じ会場にいるかのような、一体となったパフォーマンスを披露していました。
そしてもう1つ、ステージで大きなアピールがなされていたのが5Gの「ミリ波」です。ミリ波は主として30GHz以上の、携帯電話向けとしては非常に高い周波数のことを指し、日本では現状、携帯4社に割り当てられている28GHz帯がミリ波として活用されています。
しかし、ミリ波は帯域幅が非常に広く高速大容量通信に適している一方、周波数が高く遠くに飛びにくいという特性上、携帯電話会社にとって非常に扱いづらい周波数帯でもあります。それゆえ対応端末もごくわずかで、ネットワークを整備しても利用がまったく進んでいないことが大きな課題となっています。
そこでNTTドコモは今回のイベントで、プラチナパートナーとして参加しているサムスン電子と共同で、ミリ波をアピールするステージを実施しました。
ガールズグループのメンバーによるミリ波講座が開催され、ミリ波に対応したスマートフォンを利用すると、IGアリーナのような場所で非常に高速な通信ができ、およそ40分の番組を7秒でダウンロードできることから、「推し活」に最適とのアピールがなされていました。
さらに会場に設けられたサムスン電子のブースでは、ガールズグループ1人1人のパフォーマンスを「推しカメラ」として撮影し、その映像を同社のミリ波対応スマートフォンで素早くダウンロードできる様子を披露するデモも実施。技術に詳しい人の参加が少ないと思われるイベントだけに、ミリ波の優位性を分かりやすく伝える工夫がなされていた印象です。
ミリ波とエンタメビジネスは意外と相性がいい
現状、基地局を整備してもほぼ使われていないといって過言ではないミリ波を、いかに利用してもらうかは携帯電話会社の悩みどころでもあります。それゆえ他社では最近、Wi-Fiスポットのバックホールに活用するなどスマートフォンで直接利用する以外の活用方法を模索する動きも見られるようになってきました。
それだけミリ波を取り巻く状況が厳しいにもかかわらず、なぜNTTドコモはファッションイベントで、一般層に向けてスマートフォンでのミリ波利用を訴求しているのでしょうか。そこには、同社がIGアリーナをはじめ、さまざまなアリーナやスタジアムの運営に力を入れていることも大きく影響しているようです。
実際、NTTドコモは、IGアリーナで4Gや5Gの「サブ6」(6GHz以下の周波数帯)だけでなく、ミリ波の整備も進めているとのこと。4Gや5Gのサブ6の整備にはインフラシェアリングを用いているため、カバーできるエリアには競合と大きな差はないのですが、それに加えてNTTドコモは、インフラシェアがなされていないミリ波の基地局やアンテナを独自に設置し、強化を図っているのです。
具体的にはメインアリーナ内や、エントランス、コンコース、そしていわゆるVIPルームの「dカードラウンジ・スイートルーム」と、一般客が訪れるエリアにはミリ波のアンテナを設置。計31のミリ波設備を設置し、アリーナ内を広くカバーしているそうです。
さらにこれらの設備では、5Gで複数の電波を高速化するNRCA(New Radio Carrier Aggregation)にも対応し、ミリ波とサブ6の周波数帯を束ねて理論値では最大6.6Gbpsの通信速度を実現できるとのこと。実際にミリ波対応端末で通信速度を測定すると、ダウンロードで3Gbps前後の通信速度を記録するなどスマートフォンとしては相当高速な通信速度を実現していました。
ミリ波は遠くに飛びにくい特性上、スタジアムやアリーナのように、限定されたエリアに多くの人が集まるような施設に集中して整備すると大きな効果を発揮しやすいので、NTTドコモが力を入れている、エンタテインメント関連のビジネスとは相性が良いのです。
それだけにNTTドコモとしては、IGアリーナのような場所でミリ波の環境整備を積極化し、多くの人が訪れ通信が混雑しやすいイベントで「推し活」用途に活用してもらうことにより、ミリ波の有効活用を進めたいのではないかと考えられます。
ただ、そこで大きな課題となるのが、やはりミリ波に対応するスマートフォン自体が非常に少ないこと。対応するスマートフォンが少ないことがミリ波活用を阻む大きな要因の1つとされており、現状ではIGアリーナでのミリ波活用も10%以下にとどまっているようです。
それだけに、今回のイベントでは日本でミリ波対応端末を最も多く提供しているサムスン電子と協力し、アピールへと至ったようですが、そのサムスン電子でさえミリ波に対応しているのはフラッグシップモデルの一部に限られています。ミリ波普及のためには基地局整備だけでなく、日本でミリ波が使える端末をいかに増やすかが、NTTドコモにとって引き続き大きな課題となるでしょう。





